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刑務所で頻発するセクハラ実態 佐賀少年刑務所で刑務官が派遣社員に無理矢理キス、ラブホテルに強制連行

情報提供
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処分説明書。黒塗りの青枠はホテルニューオータニ佐賀、赤枠は派遣社員Aの唇を無理矢理キスをし、と記載
 佐賀少年刑務所で働く派遣社員の藤井香苗氏(現30代半ば、仮名)は、入社2か月後の09年6月、懇親会の帰りに上司の束本陽次氏(現50代後半、仮名)に無理矢理キスされ、ホテルに行こうとしつこく言われ、断ると、職場で仕事を与えない、無視する、といったパワハラ被害にあった。10年4月の懇親会では、二次会に行く途中に束本氏にタクシーでラブホテルに連行され性的関係を強制。藤井氏は法務省上層部に告発し、11年12月に処分が下ったが、性的関係については合意だったとして闇に葬られた。藤井氏は12年2月、法務省と束本氏を相手取り、330万円の損害賠償を求め佐賀地裁に提訴。「今後、同じような思いをする人がでないように」(陳述書より)との思いからだ。筆者の全省庁を対象とする不祥事調査では、たしかに刑務所の職員たちの不祥事の異様さは突出している。刑務所で蔓延するセクハラの実態をお伝えする。(法務省の懲戒処分リスト<09年4月~11年12月>は記事末尾からPDFダウンロード可)
Digest
  • 部下のスカートに手を突っ込み無理矢理キスする刑務官
  • ホテルを断られてパワハラ開始…無視、仕事を干す
  • 騙し打ちでラブホテルに連行
  • 「このセクハラは犯罪」刑務所の医師
  • 事件の核心・性的関係を闇に葬った法務省上層部
  • セクハラ・パワハラの損害賠償請求で佐賀地裁に提訴
  • 刑務所に蔓延する刑務官の変態セクハラ行為
  • 公金不正支出疑惑も

部下のスカートに手を突っ込み無理矢理キスする刑務官

訴状や原告の陳述書、準備書面、証拠署名によると、原告の藤井香苗氏(現30代半ば、仮名)は、08年4月1日に佐賀少年刑務所に派遣社員として採用された。配属先は、用度課だった。

用度課とは、刑務所内の物資の購入、営繕(建物などの修理)、給養(衣類、寝具、食事など日常生活に必要な物品の貸与、支給)、職員の福利厚生などの経理、事務を行うセクション。課長、係長、職員で構成されており、人員は刑務官8人、法務技官2人、派遣社員4人の計14人(08年度)。

藤井氏は、用度課で派遣の相談窓口をしている隣の席の刑務官・束本陽次氏(現50代後半、既婚、仮名)から指示を受け、仕事をすることが多かった。

こうして入社から間もない08年6月6日(金)、いきなり事件は起きた。この日は用度課の懇親会だった。一次会はホテルニューオータニ佐賀のビアガーデン、二次会は束本氏のいきつけのスナック、三次会もあり、藤井氏も参加していた。

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ホテルニューオータニ佐賀(佐賀市与賀町1-2)

三次会が終わると、藤井氏は車をとめてあるニューオータニまでタクシーで行き、「代行」の車を使って帰ろうと思った。すると、束本氏がやってきて「送ってあげるよ」というので、同じタクシーに乗車した。束本氏は車で来ておらず、途中で藤井氏を降ろす経路だった。

ところが、ニューオータニに着き、藤井氏がタクシーから降りて、地下駐車場に向かうと、なんと束本氏もタクシーから降りてついてきた。

藤井氏はびっくりした。すると、突然、束本氏は、藤井氏を地下駐車場の壁際に押し付け、無理矢理キスをして、スカートの下から手を突っ込み、下半身に触れた。

藤井氏は突然の事態に驚愕し、「やめてください!!」と言って顔をそむけ、急いで自分の車に乗った。

すると束本氏は追いかけてきて、助手席に乗り込んできた。そして、「ホテルに行こう」と何度も言った。

藤井氏は、突然のことで混乱したが、新しい上司なので、警察を呼んでことを荒げるのは得策ではないと思い、説得して帰ってもらおう、と考え、「帰るから、降りて下さい」と訴えた。

しかし、束本氏は車から降りず、「車を出して」と言うので、「飲酒運転ですよ」と拒否して、10分ほどの押し問答の末、「この状況を早く脱したい。早く降ろしたい」との一心で車を動かした。

そして、束本氏の住む官舎まで送って行ったが、なかなか降りないので、官舎の周りを何周もして、やっと降りた。その間も、束本氏は再三、「ホテルに行こう」と言うので、そのたびに「行きません」と拒否し続けた。

藤井氏はこの日、ショックと、今後、職場でどう接すればいよいのか、今後もセクハラが続くのか、と悩み、眠れなかった。

ホテルを断られてパワハラ開始…無視、仕事を干す

翌日、実家にいると、携帯に知らない番号からかかってきた。出ると、束本氏だった。同氏は「昨日はごめんやったね。誰にも言わんやろ」と言い、口止めしてきた。藤井氏は、話すのも嫌で、早く電話を切りたかったので、「はい」「はい」と生返事をするのみだった。

週明け6月9日(月)、藤井氏が職場に行くと、束本氏は、マスクメロンを給湯室に置いているから、もって帰るよう言った。藤井氏は「いりません」と何度も断ったにもかかわらず、「よかけん、もって帰らんね」「よかけん、よかけん」と無理矢理もって帰らせた。

「謝罪の意味なんだろうな、と思いました」と藤井氏はつづっている。

このセクハラ事件から約一週間後、急に束本氏は、朝会っても挨拶を返さなかったり、「仕事はないですか?」と聞いても、ぶっきりぼうに「ない」と答えるようになった。

「ああ、ホテルに行かなかったのがいけなかったのか、と思いました」(藤井氏)

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佐賀少年刑務所(佐賀県佐賀市新生町2-1)、法務省HPより

また藤井氏自身は、束本氏に対し、普通に接しているつもりだが、心の中で避けたい気持ちがあるので、気づかないうちに、冷たい態度を取っていたのかもしれない、と思った。そこで、束本氏に対しては、できるだけ丁寧に、笑顔で応対するようにした。

そうしているうちに、束本氏の機嫌が戻り、普通にあいさつや声を交わすようになった。藤井氏はホッとしたが、それから1、2か月すると、また、束本氏の機嫌が悪くなり、挨拶はおろか、仕事で必要なことさえ口頭で伝えず、紙に書いて手渡すようになった。

藤井氏は、知らず知らずのうちに避けたいという気持ちが態度に出てしまったからではないか、と不安になり、より一層、笑顔で応対するなどのご機嫌取りをする、というサイクルを繰り返した。

束本氏は、機嫌が悪い状態が終わると、藤井氏の机の引き出しに、ワインや韓国の土産物を入れた。「これ、何ですか?」と驚いて藤井氏が問うと、「いいから、持って帰らんね」という。

「謝罪の意味で、ワインを入れてあるんだ」と藤井氏は思った。

なお、そのときのワイン計2本を、藤井氏は、栓を開けずに置いてあり、証拠写真にもなっている。嬉しければとっくに飲んでいるはずであり、迷惑だったことの証左といえよう。

夜中に突然、束本氏が酔っぱらって電話をしてくることも度々あった。機嫌が悪くなることを恐れ、電話を取ると、「声が聞きたくなった」などという。そのたびに、「はい」「はい」と生返事で対応した。

こうして束本氏の機嫌が悪くなる→良くなる、たまに夜中に電話、という周期を1年近くも繰り返す中、09年3月の職場の送別会で、こんなことが発覚した。酒の席で藤井氏が、束本氏に対し、普通に接してほしい、ということを、やんわりと伝えたところ、束本氏は、「神田先生(仮名)の仕事ばっかりして、焼きもちをやいている」と口走ったのだ。

神田先生とは、用度課の職員である。藤井氏は、たまに神田氏の仕事の依頼も受けて、事務作業などをしていた。それをみて、ひそかに束本氏は機嫌を悪くしていた、というのである。

束本氏の嫉妬心を改めて知り、藤井氏は驚いた。

しかも、その後、実際に、職場でこんなことがあった。藤井氏が神田氏の指示で仕事をしていると、束本氏が、いきなり「だいの仕事をしよっとか!辞めろ!」と激怒したのだ。

スレトスから、藤井氏は09年12月には、円形脱毛症になってしまった。

騙し打ちでラブホテルに連行

入社から2年が経過した10年4月28日、決定的なセクハラが発生した。

この日は用度課の歓迎会があった。一次会が終了し、みなで二次会に向かうなかで、束本氏が藤井氏に近づいてきて「二次会に行こう」と語ってきて、タクシーに腰を押される感じで乗せられた。「みなさんは?」と藤井氏は聞いたが、束本氏は無言で、そのまま横に乗り込んできた。

そして行き先を言わないまま、タクシーに、「ここ右に曲って」などとさかんに指示をする。こうして着いた場所は、シティフェイスというラブホテルだった

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セクハラの現場となったラブホテル

佐賀地裁(佐賀県佐賀市中の小路3-22)

刑務所内で蔓延するセクハラの数々

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