オリンパス内部通報の濱田さん、パワハラ激化で3度目の人権救済申立 勝訴確定でコンプライアンス推進部長職を要望
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オリンパス社員の濱田正晴さん(左から2人目)。東京高裁での逆転勝訴後の記者会見で。 |
これまでの経緯:
・オリンパス公益通報“対象外”とされた社員が語る 「通報には弁護士レベルの知識が必要」 |
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最高裁の決定書。![]() |
オリンパス本社のグループコンプライアンス推進部長として会社に貢献したいーー。それが、濱田正晴さん(51)が会社に伝えている要望だ。
濱田さんは、入社28年目のオリンパス現役社員。社内コンプライアンスの内部通報被害者でもある。
鉄鋼業界向けの非破壊検査機器の営業チームリーダだった2007年6月、上司が重要顧客の社員を、立て続けに不正に引き抜こうとしていることを知った。社内のコンプライアンス室に通報したところ、室長が上司と人事部長に無断漏洩、制裁としてまったく未経験の調査研究職に配転させられ、それから現在まで5年近く、最低水準の業績評価や暴言、無意味な仕事をさせられるなどのパワハラを受けていた。
そんな濱田さんが、なぜグループコンプライアンス推進部長を希望するのか。あえて聞くと、会社と上司を相手に闘った約4年半の裁判の経験を生かして、「オリンパスを建て直したい、会社のために力を発揮したい」という答えが返ってきた。
「マイケル・ウッドフォード元社長の件で、会社にはコンプライアンス意識が欠けていることが分かった。いま、オリンパス再建のためには、コンプライアンス意識の見直しが求められている。この部門で力を発揮することが、自分がいま最大限やるべきことじゃないかと思った」
「企業倫理や企業統治、社内外の通報窓口、運用規定など、企業が社会的責任を果たすためのしくみを確立させて、実効力をもって機能するように推進していく。会社が、真の再生を果たせることに尽力したい。オリンパスのためにならないところは全部改めるくらいやっていこうと思っているし、その自信もある」
――というのだ。
◇配転無効が確定 処遇は「本人の意向尊重」と会社
07年10月に調査研究職に配転となった濱田さんは、翌08年2月、配転は通報者の不利益な取扱いを禁止した公益通報者保護法と会社のコンプライアンスヘルプライン運用規程に反するとして、配転無効と慰謝料などを求めて上司とオリンパスを東京地裁に提訴。
一審は敗訴だったが昨年8月に東京高裁で逆転勝訴し、今年6月28日、最高裁がオリンパスの上告を退ける決定をしたことで、高裁判決が確定した。1985年01月01日 | 技術職としてオリンパス光学工業株式会社(現・オリンパス株式会社)入社 |
1994年 | 本人の希望により営業職に転身 |
1999年 | セールスマンとして米国駐在 |
2001年 | 米国最優秀セールスとして表彰を受ける |
2006年11月 | NDTシステム営業担当 |
2007年06月 | コンプライアンス室に内部通報 |
2007年07月 | コンプライアンス室長が氏名、通報内容、回答等を無断漏洩 |
2007年08月 | 配転の内示 |
2007年10月 | 配転の実施(第1次配転)、調査研究職に |
2008年02月18日 | 配転無効を求めて会社と上司を提訴(東京地裁) |
2009年03月02日 | 東京弁護士会に人権救済申立(1回目) |
2010年01月01日 | 第2次配転、品質保証部長付きで顕微鏡の商品規格の和文英訳 |
2010年01月15日 | 東京地裁で敗訴 |
2010年10月01日 | 第3次配転、品質保証部システム品質グループで新入社員向け業務の独習とテスト |
2011年08月31日 | 東京高裁で逆転勝訴 |
2011年10月12日 | 東京弁護士会に人権救済申立(2回目) |
2012年01月27日 | 1回目の人権救済申立を受けて東京弁護士会がオリンパスに警告 |
2012年06月28日 | 最高裁がオリンパスの上告棄却、上告受理申立の不受理決定、勝訴確定 |
2012年07月11日 | 東京弁護士会に人権救済申立(3回目) |
東京高裁は、配転は上司の個人的感情によるもので、業務とは無関係で不当であり、内部通報に対する制裁的なものだったと認定、「通報による不利益取扱を禁止した(同社のコンプライアンスヘルプライン)運用規定にも反する」と判断した。コンプライアンス室長の守秘義務違反のほか、上司のパワハラも不法行為と認めた。
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社内資格と業績評価に関するオリンパス社内文書。![]() |
判決確定後、オリンパスは濱田さんの処遇について、「本人の希望を聞き、話し合って決めたい」(読売新聞6月30日付朝刊)、「希望する部署を聞きながら話し合いを進めているところで、今後も本人の意向を尊重しながら判決に従って対応します」(NHK7月11日)などとコメントしている。
その「本人の希望」が、オリンパス本社のグループコンプライアンス推進部長だ。濱田さんは「会社の真の再生に力を発揮できる。合理的な希望だ」と話す。
◇部長職は「最適なポジション」
「コンプライアンス運用規定には、通報したことを理由として不利益にしないという約束があった。それから5年近く経っている
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(上)E資格への推薦書(下)オリンパスが最高裁に出した上告理由書のうち、給料が上がっていないと会社が主張している部分。「基準内賃金」が実際の金額で、金額が違う部分は、家族構成や給与制度の変化によるという。
3回目の人権救済申立書と、申立が受理されたことを示す文書。スミ塗りは筆者による。
著書『オリンパスの闇と闘い続けて』(光文社)の表紙。青と紺はコーポレートカラーと会社の闇を表している。
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読者コメント
オリンパスのコンプライン室は富士通のゲシュタポ掲示板と同じですね。
本音を書いたら一生うだつが上がらないよう人事記録に残すように人事部がしてるはずですよ。
最高裁で確定勝訴判決が出てもリップサービスだけで改心してないようです。
濱田さんの意志は立派だと思いますが、会社は絶対に復帰させないでしょう。 例え経営者が替わっても、経営者なら同じく彼を排除します。
現実的な対処としては替りに解決金として数億程度もらい、NPOを立ち上げるか、Mynewsに資金援助して同じ目にあってる人達の被害者救済活動をやってもらいたい。
オリンパスの金を資金にするのです。
公益通報者保護法は出来たときから、通報させないための法律と言われた企業寄りの法律でした。
条文まで深掘りした調査報道を御願いします。
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