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モンゴルで働く-3 日本的「ボトムアップ型モデル」市場を開拓せよ

情報提供
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ウランバートルのロジスティックス・センターに届けられた日本からの私の荷物の様子。届いた荷物は写真のように。海外に荷物を送る際は、盗難防止も兼ねてテープでぐるぐる巻きにしないといけない。
 モンゴルに来て2ヶ月。会社に出社し、モンゴル人と接する機会も増えた。その中で、日本人とモンゴル人のビジネスのやり方の違いに面食らうことがあった。また、モンゴルへの進出が積極的な中国・韓国企業に比べ、日本企業は少ない。その理由は、ただ単に内陸国でアクセスが悪いというだけでなく、ビジネスのやり方が正反対であり、現地のニーズに合うか否かの差があると考えるようになった。中国、韓国、モンゴルは、スピード重視のアジア的な「トップダウン型モデル」でビジネスを進め、これは品質重視の「ボトムアップ型モデル」の日本とは対照的だ。冬季に平均気温がマイナス数十度に下がるモンゴルでは、夏の間にスピード重視で仕事を進めることが求められる事情もある。今回は、父が建築士兼土地家屋調査士である私が、主に建設業への現場観察を基に両モデルを考察のうえ、日本企業はどの分野を攻めるべきなのか、考えた。
Digest
  • 外国人登録と海・大陸横断のロマン溢れるロジスティックス
  • 急な投資話「日本人で数千万から投資してくれる人を紹介して」
  • スピード重視のアジア的な「トップダウン型モデル」
  • 品質重視の日本的「ボトムアップ型モデル」
  • 新興国で「ボトムアップ型モデル」の日本はどこを攻めるべきか

NTT西日本、アビームコンサルティングを経て日本のサラリーマンをエグジットした著者は、モンゴルの会社に活路を見出す。5月からウランバートルに赴任し、ビジネスに取り掛かりつつある。モンゴルの今がわかる同時並行ルポ。

外国人登録と海・大陸横断のロマン溢れるロジスティックス

モンゴルに滞在して2ヶ月程経過し、モンゴル語で挨拶や値段を聞くぐらいはできるようになってきた。はじめたばかりの拙いモンゴル語を英語で補ってコミュニケーションするものの、やはり現地に溶け込むには現地の言葉でコミュニケーションをとらないといけない、と痛感している。

会社であるが、デスクワークをするメンバーは私を含め5人の小規模である。職場はマンションの一室を借りている。

会社が外国人を雇う場合、外国人税として280,800トゥグルク(約2万円)を、毎月支払わなければならない。日本の外務省の資料の「(3)モンゴル国民の平均給与」によると、モンゴルの平均賃金で最も高い金融業でも月給696,700トゥグルク(約4万9,000円)なので、外国人税は会社にとって、やや負担になるな、と思った。

それでも社長のLkhamaaさんが日本人を雇い入れたいと言っていたのは、外国人、特に日本人が会社に所属しているということは、いろいろな面で会社の信用度が上がる、と見込んでいたのだろう。

私の月給は日本の最低賃金を下回るが、モンゴルの相場では、かなり高くなる。Lkhamaaさんから「あなたは奨学金の返済もしているでしょう。この金額で生活してみて厳しかったら言ってくれ、上げるから」と言われた。仕事でバリューを十分に出すまでは、提示された給与のままで頑張ることにした。

私は、奨学金という名のローンを、社会人になって毎月23,240円(約350,000万トゥグルク)返済し続けているが、返済の猶予を申請するつもりだ。この金額は、モンゴルでは「国防分野、国家公務員幹部職員、社会保険分野」の会社員の平均月給(351,100トゥグルク)に相当し、大変な金額だ。

私は外国人労働者であるため、外国人登録証は面倒な手続きを経なければならない。モンゴルの外国人登録は、わざわざ空港近くの入国管理局にいって、書類の提出、指紋の採取、顔写真の撮影をしなければならない。ウランバートル市内中心部になぜないのか、と疑問に思う。外国人登録証を発行してもらい、正式に「モンゴルで働く日本人」になることができた。

会社の同僚のDさんから日本円で2万円分の送料を、日本の運送会社である「セントラル・エキスプレス」の銀行口座に振り込んでくれ、と依頼が来たことを聞く。1箱5,000円、4箱運んだので合計2万円となる。私が日本から送った荷物が届いたようだ。

現地の感覚からすると、かなり高額である。銀行口座は、ゴロムト銀行(Голомт Банк)というモンゴル現地の銀行である。外人の日本人が、日本円で振込みしますなんて来たら、だいぶ時間がかかるだとうな、と思ったら、銀行窓口ではスムーズに対応してくれた。ここは、日本の銀行も見習って欲しいところである。

その振込みの依頼の時には、私の荷物がモンゴルのザミン・ウードという中国国境の町にやっと着いた、と聞いた。私が東京にいる時に、セントラル・エキスプレスの委託で佐川急便が荷物を取りにやって来て、伝票には横浜の山下埠頭行きが書いてあった。海を経て、中国大陸を渡ってきたのである。それが、やっとモンゴルまで来てくれたかと思うと気分が踊った。

2日ほどしたら、同僚であるDさんから、日本から送られた荷物が届いているから、ロジスティックス・センターまで一緒に行くことになった。

Dさんと、その旦那さんの車(旧型のプリウス)で、その車に同乗させてもらう中、身振り手振り、常にモンゴル語のテキストと辞書を駆使してコミュニケーションを図る。言葉が拙くても、自分のことのように手伝いをしてくれるモンゴル人の気質はうれしく思う。

ちなみに、モンゴルではプリウスが人気だ。理由は、ロシアから入手するガソリンの価格が高く、燃費効率がよいプリウスなどのハイブリッドカーは喜ばれるためである。そのためか、モンゴル人のプリウスの多くはガソリン給油をぎりぎりまで我慢して車を走らせる。ガス欠になって道路途中、手押しで動かされている旧型プリウスをよく見る。

ロジスティックス・センターに行って、また料金の請求で28,000トゥグルク(約1,960円)を支払ったものの、荷物はまだ届いておらず、荷物の入っているコンテナは陸路を移動中とのことであった。一体、なんのための電話連絡だったのか。この国では、こういうことはよく起こる。2日後には届く、とのことであった。

2日後、気を取り直して現地までバスで行くことにした。バスの到着駅は「Sapporo」という名前である。日本の北海道の札幌市に名前の由来があるらしい。ここでDさんとロジスティックス・センターに待ち合わせをした。

コンテナの中に家具、企業用製品、個人の日用品まで、さまざまな荷物が「詰められるだけ詰め込まれている」状態であった。いやな予感がする。

案の定、ダンボールが悪意をもって潰されたと思えるぐらいに凹んでいた

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職場近くの中国系建設会社のマンション建設現場。中国語が監督と作業員から聞こえてくるので、中国からモンゴルへ出稼ぎに来ているようだ。もちろん、モンゴル人作業者もいる。建築現場の整理整頓などすべての面で管理が徹底されていないように見える。日本の建築家から見ると「40年前の日本のレベルだ」とのこと。

韓国の建設会社であるLOTTEE&Cのマンション。外観が立派に見えるが、建築で詰めの甘さがいくつも見られる。マンションの外壁の角は直線でないのが肉眼でもわかる。手前のトンネルのようなものは地下駐車場の入り口で、道は雑で一車線しかない。見えないところだとさらに詰めが甘くなる。しかし、モンゴル祭典であるナーダムの舞台になる「CentralStadium」の前という、良い場所に建てられている。「ASIATOP10CONSTRUCTIONVALUECREATOR」という目標スローガンが掲げられていたが、安価な価格で好立地を押さえておくという「トップダウン型モデル」で進出していくと考えられる。

日本政府のODAプロジェクトの基で建てられた「太陽橋」の様子。モンゴルの既設の橋に比べると、違いが大いに分かるものであった。鉄道の上を通る橋なので、工事の難易度も高い。

日本資本の建設会社による「FourSeasonGardens」の様子。現地作業員が工事をするので、どうしても塗装がはがれるなどの部分は出てくるものの、全体の構造にズレなどは肉眼で見えない。厳重なセキュリティ、オートロックのエントランス、地下駐車場の作りは日本のものと遜色がない。建設途中のマンションも見ることができたが、足場や作業スペースなどが他の建設現場と違って広くとられている。最上階にはコンクリートを調整するジャッキもあり、誤差の修正を行っている。これらは、日本の建築専門家からすると中小建設業でも「当たり前にする」とのことである。

モンゴルの成長を表す2つのビルが見える。左側の「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」のような形をしたのが「BlueSky」、右側が「CentralTower」である。「CentralTower」にはLouisVuitton、Armaniなどのブランドショップが並ぶ。ちなみに、人が多いのは、この写真を撮影した日が、モンゴルの祭典である「ナーダム」の日だったからである。「CentralTower」にはモンゴル国旗が張られている。

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中澤康人2013/09/27 18:09
しーしゃん2013/09/14 16:36
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