大東建託社員がハンマーで顧客を殴打、瀕死の重傷を負わす――「優秀な」営業マンはなぜ破滅したのか③ アリ地獄のような苦境に
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松本市にある大東建託の管理部門「大東建託シーリング」。 |
- Digest
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- 「キャッシュカード100万円窃盗事件」
- 残債務のあるアパート建て替え強行で詐欺ふたたび
- だまされ続ける独居老人
- 殺し文句は「相続税対策」
- 自分で借金をして契約金立て替え
2011年8月に40歳すぎで大東建託松本支社に中途入社したG社員は、当初は契約や「見込み客」がなかなかとれない「売れない営業マン」だった。休日返上で、朝7時から翌朝未明の2時、3時まで飛び込み営業や報告書づくりに追われる過酷な長時間労働を強いられていた。
「運」が向いたのは2013年の後半あたりから。Aさんという高齢の男性(事件当時85歳)を飛び込み営業で顧客として獲得、たてつづけに契約を受注。そしてほかにも客がついて、契約を次々と取り、主任に昇格、支店「エース」になる。
しかし「業績が落ちる」ことを恐れ融資困難な契約でも強引にすすめ、G社員自身の金や、借りた金を投入。さらにAさんから金をだましとる。加えて、Aさんが新規アパートの計画に消極的なことに腹を立て、放火するという犯罪に走る。
【被害者Aさんのアパート建築受注状況】
1棟目(4戸)2013年12月契約、約4000万円(2014年8月完工)
2棟目(4戸)2013年12月契約、約4000万円(2015年2月完工)
3棟目(2戸)2014年11月契約、約2000万円(2015年6月完工)
※戸数、総工費は一部推定
【Aさんの被害状況】
(1)2014年9月12日、786万円詐取(別の顧客pさんの着工時金として大東建託に入金)=「786万円詐欺事件」
(2)2015年1月3日未明、Aさん宅の小便所高窓などに放火、自然鎮火(Aさんが4棟目に消極的になったことに立腹)=「Aさん宅放火事件」
(3)2015年3月4日、Aさんのキャッシュカードを無断でつかい、計100万円(58万円と42万円)を引き出して盗んだ(別の顧客qさん名義で偽造した架空契約の契約金として大東建託に入金)=「キャッシュカード100万円窃盗事件」
(4)2015年8月19日、Aさんをだまして800万円を別の顧客rさんの口座に入金させた(rさんが工事費として借りた短期融資の返済金)=「800万円詐欺事件」。
上の表のうち、(1)-(2)については「②」で述べた。本稿は、残る(3)以降の事件について、公判で明らかになった事実をもとに報告する。
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長野地裁松本支部に向けて護送される大東建託松本支店のG元社員。![]() |
「キャッシュカード100万円窃盗事件」
2015年1月3日未明に発生したAさん宅のボヤを、長野県警は当時不審火として捜査した。しかしG社員が放火の犯人であることをつきとめることができなかった。そして2ヶ月後の3月、G社員はあらたな犯罪を実行する。Aさんのキャッシュカードを勝手に使って100万円を引き出し、盗んだのだ。別の顧客(qさん)の契約金にあてるためだった。
検察の冒頭陳述などによれば経緯はこうだ。
――2015年3月上旬ごろ、Gは「営業成績をあげるためにはアパート契約の獲得が必要だ」と考えていたが、見込み客がなかった。そこでq名義で4700万円のアパート建築請負契約書を偽造する。qはすでにアパート2棟を建てている大東建託の顧客で、別の社員から担当を引き継いだ
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大東建託松本支店。
土日出勤する社員向けに、パソコンの電源を入れないように指示をした社内メール。休日勤務の記録を残さないためと思われる。残業隠しが行われている。
「相続税対策」を売り文句に、残債務のある築浅の大東アパートの建て替え契約を受注したG社員だが、融資のめどがつかず資金不足に陥り、顧客Aさんから金を盗むことを思いつく。
松本市内でみかけた不動産屋の表示。同市や同市近隣には多数の大東建託のアパートがある。松本支店は好成績だったという。
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読者コメント
何これ。新庄耕氏の「狭小邸宅」よりえぐい内容。真実は小説よりも奇なり。大東建託の異常性を感じる。はっきり言って法律でがんじがらめのヤクザよりも危険なのでは?反社会的勢力と言って良い大東建託は。
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