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日本キャリアデザイン学会講演「グローバル時代のキャリア戦略」

情報提供
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2013年10月27日、日本キャリアデザイン学会の第10回研究大会、武蔵野大学有明キャンパスにて。テーマは『グローバル時代のキャリア戦略』について。
 「この国の人たちのほうがむしろ世界の平均に近くて、日本人が異常なんですよ」――これは中国とインドで、現地で働く日本人が口々に言ったことである。確かに、中国インドの労働市場を、日本と比べると、明らかに特徴があり、驚くほど似ている。ともに10億人超の人口を持ち、国連の予測によれば、2050年に、この2つの国で計30億人にもなるという。となれば、人類全体から見て異質なのは、確かに、日本人のほうである。(本稿は日本キャリアデザイン学会第10回研究大会の講演録です。前半はこちら(上)参照
Digest
  • 「対中印」での日本人の強み
  • 日本人メリットが活きる仕事の5条件
  • 日本人の強みが活きる職種、活きない職種
  • 日本人メリットは、いつまで有効なのか
  • 移民政策次第の「重力の世界」
  • 海外市場を攻められる仕事、守りに徹する仕事
  • 攻めのジャパンプレミアム
  • 「日本人としての自分の強み」を早くから考えよ
※本記事の原題は「グローバル時代のキャリア戦略」(下)「キャリアデザインをどう考えていくべきか」です

「対中印」での日本人の強み

“中印(中国とインド)労働市場”の特徴は、以下のとおりだ。

①日本など全く話にならないほどの「超・格差社会」
②流動性が異常に高く半年~数年で転職が当り前の「短視眼的キャリア」
③男女の差なく向上心もハングリー精神も旺盛な「超キャリアアップ志向」
④チームワークが苦手でチームワークに意義を見出さない「超・個人主義」
⑤顧客サービスの概念が存在しない「身分&階層社会」
(中国の共産党支配や戸籍制度、インドのカースト制度)

中印人がアジアでマジョリティーを持つ時代には、彼らの弱点で、かつ日本人の強みであるスキルを武器として活用することが望ましい。それはつまり、④と⑤の裏側である、チームワークとサービスが活きる仕事である。

④についていえば、彼らはチーム(組織)のために働く意味は全くないと考えるのが標準であるが、逆に日本人は組織信仰が強く、会社のために過労死するまで働く。

この原因については諸説あるが、儒教の政治利用に端を発するものと考えられ、藩のため(江戸時代)、国のため(明治時代~)、会社のため(戦後~)、と日本人は組織のために自己犠牲することを美徳とするDNAを育み、戦中も「一億玉砕」と個人全員が死んでも国(組織)は守る、という倒錯した発想がまかり通っていた。

これは受け入れがたい思想だが、私もサラリーマン時代にそういう「会社人間」を間近で沢山みてきて、日本人の特徴であることは確信している。従って、日本では技術が組織に蓄積されるが、中印にそれは全く起きない。

⑤についていえば、中国では「サービスを提供する側がエラい」というカルチャーであるし、インドもカーストが厳然と残っている国だから、「サービスを提供して当然」という感じであった。

チームワークとサービスが活きる仕事とは、具体的な例でいえば、工場の生産管理、旅館・ホテル、航空会社、テーマパーク…といったものである。

このように、グローバル化が進むと、自らの強みとライバルの弱みを自覚してキャリアを構築する発想が必要となるのである。

日本人メリットが活きる仕事の5条件

日本人メリットを強力に発揮できる仕事ならば、競争率が、いきなり70分の1になる(人類70億人:日本人1億人)。しかも、それは「日本で生まれ育った日本人でないと身につけずらい特殊性」であり、それほど努力しなくても自然と身についているものがベースだ。

だから、グローバル化する世界では、日本人メリットを無視したキャリア構築はナンセンスとさえいえる。

それでは、上述した「チームワーク&サービス」以外にも、日本人メリットが活きる条件は何か。帰国してからじっくり考えると、この5つくらいに集約された。

 1.独自カルチャー依存
 2.チームワーク&サービス
 3.信用&コミュニケーション
 4.ハイレベルな日本語

5.国による参入規制

それらの条件があてはまる職業をピックアップしてみたものが、下記の対応表である。

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日本人メリットと職種の対応表

たとえば漫画家というのは、日本にいると気付きにくいが、日本独特のカルチャーに基づいている。

日本の本屋には広い「漫画コーナー」があるが、あれは日本だけの現象だ。幼い頃から漫画に囲まれ、毎週『少年ジャンプ』など週刊誌で最新作を入手でき、漫画家に弟子入りしOJTで学べる環境は、世界中で日本だけである。

日本料理人も同じで、世界中で日本食はブームで競争力が高いが、「日式」の偽物が中国人・韓国人の経営でなされているケースが多く、残念なのが実情だ。人間の味覚は小さいころの食生活で10代のうちに固まるとされるため、ホンモノの日本食は、本来、外国人が後から参入できない。日本で生まれ育ち、10代で料理人の道に入って修行を積むしかないのだ。

「信用&コミュニケーション」という点では、弁護士や医師といった日本人個人を相手にする職業は、プライバシーにかかわる相談ごとが発生するため、同じカルチャーを共有していないと、コミュニケーションが成立しにくい

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匿名希望2013/11/23 18:24
匿名希望2013/11/23 17:26
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