「奨学金」返還緩和策に重大な欠陥発覚 機関保証団体「日本国際教育支援協会」通じて300万円+延滞金10%一括請求の野蛮
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返還開始から2年半しか経っておらず、貧困状態にもあるTさんに対して300万円の一括請求をしてきた公益財団法人「日本国際教育支援協会」と送ってきた振込み用紙。1ヶ月以内に払えとある。日本学生支援機構の返還猶予が使える状況であるにもかかわらず、我関せずといった様子で過酷な取り立てを行なっている(東京都目黒区)。 |
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- 「奨学金」は「学生ローン」と文科相
- 日本国際教育支援協会
- 困窮状態のところに「300万円一括で払え」
- 「機関保証」の落とし穴
- 同居していた支援機構と支援協会
「奨学金」は「学生ローン」と文科相
3月19日の衆議院文部科学委員会でのことだった。日本学生支援機構による過酷な回収を問題視する宮本岳志・衆議院議員(共産)と下村博文・文部科学大臣の間で次のようなやりとりが交わされた。
宮本岳志・衆議院議員 ……現状の(日本学生支援)機構の奨学金制度にはまだまだ改善すべき問題点が存在する、こういう問題意識は共有していただいているというふうに考えてよろしいですね。「奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います」――教育の機会均等を確保するための制度だといいながら、訴訟を乱発して高額の延滞金をむしり取る。日本学生支援機構が抱える矛盾は、とうとう文部科学大臣をして「学生ローン」だと答弁させるところまできた。そして4月1日、ようやくあらたな返還緩和策が導入された。緩和策の柱は2つ。下村博文・文部科学大臣 これは宮本委員もおっしゃったように、奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います。ぜひ本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく必要があるというふうに認識しております。
②延滞金を従来の年利10%から同5%に引き下げる(ただし過去に発生した延滞金は10%のまま)。
延滞金・利息を廃止し、返還猶予は無期限に適用すべきだと考える筆者にとっては不十分だが、それでも一歩前進だ。特に①の「支払い猶予」の改善は効果が期待できる。有効に使えば多くの人が当面の苦境を脱出できるはずだ。返還猶予の間は延滞金や利息がつかない。債権管理回収会社(サービサー)の取り立てに悩むこともなければ裁判を起こされる心配もない。
文部科学省の吉田大輔・高等教育局長の答弁によれば、役所の年収証明があれば過去にさかのぼって返還猶予を適用(遡及適用)することもできるという。この答弁どおりに現場が対応するのであれば、支払いが滞ったことで延滞金や利息を加算されている場合でも、返還猶予の遡及適用によってその額が減ることになる。また、収入が乏しいにもかかわらず繰り上げ一括請求されている場合でも、過去にさかのぼって返還猶予を適用することで本来の分割返還に戻るはずだ。
もっとも、実際そのようにうまくいくかどうかはまだわからない。返還緩和策が有効に機能するのか注視していく必要があるだろう。
それでも、少なくとも当分は裁判を乱発するようなことはなくなるのではないか。筆者はやや楽観的となった。
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機関保証団体である日本国際教育支援協会がTさんに送ってきた請求書。300万円を払うか、分割案に応じなければ年利10%の延滞金を課すとある。日本学生支援機構の延滞金は4月1日以降5%(従来は10%)になったが、「支援協会」は10%のままだ。![]() |
日本国際教育支援協会
ところがすぐに、こうした観測が甘かったことに気がついた。支払い猶予の延長も延滞金利率の低減も関係なく、300万円もの金を一括で請求された例を耳にしたのだ。被害者は都内在住のTさん(24歳)である。支払猶予制度が延長されたのに、なぜそんな乱暴なことができるのか。疑問を抱きながらTさんの話を聞くうち、一つの団体の名前が浮かんできた。
「日本国際学生支援協会」という公益財団法人である。300万円の一括請求をしてきたのは「日本学生支援機」ではなく、この財団法人だった。機関保証を担う団体であるこの先は会員限定です。
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「日本学生支援機構に債権を戻してほしい」と日本国際教育支援協会に訴えるTさん。支援機構と支援協会は同じ建物に入居していた。
日本国際学生支援協会による機関保証の仕組みを書いた日本学生支援協会のパンフレット。
日本国際学生支援協会の理事長は文部官僚の井上正幸氏が務める。支援協会のHPより。
新入生向けに私大が開催した「奨学金」の説明会。延滞金による借金増加や、一括請求、機関保証団体による過酷な取り立てなどのリスクについては一言も説明はなかった。また、日本学生支援機構の返還猶予制度の延長や延滞金低減についも説明はなかった。
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保証人を付けない&&返還猶予申請しないで延滞したケースなのでは?
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