作曲家・穂口雄右氏が音楽著作権の独自管理を開始 「日本レコード協会のキャンディーズYouTube動画削除は暴挙」
キャンディーズの「春一番」(ソニー・ミュージックハウス)。1976年にリリースされたこの曲は、今も歌い継がれている。 |
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穂口雄右氏。代表作に「春一番」、「微笑がえし」、「年下の男の子」、「夏が来た!」、「わな」、「林檎殺人事件」など。 |
今年の3月、筆者は作曲家の穂口雄右氏がレコード会社31社から約2億3000万円の支払いを求めて提訴された件を取り上げた。
この前代未聞の高額訴訟についての記事冒頭で、同氏の代表作「春一番」と「微笑がえし」をユーチューブにリンクするかたちで紹介したところ、ただちに「微笑がえし」がブロック(削除)された。
画面には次のような通知があった。
."微笑がえし キャンディーズ..."
この動画は削除されました。これは、以下の申立人から著作権侵害に関する第三者通報が複数寄せられたことにより、この動画の YouTube アカウントが停止されたためです:
Record Industry Association of Japan申し訳ありません (黒薮注:ブロックの証拠はここをクリック)
「日本レコード協会」の申し立てによって「微笑がえし」がブロックされたことを示すユーチューブの画面。作曲は穂口氏で、作詞は阿木燿子氏。 |
「微笑がえし」に続いて、「春一番」もブロックされた。「春一番」は作曲だけではなく、作詞も穂口氏が手がけたもの。このブロックについては次の表示だった。
この動画はユーザーにより削除されました。
申し訳ありません (黒薮注:ブロックの証拠はここをクリック)
再リンクを張ることはできたが放置した。音楽著作権を上段に振りかざした収益構想の問題点について考えるための実例として有用と考えたからだ。
音楽著作権は、複雑な問題を孕んでいる。結論を先に言えば、これらの楽曲がブロックされたのは、「著作隣接権」が行使された結果である。
作曲家や作詞家が楽曲の著作権者であることはよく知られているが、楽曲には著作権に付随した著作隣接権と呼ばれる権利がある。これは楽曲の制作に関係した実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者などに認められた権利である。これにより著作隣接権者は「楽曲の使用」による利益を得る。
「微笑がえし」のブロックが、レコード会社の業界団体である日本レコード協会によって行われたゆえんである。作曲家で著作権者の穂口氏がブロックを希望しなくても、著作隣接権者が著作隣接権を理由にすれば、ブロックが認められてしまう。
音楽が文化的で公共的なメディアである限り、ブロックにあたっては、少なくとも著作権者とその是非を検討しなければならない。
―――キャンディーズの曲がブロック(削除)されたことを知ったとき、どのように感じましたか?
穂口---
「微笑がえし」も「春一番」も、35年前の作品としては異例のアクセスを集めていました。視聴回数は100万回を超え、多くの皆様がキャンディーズの動画をYouTubeで楽しんでいた。そしてYouTube動画にはキャンディーズを賞賛する膨大な数のコメントがよせられていて、コメントの中には2011年4月21日に亡くなった田中好子さんを偲ぶ言葉や田中好子さんへの感謝の言葉も綴られていました。
ところが、レコード協会は「著作隣接権」を振りかざして、「微笑がえし」のYouTube動画をファンの皆様のコメントもろとも削除するという血も涙もない行動を、たかだか自分達の金銭的利益のために行った。このレコード協会の行動は著作権法の立法の精神を踏みにじる暴挙と断言できます。
なぜならYouTubeには、著作権者の自由意思による3つの選択肢、すなわち1)ブロック、2)収益化、3)再生傾向の追跡、から対応を選択する「著作権者のための無料サービス」があり、アクセスの多い動画では2の「収益化」を選択すれば、著作隣接権者として収益を得ながら、ファンの皆様のために動画を掲載し続ける選択肢もあったのです。
ちなみに、アメリカでは多くの著作隣接権者が「収益化」を選択していることから「動画の削除」と言う馬鹿げた現象は、ほとんどありません。
それにもかかわらず、レコード協会は「動画のブロック(削除)」を選択した
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アマゾンを使った音楽著作権管理の画面。「春一番」と「夏が来た!」の実例。
ソニー関係の企業が入っている東京・千代田区のSME六番町ビル。
6月26日付け「高知新聞」の社説。改正著作権法の危険性を指摘している。
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本稿でYouTubeにリンクした「春一番」が日本レコード協会により早々にブロック(削除)されました。著作隣接権の是非を、今後、議論する必要があります。
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