提供を受けたデータの一部。大学生2957人の自殺原因の内訳が記録されていた。
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「就職失敗」や「進路の悩み」など、“将来展望”に関する原因で自殺した大学生が、過去6年間(2009〜14年)で1018人にのぼることが、内閣府のデータからはじめて判明した。うち42人については、併せて「家族からの叱責」や「親子関係の不和」も、原因として記録されていた。うつ病などの精神疾患を一因に自殺した大学生は、実数で664人、失恋など男女問題は192人と判明。大学生にとっては、将来展望こそが、精神疾患や失恋よりも、はるかに、死に至る深刻なリスクであることが明らかになった。内閣府自殺対策推進室の担当者は、詳細データ提供は「おそらく、これまでにない」と述べ、民間で分析できるようになったのは初めて。データは記事末尾からダウンロードできるので自殺対策の検討に役立てて欲しい(エクセルファイル)。
【Digest】
◇警察庁の公表資料ではわからないこと
◇最大の原因は「将来展望」 6年で1018人が死亡
◇「将来展望」と組み合わせのある自殺原因も判明
◇「家族からの叱責」は高リスク
◇<就活自殺>は定説の3倍か
◇「将来展望x精神疾患」は女性にリスク
◇過労自殺? 大学生34人が「勤務問題」で死亡
◇データ提供に至る経緯
◇資料ダウンロード
「就職失敗」や「進路の悩み」など、将来展望に関する原因で自殺した大学生が、過去6年間(2009〜14年)で1018人にのぼることが内閣府のデータから判明した。元は「自殺統計原票」という、自殺者一人一人について遺書などから作成された警察庁の書類の集計。
自殺対策推進室が提供した詳細データを筆者が集計し、具体的な人数が明らかになった。同期間に自殺した大学生は、計2957人。その3割以上(34.2%)を占める1018人が、将来展望を理由に死亡していたことになる。なお、「不詳」が766人(27.6%)だった。
1018人は、「学業不振」「進路の悩み」「就職失敗」のひとつ以上を原因に死亡した人数。自殺者数に関する資料には警察庁の自殺統計があるが、公表されているのは原因ごとの集計結果のみで、複数原因を組み合わせた集計はできず、亡くなった命の数(実数)が不明だった。
このうち42人が、「家族からの叱責」や「親子関係の不和」といった家庭環境も原因になっていた。
また、大学生の自殺全体で、うつ病など精神疾患による死者は664人だったことも判明。将来への不安は、精神疾患を上回るリスクであることが明らかになった。
内閣府自殺対策推進室の担当者は、このような詳細データを提供するのは「おそらく、これまでにない」と述べおり、民間で分析できるようになるは初めてとみられる。データは、警察庁の自殺統計から内閣府が作成したという。
◇警察庁の公表資料ではわからないこと
今回、提供されたデータは、大学生ひとりひとりの自殺原因の内訳。
自殺者数と同じ2957行あり、性別、遺体の発見月とともに、原因がひとり3つまで記入されている。原因は「就職失敗」「進路に関する悩み」のように類型化され.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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大学生の自殺原因の全組み合わせ。 |
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「家族からの叱責」の半数以上は将来展望の原因とともに登場していた。 |
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警察庁の文書のうち、「自殺統計原票」と原因のつけ方を指示した部分(平成22年8月30日付「自殺統計原票作成要領の一部改正について」)。原票にはあらかじめ53種類の原因が記されている。 |
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内閣府自殺対策推進室とのメール |
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