新たに設置される予定のソフトバンク電波中継局の最寄駅・JRさいたま新都心(上)、建設予定地(下)。近くには、さいたまスーパーアリーナがある。
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10月15日に米国で事業規模3位の携帯電話会社、スプリント・ネクステルの買収を発表したソフトバンク。ウィルコムやイーモバイルの子会社化も含め、急ピッチで拡大を進めている。だがその裏では、携帯ビジネスをめぐるコンプライアンスが問われ始めている。去る8月、同社がさいたま市大宮区の商業地区に、巨大な電波中継局を設置する計画を発表したところ、携帯電磁波の人体影響を懸念する声が住民たちからあがった。中継局は、携帯電話機と送受信する基地局よりも、さらに高い周波数を使うため、特に高層マンションや高台に建つ住宅の住民が健康被害を受ける可能性がある。計画されている電波中継局の中身とは実際にどのようなものなのか。ソフトバンクと住民を取材した。
【Digest】
◇都会のどまんなかに巨大通信局
◇電波中継局と携帯基地局
◇4階分のスペースが機械室に
◇基地局からの電波を送受信
◇「ただ孫さん、基地局はどうします?」
◇携帯電磁波の発癌リスク
上戸彩や樋口加奈子などそうそうたる顔ぶれがそろう白戸家。最近では、自宅でソフトバンクの電波がつながりにくいお母さんから、「いつつながりやすくなるのか聞いてきて」との依頼を受けて、家政夫の宇宙人ジョーンズとお父さんが、ソフトバンクショップに出かけていく。
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住民説明会で配布された資料。(上)物件の位置を示す地図、(中)立面図、(下)日影図。 |
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つながりやすくするためには、電波塔や中継局を、次々と街の中心部にも建てていかねばならない。というわけで、いまは平和な白戸家の住民たちも、そのうち癌で倒れる可能性が高まっていることを知っておくべきだろう。
◇都会のどまんなかに巨大通信局
今年の8月、さいたま市大宮区のJR新都心駅の近辺に住む住民たちは、ソフトバンクが主催した説明会で、通信局の設置計画を知った(左記資料参照)。
移動通信網が拡大するに連れ、電磁波問題が認知されてくるなか、当然、不安が広がった。健康被害を受けるリスクはないのか、真剣に考えざるを得なくなったのである。
おりしも翌9月に入って日弁連が、環境大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣、総務大臣に対して電磁波問題に関する意見書を発表した。それは政府や電話会社にとっては、都合の悪い内容だった(下記参照)。
たとえば、電波の安全性を検証するための委員会を設けるように提言しているのだが、その組織のありかたについて、「業界を所管する省庁から独立した組織とし、その構成員は、関連企業からの利益供与の有無及び内容を明らかにした上で、電磁波の健康影響に関して見解を異にする様々な立場から選任すべきである」と述べている。
これまでは実質的に電気・通信関係の企業が中心になって構成する団体がイニシアチブを取って、電磁波の安全性を検証することが多かった。だが、これではいくら研究費を注ぎこんでも、電磁波による人体影響を示す研究結果が出るはずがない。
それを前提に、総務省は電磁波の安全性を強調してきた。だが、これが誤りだったことは、国際癌研究機関(IARC)が2011年5月に携帯電磁波の発がん性の可能性を示唆したことからも推測できる。
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日本弁護士連合会が9月に発表した「電磁波問題に関する意見書」。 |
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郊外の山の上に通信局を建てるのであればまだしも、建設が予定されている施設は、JR新都心駅(さいたま市大宮区)の東側に広がる商業地区に位置する。近くには大宮高校をはじめ、幼稚園や中学校、それに市民の憩いの場となる公園などがある。住宅も密集している。
◇電波中継局と携帯基地局
通信局とは、具体的にどのようなものなのか。本稿で取り上げる携帯基地局と電波中継局について、まずは手短に説明しておこう.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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携帯基地局の例。さまざまな形状があるので、他のアンテナと判別できないこともある。写真は神戸市北区鈴蘭台のソフトバンク、KDDIの基地局のアンテナ。 |
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電波中継局の例。(出典は、「ポストカードのAIR」) |
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化学物質過敏症や電磁波による健康被害の専門家・北里研究所病院の宮田幹夫医師による所見の例。電磁波に敏感に反応する人々が存在することを示している。 |
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