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国交省が事故情報を隠匿 過去76回の開示実績くつがえし、鉄道死傷者の年齢・性別を突然スミ塗りに

情報提供
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「運転事故等整理表」の一部。情報公開判断の前後で年齢性別がスミ塗りされたことがわかる。年齢性別が開示された状態の「運転事故等整理表」(2002年度以降のすべて)は.xlsダウンロード可。
 国土交通省が昨年12月、大量保有する鉄道事故データの情報公開判断を突然変更し、死傷者の年齢・性別を不開示に切り替えていたことが、筆者の開示請求でわかった。このデータは、年間1000件を超える鉄道事故報告などをまとめた「運転事故等整理表」。死傷者の身体障碍、認知症、飲酒の有無なども記載され、人身事故の原因や防止のための網羅的な分析には不可欠なデータであることから、報道機関による開示請求が多いという。国交省は2009年度以降の5年間に計76回、年齢・性別を開示していたが、その開示実績をあっさり覆した。今後、この異議申し立てに対し、非開示の妥当性を判断するのは「情報公開審査会」の委員15名であるが、各省の審議会と同様、役人の意向に沿った御用学者や元裁判官らで組織される仕組みとなっており、役人が行政情報を囲い込み、隠すことができてしまう。情報公開法の機能不全は深刻だ。

 鉄道の人身事故データを大量保有する国土交通省が昨年12月、事故データの情報公開判断を突然変更し、死傷者の年齢性別を不開示に切り替えていたことが、筆者の開示請求からわかった。

 年齢性別はもともと開示情報だ。国交省は2009年度から13年度の5年間に、計76回、年齢性別を開示するとの決定を出してしてきた。国民が作り上げた開示実績と言えるが、今回の判断変更であっさり覆された形だ。

 このデータは、国交省が鉄道会社からの事故報告などをまとめた「運転事故等整理表」。死傷者の身体障碍や認知症の有無、事故時の飲酒、年齢性別などが記載されており、人身事故の網羅的な分析には不可欠なデータだ。

 国交省によれば報道機関からの開示請求が多いというが、今後は年齢性別を使った分析や報道が阻害されることになった。

 また、不開示情報以外は「開示しなければならない」のが情報公開法の大原則だが、行政機関は、みずから過去に下した開示決定にまったく縛られないという法律の欠陥も判明した。

 開示情報を突然不開示にした国交省の問題と、開示実績を認めない情報公開法の欠陥を報告する。

 鉄道の人身事故情報をめぐっては、警察が鉄道自殺者の年齢、性別、職業、動機を集計用にまとめたデータを持っているが、やはり不開示情報になっており、国民は見ることができない。
【既報1】関東で増え続ける鉄道自殺者の職業は?動機は? 警察庁はデータを不開示、内閣府も追認
【既報2】埼玉県警、鉄道事故取材のフリー記者を「自称記者」扱い 秘密保護法下で危険な「おまえは記者じゃない」理論

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「運転事故等整理表」の年齢性別の記入率の推移。自殺を除いた人身事故は2010年度以降、ほぼ100%年齢性別が記入されていることがわかる。

◇国交省、分析目的で年齢性別の記入求める 鉄道会社に
 国交省鉄道局の安全監理官室が保有する「運転事故等整理表」には、鉄道会社が報告した事故や災害などによる遅延情報が1件ずつ記載されている。全体の報告数は毎年約6000〜6500件前後、このうち、列車に接触して人が死傷するいわゆる「人身事故」は1200件ほどある。そのほぼ半数は自殺だ。

 鉄道利用者の感覚で「人身事故」と言えば自殺を含むが、行政上の分類では、自殺は動物と接触した場合と同じで人身事故に含まない。

 その自殺を除いた部分について、国交省は2010年4月、整理表の記入方法に関する通達を改定し、死傷者の年齢性別を記入するよう鉄道会社に求めた。国交省みずから事故の分析に使うためだ。

 もともと整理表に記載する死傷者情報は「身体障碍がある場合に障碍の内容を記入する」(通達)という方針だったため、年齢の記載がないデータが8割近くを占めていた。

 通達改定の効果は目覚ましく、10年度以降の整理表は、自殺以外のほぼすべて(約98%)の事故で、死傷者の年齢性別が記入されるようになった(自殺の場合は記入率30〜40%程度のまま変化なし)。

 この成果は、情報公開を通じて国民も享受できた。整理表を開示請求すれば、年齢性別を含む事故概要を知ることができ、独自の分析も可能だった。報道機関による開示請求も多いという。

 しかし、国交省は昨年12月、年齢性別は個人識別情報に該当するとして、不開示情報に切り替えた。

◇鉄道局「前例に沿って準備した」 開示直前で判断変更
 主導したのは情報公開室らしい。開示請求を受けた安全監理官室が、従来通り年齢性別をオープンにしたデータを準備すると、情報公開室から「待った」が掛かったという。

 鉄道安全監査官のアキヤマ氏は、「いままでと同じように[年齢性別をそのままにした]データを作成し広報[情報公開室]で見てもらっていたが、広報の判断で開示しないということになった」と話す。※[ ]内は筆者による。

 安全監理官室の別の職員も、

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情報公開判断が変更される直前の開示決定通知書。10月18日付けの決定では不開示部分が「無し」になっていることがわかる。

(上)総務省情報公開推進室から送ってもらった情報公開法5条1号ただし書きの解説。(下)国交省が筆者宛の開示決定通知書に同封したメモ書き。

(上)筆者の異議申立て書。(下)筆者の異議を受けた国交省が情報公開審査会に出した「理由説明書」。

(上)国交省がおこなった踏切事故の分析例(「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成24年度)」)。赤矢印のグラフが年齢性別に関する部分。(下)筆者が運転事故等整理表をもとにおこなった踏切事故の分析例。自動車と列車の事故、自殺を除いて集計した。

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achakeym2016/06/22 17:38

佐藤裕一

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通りすがり2014/05/10 07:12
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