日本IBMで「金曜夕方のミーティングに突然人事が現れ解雇通告→ロックアウト」が再燃、3か月で26人解雇
組合員に対する「解雇予告通知および解雇理由証明書」。1週間後に解雇する、と書いてある。 |
- Digest
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- 不意打ちでロックアウト解雇
- 解雇ミーティングを察知し、脱出
- クビ斬り部屋に連行した罪悪感で涙目の上司
- 見知らぬ人の正体は、人事担当者
- 新入社員以下の職位である「バンド4」に降格
- 組合員26人が次々に解雇
不意打ちでロックアウト解雇
日本IBMの有無を言わせぬ指名解雇的なロックアウトは以前からあったが、今回解雇通告を受けた26人は、全員がJMIU(全日本金属情報機器労働組合)の所属で、露骨な組合つぶしと言える。(※日本IBMのほとんどの社員は労組未加入)
今年の5月以降で最初に標的にされたのは組合員のI氏(女性、45歳)。I氏は1990年4月に新卒でIBMに入社し、システム管理、ユーザーサポートなどを経て、本社(東京都中央区日本橋箱崎町)のBTITサービス(ビジネス・トランスフォーメーション・インフォメーション・テクノロジー・サービス)に所属した。役職は主任クラスだった。
そんなI氏に今年5月31日(金)、不意に危機が襲ってきた。この日、課長クラス(以下、課長)の直属上司が、「手掛けているプロジェクトの進捗状況を聞きたい」と言い、16時に会議室でミーティングがセットされた。
こうしてミーティングがはじまり、I氏は進捗状況を説明し始めた。すると、ものの数分後、突然、部長クラス(以下、部長)の男性が入ってきた。
部長は、課長に何やらしゃべりかけたので、I氏は、2人で話すために部屋が必要なのかな、と思い、「私、出て行きましょうか?」と聞いたが、部長は「いや、残っていてください」と言う。その途端、課長は部屋から出て行った。
その後、I氏が見たことのない30~40代の女性が入ってきて、「人事です」と言った。
「あ!これは、もしかしたら!」とI氏は思った。昨年の、組合員の解雇事件と同じ状況ではないか、と。
その途端、部長は、一枚の紙を手に取り、いきなり、こう読み上げた。
「会社は、貴殿を2013年6月12日付で解雇します。また本日(2013年5月31日)以降、会社は貴殿に労務の提供を求めません。従って、貴殿の出社を禁じます。
なお、会社は、同日までに解雇予告手当として■■■■■■円(金額は伏せる)を貴殿の給与振込口座に振り込んで支払います。
貴殿は、業績の低い状態が続いており、その間、会社は様々な改善機会の提供やその支援を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、会社は、もはやこの状態を放っておくことができないと判断しました。以上が貴殿を解雇する理由となります」
I氏 |
その後、人事担当者が、「オプションとして、6月6日までに、自主退職に必要な書類にサインして提出すれば、加算金と転職あっせん会社を紹介します」と説明し、「細かいことは書類を渡すので読んで下さい」と言った。
こうして、ものの10分程度で話は終わった。
I氏はこの日は帰宅したが、週明けの6月3日、組合書記長の杉野憲作氏(12年9月の記事のトップ画像の人物)とともに出社した。すると、オフィスに入るためのIDカードは、すでに無効になっており入れなかった。セキュリティーセンターに問い合わせると、「5月31日24時で切られています」という。
人事を呼び出し、「どういうことですか?」と聞くと、「出社は求めません」というのみ。いわゆる、ロックアウトである。
会社が提示した自主退職で加算金という選択肢については、I氏はこう語る。
「私は、そもそも組合の中央執行委員をやっていましたし、そんな理不尽な解雇を受け入れるつもりは全くなかったので、自主退職の書類は出しませんでした」
こうして期日の6月12日が来て、I氏は解雇となった。
なお、「自己都合退職の加算金」の金額については、組合員たちによると、年齢やキャリアによって区々だが、概ね、年収を12で割った額を1か月として、40代後半から50代で6か月程度で、なかには12か月といわれるケースもあり、40代前半以下は、若いほど月数は多くなる仕組みで、「1000万円いけばいい方」という。
解雇ミーティングを察知し、脱出
酒本氏(実名、男性、57歳)は、中途採用で滋賀県にあるIBM野洲工場でエンジニアとして長年働いてきたが、同工場の製造部門がなくなり、08年から本社に異動となった。業務内容は、営業部門のサポートをするバックオフィスだった。
酒本氏は10年2月に組合に入った。
「色々と嫌がらせとか、いじめを受けていたので、組合に入りました。いじめというのは、例えば、営業の経験がないなかでやっていたので、直属の上司から『もの覚えが悪い』だとか、『こんなこともできないのか!』とか、『会社に入って、もう何年経っているんだ!!』とか、そんなことばっかり言われ続けました。それに嫌気がさして組合に入りました」と酒本氏は言う。
そんな酒本氏が、会社に狙い撃ちされたのは、今年6月12日(水)のこと。この日、部長のさらに上の所属長クラス(以下、所属長)の上司から、メールがきた。そこには、こう書いてあった。
「6月14日(金)17時から、スキップ・インタビューをやりたい」
スキップ・インタビューとは、直属の上司との面談を飛び越えて(スキップ)、上司の上司とミーティングすることを指す。
このメールをみて酒本氏は、「あ!これは!!」と思った。
「これまで組合の方から、金曜の17時っていうのは、解雇通知を言い渡されるミーティングが多い、と聞いていたんです。ですから、ヤバイな、と思いました」(酒本氏)
そこで組合に状況をすぐ伝えたところ、「それは危ないから、どういう目的でミーティングを行うのか、聞いた方がいい」とアドバイスを受けた。
そこで酒本氏はメールで「どういう目的でしょうか?」と聞いた。
すると翌日、こういう返信がきた。
「STSのマネジメントとしての、スキップ・インタビューです」
STSとは、酒本氏の所属部署で、セールス・トランザクション・サポートの略。あまりにも抽象的なこの返事に、酒本氏は「ますますこれは危ない」と感じ、労組に相談した。すると、「IBMの営業は、四半期の締めの6月は忙しいので、目的のはっきりしないミーティングには出られません」と言うよう、助言を受けた。
そこで酒本氏は、そのようにメールした。
だが、所属長は、「予定通りお待ちしています」と返答。
酒本氏は「これはもう、間違いないな」と思い、組合に相談すると、当日は17時36分(定時)に、PCも携帯も私物も、全部まとめて帰るよう指示を受けた。
こうして酒本氏は、定時になった途端、会社から脱出した。
酒本氏。I氏と酒本氏は会社を相手取り、提訴した |
すると、翌6月15日(土)、酒本氏の自宅に速達で郵便が送られてきた。中身をみると、解雇予告通知書だった。
郵送について、酒本氏には思い当たる節があった
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日本IBM社長のマーティン・イェッター氏。2012年5月15日就任。同社HPより
JMIU(全日本金属情報機器労働組合)日本アイビーエム支部組合の機関紙「かいな」13年7月16日号
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今更ながら驚愕
まだやってんの・・・・
金払ってクビにしてんだからいいんじゃないの
外資系はキツいね→
「自己都合退職の加算金」で年収の半分から一年分も貰えるのか・・・大企業すげぇ
何が問題かわからない。追い出し部屋とかより遥かにマトモな対応だろ
さすが外資系
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読者コメント
日本IBMが労働者に解雇を通告してそのまま会社から閉め出す「ロックアウト解雇」の撤回を求めている裁判で2018年3月26日、第5次原告の男性に対して会社が解決金を支払うことで合意し、東京高裁で和解しました。原告11人が5次に分かれて訴えている裁判は、全判決で労働者が勝訴し、全員が和解しました。
IBMから入手できたロックアウト通知書を特別に差し上げます。
https://twitter.com/risamio48
仕事を干す。仕事の成果全体を見ず重箱の隅をつついてうまくいかない点を指摘する。
こうして年末PBC評価を下げておく。これが3年、4年続いたところで解雇通告を言い渡す。
私もこうして解雇された組合員のひとりです。自己都合退職にすれば退職金を加算してやると言われ、止むなく会社の指示通りに退職させられました。数ヶ月経ちますが次の仕事はありません。
IBMの不当労働行為認定
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2013082801001447/1.htm
公開リストラじゃなくて、黒字会社で組合員限定の首切りだから、まず組合を潰しておいてもっと激しいリストラをやるつもりでしょうな~!
売り上げが半分になったので、社員も半分にする計画が進行中だと思う。
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