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モンゴルで働く-1 「グローバルな仕事をしたい」というキャリアの軌跡

情報提供
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2013年3月31日のウランバートル現地の写真をモンゴル人からいただく。このとき、安倍首相がモンゴルの首相、大統領と会談を行っており、日本国旗が広場に掲げられていた。
 筆者は2013年5月からモンゴル現地で働くことを決断した。なぜモンゴル?という疑問が湧くと思われるが、それはチャンスが多々ある国と判断したからである。実は、モンゴルは豊富な資源を背景に世界で最も景気がよい国の一つであり、首都ウランバートルでは建設ラッシュが続き、伝統的な住居「ゲル」を無くす都市計画が政府から掲げられている。また、親日国であるため日本人というだけで働く上で優位性があるという。今回の記事では、私がモンゴルで働くことを決断するまでキャリアについて具体的に記す。海外志向のある大学生や若手社員にとって、意思決定の参考になれば幸いである。
Digest
  • 「GDP成長率世界一位」のモンゴル国
  • 海外志向で、かつ国内地域貢献も
  • NTTでの飛び込み営業
  • 地方支店で働くということ
  • マッキンゼーは英語面接通過、地方からのしんどい転職活動
  • 11回にわたる慰留工作、辞めるほうが大変だった
  • ITコンサルタントをやってみた現実
  • 二度目の転職活動とモンゴルの現地会社との出会い
  • モンゴル出発までの準備
【筆者プロフィール】
2007年4月 都内の私大卒業後、NTT西日本に入社、富山支店で営業担当
2011年7月 アビームコンサルティングに転職、IT系のコンサルタントに
2013年5月 在モンゴルの専門商社に転職、日本人は自分だけの環境で働く

「GDP成長率世界一位」のモンゴル国

日本人がモンゴルと聞くとまずイメージするのは羊・遊牧民族・ゲル、朝青龍・白鵬等の相撲力士ぐらいであるかと思われる。それ以外のイメージが湧きにくい国であるかと思われるので、モンゴルという国の基礎情報について触れたい。

モンゴルの人口は約322万人(2013年7月推定値)、面積は約156万平方キロメートルと日本のおよそ4倍の広さを持つ国である。かつてのモンゴルはソ連の支援で成り立つ社会主義国であったものの、ソ連崩壊後には急速に資本主義化を進めてきた。現在のモンゴルはレアメタル等の資源バブルによって世界でGDPが最も伸びている国で、The Economistによると2013年にはGDP成長率は18.1%に上り世界で最も成長する国であると予測されている

最近のモンゴル(ウランバートル)の様子がわかりやすく紹介されている動画がある。ウランバートルではゲルではなく高層ビルやマンションの建設が進み、馬や羊でなく自動車が走っている。ウランバートルは慢性的な渋滞に悩まされており、車のナンバーの表記で、運転をしてはならない曜日が決められている。

モンゴル人から聞いた話では、インフレの伸び率に伴い、銀行の預金の利子も現地通貨で14%、ドルで9%というすさまじい状況となっている。すでにPwC、E&Y、KPMGの大手会計コンサルティング会社がモンゴルに相次いでオフィスを設立し、Bloombergもモンゴルオフィスを設立したとのことである。モンゴル人が「日本の商社もモンゴルに進出してきているものの、アメリカ、オーストラリア、ブラジル、韓国などの会社に比べると遅い」と言っていた。

モンゴルは親日国であり、日本人には30日までの期間の訪問のビザ発行を免除している。つまり、観光目的でモンゴルを訪問するのに日本人だけがビザなしで入れますよ、ということである。

また、日本であまり知られていないことであるが、モンゴル人はすさまじいまでに中国を嫌っている。「モンゴル人に対して『中国人みたいだね』というのは最大の侮辱の言葉だから言わないように」とモンゴル人に言われたほど。ダヤル・モンゴルという極右団体が跋扈しており、モンゴル国内にある外資系企業でも、特に中国企業が襲われているという事例が日本の外務省の海外安全ページで挙げられている。

よく日本人が間違えるのが「内モンゴル」とモンゴル国を混合することであるが、内モンゴルは中国の自治区である。内モンゴル人は、生粋のモンゴル人からすると「中国に洗脳されてしまったモンゴル人」と言われており、内モンゴルの人の話すモンゴル語はだいぶ変わっている、とのことである。具体的には、モンゴル語ではロシア語から外来語が来ているため「テレビ」はそのまま「テレビ」というが、内モンゴルの人は「テレビ」を「映像を映す箱」といったような表現をして違和感がある、とのことであった。

モンゴルのまとまった経済情報のリリースは、私の知る限りにおいて、日本の外務省の発表、『WEDGE』の11月号、業界紙(北海道建設新聞)・地方紙(新潟日報等)の一部特集ぐらいしか無い。『日経ビジネス』などの店頭でよく目にする雑誌では東南アジアの記事の方が目立つ。これらの記事の温度間の差は、やはり人口規模の小ささとアクセスの悪さがあることと、資源を除く分野で大手企業が積極的でないことがあることが推測される。非常にニッチな市場であるともいえる。

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渋谷区神山町にある在日モンゴル大使館。高級住宅街の松濤の近くに位置している。写真左側の扉部分を開けてそのまま入れる。

海外志向で、かつ国内地域貢献も

私がモンゴルで働くことを決断した経緯は、2つの動機がある。1つ目は「グローバルな仕事がしたい」、2つ目は「日本国内の地域貢献をしたい」である。掘り下げていうと、1つ目は海外の現地で仕事をするということであり、2つ目は私の出身地の新潟県燕市のように世界で通用するモノを作っている地方が、海外でモノを売れるよう、ブリッジ役を果たしたい、ということである。

なぜこういった動機を持つかというと、中学時代から海外にあこがれがあったというのと、私が田舎から都内の大学に入ったときに、「地方から入学する学生の住まいの斡旋や、学生にバイトを紹介する」という特殊な団体に所属した背景がある。

海外志向が強いのが一貫した動機であるが、私のキャリアのスタートは、かなりドメスティックな大手通信キャリア(NTT西日本)であった。大学4年早々にNTT西日本に内々定をもらい、海外事業に積極的なメーカー2社から「通信キャリアを辞退するならば内々定をあげる」状態であった。そして、海外MBAの留学制度があるという理由で通信キャリアを選んだ。高校の終わりから海外MBAというものに興味を持っていたため、大学生で就職活動のときは、それを実現できる場所にいた方がよいのでは、とその時は思ったのである。

これは、いま振り返ると随分と遠回りなキャリアパスとなった。いま大学生で就職活動をしている学生や第二新卒で転職活動中の方々には、自分の意に素直に従って、後悔しない職を選んで欲しいと思う。

これから、モンゴルと一切関係の無い通信キャリアとITコンサルの内容を記述することになるが、思い切った決断をしたものだな、ということを理解していただけることと、海外への仕事に対して躊躇している方の背中の後押しになることを目的に書きたいと思う。

NTTでの飛び込み営業

新卒で入社した通信キャリアは、4年3ヶ月在籍し、大阪と富山でドメスティックな営業を経験した。大学生の就職活動での説明会では、サービス企画の話、技術革新系の部署の話、そして海外MBA留学を終えた社員を紹介していたものだが、現実に新入社員が配属される部署は限定されている。新入社員の配属先は、事務系(文系)は中小企業の飛び込み営業、コールセンター、もしくは営業SEである。そして技術系は、SE、研究開発系、もしくは設備系である。

さらに、新入社員の配属先は、出身地と大学とは縁のない土地で仕事を経験して、次の異動には、出身地か大学のある地域、もしくはそこに近い地域に配属となる。その次に、やっと本社に配属される、というのが一般的なパターンである。もちろん例外的な人事もあるが、それは少数である。

どういった基準で配属されているのかは不明確であるが、MyNewsJapanのグループ企業の記事にあったように、いまだに国家Ⅰ種、Ⅱ種のような背番号による振り分けが行われていた。これは実際に、地方支店にいる部長から聞いた話であるが

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平成22年4月20日にソフトバンクが発表した「『光の道』の実現に向けて」の資料中にある、NTTの人口構成を示した図。50歳以上の社員に偏っているかがわかる。

NTTの労働組合で若手リーダをやっていた際に見学した敦賀原発の写真。写真は建設予定の原発3号機、4号機であるが、稼働中の1号機、2号機はバスの外から見る見るのみで写真撮影禁止だった。この見学の約2ヶ月後に東日本大震災が起こった。

モンゴルで働く会社の社長が表紙に載った、モンゴルのスポーツ雑誌。会社の運営が軌道に乗り、自分で貯めたお金でパリ・ダカールレースに参加したとのこと。

パスポートに貼られたモンゴルのビザ。外国人登録証を発行してもらう。

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Ni-nja2013/10/02 10:45

すげー赤裸々な人生の足跡。ITコンサル挫折→マッキンゼーの選考内容とかも書いてあるし、IT系バックボーンもって海外就職した(い)人は読んでみるといいかも

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