松下電器に屈服した朝日新聞
中村社長は、「AERA」(2002年10月21日号)の「松下『改革』でV字回復のウソ」(広告見出し)という9頁の特集記事に怒り、10月16日、朝日の箱島社長に抗議の内容証明を送付。
松下の広告は、当然のように、朝日新聞から引き揚げられた。これに対して、門垣取締役はお詫びの文書を中村社長に送付し、「AERA」11月25日号に松下の抗議文と朝日側の謝罪文を掲載。編集長も異動させ、まさに全面降伏だった。
その後、埋め合わせとして、朝日上層部は自主的に松下の新商品記事やユニバーサルデザインへの取り組み記事を書くよう、取材現場に圧力をかける。経済部が渋るなか、学芸部にお鉢がまわり、「皆にやさしい形 ユニバーサルデザイン」(東京は12月19日朝刊)という露骨なPR記事が掲載されてしまう。読者に、この裏を読み解くリテラシーなどあるはずもない。
広告引き揚げで、推定で1億4千万円の広告収入を失った朝日は、こうしたPR記事で松下からの信用を得て、年度末までに例年並みの水準に戻したという(逆に読者の信用は失っているが読者はそれに気づくほど賢くない)。松下に買収された格好で、まさに「人の心はお金で買える」(堀江氏)の実例だ。
こうした内部文書が出てくることから分かるように、箱島社長ほか中核をなす経営陣を快く思わない人たち、権力に屈しないジャーナリズム精神を持った人たちが社内にいるということではある(たとえば日経ならそもそもいない)が、それが主流とはなれないところに、広告収入に依存した現状のビジネスモデルの限界がある。
結局、企業からカネを貰って成り立っている以上、企業のことを中立な目で見ることはできるはずがないのであって、広告を引き揚げられたら、屈服する以外に方法がないということだ。
![]() |
「文藝春秋」2005年5月号の提灯記事。これに続くソニーの新CEOの記事は、トップ交代後なので必然性があるが、松下のほうはタイアップ広告に限りなく近い内容。![]() |
広告を引き揚げられてもなお、筋を通して戦ったという話は、あればPRになる話なので必ず出てくるはずだが、未だかつて聞いたことがない。利益を追求する株式会社としてはあり得ない選択だ。
だから、ほとんどのマスコミは、こうした広告主から抗議を受けるような内容は、最初から自粛して書かない。現場記者が書いてもデスクが潰す。「AERA」は、書いただけマシともいえるのである。
かくいう文藝春秋社も、月刊「文藝春秋」2005年5月号では、「立国の基は『ものづくり』にあり」という松下・中村社長の、えげつないほどのPR記事を載せている。松下からたくさんの広告費を貰っている点では、朝日と全く同じ構図であり、人のことをとやかく言える立場ではないのである。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
どうせ新聞社も派遣やら使ってるくせに
薄型テレビが好調な松下が、プラズマ工場をまた建設すると発表。これ、一転して生産設備過剰になって大変なことになりそうな予感がするが。
●先日のサンデープロジェクトで、田原総一郎が中村会長にインタビューしていたが、まるで提灯インタビュー(笑)この記事を読んでいたから、松下・中村独裁体制の理解が進んだよ。
今の松下は、マスコミに投資した賜物?V字回復してその事実が報道されたのか、それともマスコミへの圧力よって企業イメージを一新しV字回復したのか・・・と疑問に感じました。ここ10年の株価の変動と見くらべた限りでは後者と思えます。
実際、松下はみごとにV字回復したけどね。
新党日本絡みの田中康夫インタビュー捏造といい、朝日をメディアとして信用するヤツもいないと思うが。
記者からの追加情報