東京スカイツリーの闇 再開発名目で江東区が野宿者を強制排除、抗議→逮捕→保護房監禁の恐怖
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(右)東京スカイツリー関連再開発の影響で追い出されようとしている堅川河川敷のテント村。(左)4月5日行われた「スカイツリー再開発で貧乏人を殺すな! スカイツリー包囲デモ」。堅川河川敷公園の住民たちが浅草周辺を練り歩いた。(デモの写真は山谷労働者福祉会館活動委員会) |
- Digest
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- 「スカイツリー再開発で貧乏人を殺すな!」と叫ぶデモ
- アルミ缶回収で月収8万円のテント村住民
- 話し合い予定の前日に、警察・警備員・区職員100名超で小屋を破壊
- 区担当者は居留守を使い抗議者を強制排除
- ナポリタンスパゲッティを手づかみで食べ、歯磨き風呂禁止
- 名古屋刑務所や大阪刑務所の保護房では殺害事件も
- 保護房使用が過去9年で34倍以上に激増
「スカイツリー再開発で貧乏人を殺すな!」と叫ぶデモ
東京スカイツリーのオープンを一か月後に控えた4月14日、「スカイツリー再開発で貧乏人を殺すな!スカイツリー包囲デモ!!」が行われ、およそ50人が参加した。
天に向かってそびえたつスカイツリーは、観光客誘致、地元商店街の活性化、震災復興のシンボルとして大々的に宣伝され、夜ごと放たれるライティングの光は、希望の光のように捉えられている。そして8月1日には、展望台の入場者が100万人に達した。
圧倒的多数の人がツリー万歳と言っているなかでの異議を唱えるデモだから、「みんな喜んでいるのになぜ」と考えるのが普通かもしれない。しかし、事情を聞いてみるとマスコミでは伝えられない深刻な事態が進行している。
ツリー建設に合わせて、荒川区、墨田区、江東区、台東区でミニ開発が進んでいるが、特徴の一つは公園や河川敷のリニューアルだ。この地域の公園や河川敷には、テント小屋をつくって野宿する人たちが多く、開発に伴う環境浄化と野宿者排除の動きが目立って増え、墨田区では「スカイツリーオープンまでには小屋は出ていかせるからな」とガードマンが言って廻っていたこともあるという。
目下の焦点は、15軒ほどのテント小屋がある江東区立堅川河川敷公園だ。東京スカイツリーのオープンに合わせ、日本庭園の造成や、スポーツ施設を建設する全面改修案が、2006年ごろに浮上。これらはスカイツリー周辺の観光客の一部を呼び込むことも念頭に置かれたものだ。
テント小屋の住人たちとの話し合いで、工事に支障がない公園内の他の場所に移転する合意もなされた。しかし、区民の問い合わせに対し「工事後は野宿者をゼロにする」と回答しており、これが本音だろう。行政によるホームレス“浄化作戦”ではないのか。
緊迫する状況のなかで、江東区と公園住民が話し合いを設定した前日の2月8日、警察やガードマンなど100人以上を動員して行政代執行で小屋を破壊し、現場は大混乱になってしまったのである。
翌日に10人が区役所に抗議しに行ったところ、野宿者排除に反対する活動をしてきた園良太氏が器物損壊の容疑で逮捕され、警察署の保護房という密室に監禁される事件が起きた。その後、威力業務妨害罪で起訴され、現在は一審の裁判中である。
光り輝く東京スカイツリーの闇の部分が野宿者排除だろう。その「闇」を突いた人間が送られた先は、外部からはまったくわからない「保護房」という、正真正銘の闇だったわけだ。
区役所で抗議する者を逮捕してしまうという暴挙の詳細を報告する前に、事件の舞台となっている堅川河川敷公園の様子や、どのような人がどうやって暮らしているのかを知るため、まずは現場に行ってみた。
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堅川河川敷公園で家のない人たちがテント小屋を造って住んでいる地区。奥では毎月第二土曜日午後に「堅川カフェ」をやっていて、お茶を飲んだり交流していた。(下)ヤカン、ポットなど生活用品がそろっている。![]() |
アルミ缶回収で月収8万円のテント村住民
8月11日土曜日の午後。JR総武線で新宿方向から亀戸に向かい、電車が隅田川に差し掛かると、東京スカイツリーが姿を現した。亀戸駅に着くまでの間、建物の切れ目からツリーがチラチラと見え隠れする。
亀戸駅を降りて明治通りを南に行くと5分もしないうちに首都高7号線に着く。この下が堅川河川敷公園で、家のない人たちがテントや小屋をつくって住みついているところだ。
堅川は江戸時代前期に造成された運河だったが、首都高速が走るようになり、その後埋め立てられた。長さ2キロを超え、クルマが通らないので自転車で自由に通行できる抜け道としても地元では知られていた。
明治通りから階段を降りると、白に近いグレーの塀が立てられ、蛇腹式の封鎖扉で自由に出入りできない。遊具が置かれたところを過ぎると、金属製のフェンスで囲まれたテント村が見えた。ブルーシートの小屋がいくつか見える。今は住民が減っていると聞いていたが、けっこうな人がいる。
近づくと、立ち並ぶテントの一番端に、折り畳み式椅子や合板のようなものを貼りあわせたテーブルに、飲み物や食べ物が並べられている。聞けば、毎月第二土曜午後に「堅川カフェ」(映像:後半にカフェの様子あり)と銘打って、野宿者や支援者たちが交流の場を設けているいう。私は、たまたまその日に出くわしたわけだ。
「行政代執行に抗議して捕まった園良太さんと追い出しのことを記事にしようと思います」
私と同年代で陽気そうな男に話しかけた。
「ああ、園さんね。うれしかったなー、抗議してくれて」
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(上)堅川河川敷公園の住人・郡司春彦さん(53歳)。暗いうちからアルミ缶を集め、業者に買い取ってもらい生計を立てている。週1日は休みだという。(下)アルミ缶や古新聞を載せて運ぶ自転車と荷台。![]() |
答えたのは、郡司春彦さん(53歳)だ。
「この公園で野宿する仲間は、だいたいアルミ缶や新聞の収集で生計をたてています。夜明け前に起きて準備。自転車で出発して、江東や墨田で回収して業者にわたすんだけど、昔はキロ(一キログラム)120円i以上の時期もあったが、最近はキロ83円と厳しい」
自転車荷台に満杯にして運び、月曜から土曜まで働き、月収は8万円くらいだという。最近の単価の安さを考えれば、かなり頑張らないと稼げない金額だろう。テント前には鍋釜、食器、洗剤が並び、小屋の中は毛布や日用品が備えられ、生活感がある。
堅川に来る前は、
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(上)明治通りを隔ててテント村と反対側にあるリニューアル済み部分。日本庭園を模したつくりだが、鉄門で遮られ開園時間が短い。(下)テント小屋が並ぶ地区はフェンスで囲われている。フェンスの左側に人が住んでいる。
公園のテント小屋破壊の行政代執行に抗議して逮捕起訴された園良太氏。逮捕から4か月以上経って保釈され、現在公判が進んでいる。下のイラスト4枚は、東京拘置所に移ってから本人が書いたもの。
東京都内の警察署の保護房設置状況と使用状況。墨塗り部分は、市民に知られたら困る警察情報である。保護房使用が、過去9年間で8件から274件に激増しており、それだけ人権侵害が広まっているということだ。
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「ツリー開発に名を借りた“野宿者浄化”の現場の実態と、人権を無視した原宿署保護房の内情」
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読者コメント
生活のよりどころをぶっ壊しておいて「器物損壊」とはなかなかダジャレが効いている。日本政府はこうして国際的信用を自ら貶めている。
記事掲載の前日に、堅川河川敷公園から追い出されようとしているテント生活者たちとけっこう長い時間話し込んできた。ここに住むようになるまでの経緯などを聞くと、恵まれたエリート層とその下クラスの人でない限り、相当数の人が路上生活かそれに近い状態になる可能性があると実感した。個人ではどうしようもないレベルであり、抜本的な政策確立が必要。
言論が出来ない世の中になりつつある、警察や検察が言論が出来る民主主義を崩壊させている、酷い人権侵害だ
記者からの追加情報
第5回公判10月11日(木)13時30分。
参考ブログ1 「2.9 竪川弾圧救援会」
参考ブログ2 「山谷ブログ-野宿者・失業者運動報告-」
本文:全約7800字のうち約5600字が
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