タイムカードを通してからの残業

夏季ボーナスの確定を伝える「UNEWS」

構造不況業種である旅行代理店業界は、全体の報酬水準が低い。30歳では、業界トップであるJTBの業績の良い支店でも、サラリーが約35万円、ボーナスが年5ヶ月で550万円程度にとどまる。「仕事の割に安い」と感じる社員が多いのは、働く時間が長い割に残業代が出ないのも一因である。

「よし、通しにいくぞ!!」。ある支店では、20時になると、グループリーダーがグループ内の社員に指示をして、全員でタイムカードを通しに行く。そして、また職場に戻り、22時過ぎまで残業。定時は18時だから、1日2時間分しか残業代は出ない。

これは、月40時間を越える残業をするには、申請書を出さなければならないからだ。特に成績の悪い支店では上司が嫌がるために、つけられない。「ヨイショがうまい人が出世するカルチャー」なので、上司の意向には逆らえないという。22時以降は残業代が割増になるため、ますますつけにくい。

高い組合費

これら収入面の問題に加え、支出面で見逃せないのが、全業種のなかでもトップクラスの、30歳で約6千円もする組合費である。組合員に対しては「１ヶ月ストをしても給料を払えるように蓄えておくため」などと説明されているが、実際にはストをやったことはない。「労組経験者が出世しやすい」というのは同社では常識になっており、何かと優遇されている。

支出面で人によっては大きな負担となっているのが、「ナイスショップ」のノルマだ。これはデパート＆ショップの共通ギフト券であるが、担当顧客の規模によって半年で30万～200万円程度分が課される。「必達ノルマ」とされ、達成できないと自分で買わざるをえなくなるのがポイントである。

顧客としても、金券ショップに行けば3％引きで売っているものを定価で買わされるのはバカバカしいため、なかなか買ってくれない。それでも達成状況が芳しくないと、毎朝、朝礼で吊るし上げられるので結局、社員が自腹で買うはめになる。同様に「JTBカード」（クレジットカード）を半期で10～20件とるノルマや、「ナイスグルメ」（飲食券）「ナイスジョイ」（遊園地）、さらにJTB協賛の「万博入場券」「ピカソ展」のノルマなど、随時ノルマが課される。

ノーローン＋自腹でノルマを凌ぐ

現金が不足がちの社員の間では、最近、ノルマ達成のために、一週間無利息の「ノーローン」が流行っているという。まずは借金して、自分でナイスショップを買ってノルマを達成する。そしてナイスショップを金券ショップに持って行き、換金。換金率は93％くらいなので、足りない分を自腹で足して、ノーローン側に1週間以内に返すのである。

「ヤフーのオークションなどで200万円分まとめてナイスショップを