「原発問題で味わった悲しい経験を、二度と味わいたくない」電磁波問題の第一人者・荻野晃也氏に聞く
1940年生まれ。理学博士。京都大学退職後、「電磁波環境研究所」を主宰。一貫して電磁波の危険性を訴え続けてきた。著書に『健康を脅かす電磁波』、『危ない携帯電話』など多数。監訳書に『死の電流』、『電力線電磁場被曝』、『電磁波汚染と健康』など(いずれも緑風出版)。 |
- Digest
-
- 原発問題と電磁波問題は同じ
- 原発の影響は癌だけではない
- 奇形植物の検証
- 政治的配慮と予防原則の軽視
- メディアと司法の重大な責任
荻野--
わたしは元々、原子核物理学を専門としてきた関係で、原発のガンマ線も含め、いわゆる電磁波の仲間は、周波数の高いものから、周波数の低いもの(送電線、家電等)まですべて危険だという考えに立ってきました。
荻野氏の著書『健康を脅かす電磁波』。高周波から低周波まで、電磁波による健康リスクを解説している。 |
ですから、「放射線の危険性を話して欲しい」と言われた時には、70年代から「TVなどからも電磁波が出ていますよ」と話していました。しかし、その問題を強く意識したのは米国のスリーマイル島・原発事故(TMI事故)の調査で渡米した1979年秋からです。
愛媛県の伊方原発訴訟に1973年から特別弁護補佐人としてかかわっていた関係もあり、TMI事故に関する資料を収集するために米国へ赴いたわけですが、その時、たまたまワシントンの反原発の科学者から、(発電した電力の)配電線の近くに住む住民の間に白血病患者が多いとの最近の疫学論文の存在を知らされました。
それは、ワルトハイマーという人がTMI事故の発生した同じ3月に発表した論文で、配電線の傍で小児白血病の発症率が3倍ぐらいになっている、という内容でした。
(上)携帯電話の基地局。(下)高圧電線の鉄塔。千葉県松戸市で撮影。(写真提供=藤沢千代子さん) |
原発問題と電磁波問題は同じ
ちなみに伊方原発訴訟(原審は松山地裁)とは、原子炉設置許可の取り消しを求めた日本で最初の訴訟である。原発のメルトダウンや全電源喪失の可能性についても触れた訴訟で、国側の勝訴に終わったが、福島第1原発の事故後、判決を再検証する必要性が浮上している。判決が完全に間違っていたとする意見も出始めている。
電磁波とは、ごく単純に言えば、「電波」のことである。しかし、その電波には、周波数の違い、あるいはエネルギーの違いによって様々な種類に分類されている。周波数が高い電磁波としてよく知られているものとしては、原発のガンマ線やレントゲン撮影のエックス線がある。
一方、周波数の低い電磁波としては、送電線や家電の極低周波電磁波がある。さらに厳密にいえば、送電線の極低周波よりも、更に低いシューマン共振・電磁波と呼ばれる自然界の電磁波も存在している。
人間の脳波との相応性から察して、人体が完全に順応している電磁波は、極めて微弱なシューマン共振・電磁波だけである可能性が高い。それ以外の電磁波、とりわけ人工の電磁波は、人体になんらかの悪影響を及ぼす。学術的に電磁波は、次のように分類されている。
■電離放射線
ガンマ線、X線、紫外線など・・・
■非電離放射線
可視光線、赤外線、マイクロ波、高周波、低周波など・・・
電離放射線とは、物質を構成している分子や原子をバラバラにする電離作用がある電磁波で、遺伝子を破壊してしまう。これに対して非電離放射線は、従来は物質を構成している分子や原子をバラバラにする作用はないのだが、最近はフリーラジカル効果などの類似の作用があるとする説が有力になっている。
電磁波の種類を示した図。右側ほど周波数が高い。(『健康を脅かす電磁波』より転載) つまり電離放射線も非電離放射線も危険というのが常識になってきた。事実、2011年の5月、世界保健機関(WHO)傘下の世界ガン研究機関(IARC)は、2001年に極低周波に、2011年5月にはマイクロ波に発癌性がある可能性を認定した。
日本では、電離放射線を放射線と呼び、非電離放射線を電波と呼んで区別しているが、欧米では全てが電磁波であり、同時に放射線の仲間である。米国で原子力問題の専門家が荻野氏に、極低周波電磁波と白血病の関係を扱ったワルトハイマー論文を紹介したゆえんである。
荻野--
ワルトハイマー論文を読んで、今までよりも電磁波問題に関心を持ったのですが、そのころは、伊方原発訴訟で忙しく(狭義の)電波を中心とする電磁波問題に取り組むことはありませんでした。その伊方原発の裁判が最高裁へ移り、
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り5,309字/全文7,049字
静岡県の浜岡原発。林に遮られて内部は見えない。展望台からの写真撮影・スケッチは禁止されている。(撮影=黒薮哲哉)
茎が肥大化した奇形のタンポポ。(写真提供=塩田永さん)
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
“原発のガンマ線も含め、いわゆる電磁波の仲間は、周波数の高いものから、周波数の低いもの(送電線、家電等)まですべて危険だという考えに立ってきました。”
赤外線まで危険とかw 他人の不安を煽ってる暇があったら、自分の体から出てる輻射をさっさと止めろ
『原発のガンマ線も含め、いわゆる電磁波の仲間は、周波数の高いものから、周波数の低いもの(送電線、家電等)まですべて危険だという考えに立ってきました。』結論ありきにしては論理も実験データも弱すぎる。
同じ人の書いてるhttp://www.mynewsjapan.com/reports/1886を見ると携帯の基地局の近くで奇形植物大発生らしい。へー、じゃあ出力が遙かに大きいテレビ放送用の電波塔の近所はミュータントの巣窟なんですね!
必要以上の放射能忌避と異常に急激な脱原発で味わった悲しい経験は、確かに繰り返してはならないと強く思う。
MCSと同じで信用し難い話。送電線のHz程度の電磁波や、携帯の数百MHz~1GHzはダメだけど、kHz程度のラジオは無害とか、こういう特殊性の根拠が納得できない。携帯は疫学から示唆されてるらしいから、全否定はしないけど。
半端ない出オチ感。「原子核物理学を専門としてきた関係で、原発のガンマ線も含め、いわゆる電磁波の仲間は、周波数の高いものから、周波数の低いもの(送電線、家電等)まですべて危険だという考えに立ってきました
『欧米では全てが電磁波であり、同時に放射線の仲間である』って日本でだってそうだと思うがね。要するに「(電離だろうと非電離だろうと)放射線は放射線」だって煽りたいってことか。暗闇バンザイ!
日本全国、水田の中に高圧送電用の鉄塔が立っている場所はいくらでもある。もし電磁波が植物の奇形の原因になるならば、とっくに農家が気づいている。社会問題になっている。研究者のくせに想像力に欠ける奴だ。
facebookコメント
読者コメント
311後西日本中古マンション移住し携帯中継局屋上設置を知る。携帯使用時声に雑音入り聴きにくくラジオは雑音激しい。8階建て屋上設置の直下2階が住まい。家族共一日耳鳴り熟眠できず疲労。関東で内部被曝し、移住1年半体調元に戻らずパソコンマウスを握れば指の関節がリュウマチのように腫れ。内部被曝+家電電磁波+屋上設置携帯基地局の相乗効果(互いに相乗効果を生むのか)諦め。
国内外の情報の紹介のみ。荻野氏自身による科学的な分析は皆無、ただ印象を述べるのみ
この方の本はもっと充実して欲しい。アナログとデジタルと変調方式の混同を直す。追加検証された論文を利用する。ご自身で検証していただく。基地局などのアンテナの指向性、構造を確認していただく。これくらいやらないとツッコミどころ満載。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)
企画「CMリテラシー」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。