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埼玉県知事・上田清司を会計検査院に告発 知事特別秘書に違法給与支出、税金から45年間も――“ノリ弁”開示求め行政訴訟も提起

情報提供
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埼玉県知事特別秘書の伊地知伸久元志木市議。条例で定めた月額給料の上限を8万9500円も上回る違法に高額な給料とそれをもとに算出した違法に高い手当を受け取り続けている。任命も給料額の決定も、上田清司知事が行った。(埼玉県開示資料)
 埼玉県知事特別秘書に対して、条例の上限を月額9万円も超える高額な給料が払われていることが発覚した。再三の指摘を無視して組織的な税金泥棒が続けられており、責任者は上田清司埼玉県知事だ。条例違反は確実で、県議会も今年3月、重い腰をあげて「精査」を求める決議を採択したものの、具体的な動きはみられない。違法な支出は過去半世紀にもわたって続いてきたとみられ、数千万円から1億円前後の公金が「盗まれた」可能性が高い。新聞・テレビが騒がないのをいいことに、県は「話がかみあわない」と詭弁を弄してお茶を濁す。違法性を裏づける証拠文書の情報公開請求に対しては、徹底した黒塗りで隠蔽を続ける。この公然たる不正を見逃せば税金の盗み放題を許すことになる――危機感を抱いた筆者は、黒塗り情報の完全開示を求め、さいたま地裁に提訴し、会計検査院にも告発した。(訴状、歴代特別秘書に関する黒塗り文書はPDFダウンロード可)
Digest
  • 知事特別秘書給料額を秘密にした訳
  • 給与条例主義
  • 例外的に「情報提供」した真意
  • 一般職の最高額を超えていた!
  • 「一般職の職員の例により」の意味 
  • 「管理職手当分」って奇妙な釈明
  • 半世紀に及ぶヤミ手当支給の歴史
  • 附帯決議で違法性指摘
  • 「話がかみあわない」と人事課
  • 違法支給を懐に入れた?自民議員
  • 人事課職員とのやりとり
  • 情報公開求めて本人訴訟

知事特別秘書給料額を秘密にした訳

「埼玉県知事特別秘書の給料額はいくらか」――この質問を埼玉県にしたのは昨年(2017)夏のことだった。

折しも、「情報公開推進」を掲げた小池百合子知事が率いる東京都では、知事特別秘書の給料額を記した文書を黒塗りにして「情報開示」したとが世の批判を浴びていた。特別秘書の給料額は、一般職の給料表のなかから知事が定める――と条例は規定しているのだが、どの給料号級かは「個人情報」だというのだ。黒塗りを不服として筆者は都を相手どって裁判を起こし、そのことが報道された。すると都は一転して、知事特別秘書の給料・手当を公表した。

一般職職員の給料表は、都の場合、大半の職員向けのものと局長級以上の少数の職員のものの二種類ある。小池知事が現秘書に適用したのは後者の指定職給料表だった。そして、そのなかの「もっとも低い号級」だと知事は強調した。しかしその額は月額70万6000円、期末手当・地域手当を含めると年間1400万円以上という高額であることがわかった。

なお、東京都知事特別秘書の給料額非開示問題は、終わっていない。舛添要一前都知事時代の特別秘書2人(横田賢一・福嶋輝彦両氏)の給料情報はいまも開示されておらず、筆者が原告となって開示を求める裁判を起こしている(東京地裁 7月17日判決予定)。

〈小池都知事「特別秘書」は年収1400万円超・運転手つき専用車で通勤・勤怠管理もナシ、と判明――税金で選挙活動の疑いも〉

埼玉県に問い合わせをしたのは、以上のような取材の延長で、当初は単純に金額を確認するつもりだった。

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知事特別秘書への違法な支給が明白になっているにもかかわらず、是正を拒んでいる埼玉県。地元の新聞・テレビの問題意識も低い。

給与条例主義

地方自治法の定義で、職員に払う「給料」と「手当」は全く別のものとして区別されている。そして、それぞれ条例で決めた額しか払ってはならない。 いわゆる「給与条例主義」という地方自治の大原則である。

埼玉県知事特別秘書も、名称は仰々しいが、「県職員」という、一地方公務員であることにかわりはない。特別職というのは、地方公務員法の適用外の職員を指す概念で、一般職と異なり、兼業が可能となる。非常勤職員なども特別職という扱いになる。

埼玉県の職員であるから、給与条例主義にのっとって、給料・手当・費用弁償(旅費・宿泊費など)は、すべて条例に基づいて支給しなければならない。

知事特別秘書の給料・手当を定めているのは「特別職の職員の給与及び旅費に関する条例」だ。ここでいう「給与」とは、給料と手当などを含んだ表現である。

この条例の第1条で、まず「給料」について、こう定めている。

 一般職の職員の例により知事が定める額

だれが読んでも、「一般職の職員に払い得る給料のなかから知事が選ぶ」という意味にしか理解できないだろう。

埼玉県の一般職職員の給料は、別の条例で規定があり、給料表で細かく額が分類されている。もっとも、当初、埼玉県に特別秘書の給料額を問い合わせる際、具体的に給料表を確認することまではしなかった。おそらく15万円から最高で60万円くらいだろう、と想像した。

そして、特別秘書の給料はその最高額付近だろう、とも推測した。給料表を確かめなかったのは、まさか給料表を無視して給料額を決めるなどとは、想像もしていなかったからだ。

ところが現実は、その「まさか」だった

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知事特別秘書への違法支給が40年以上前の1970年代から続いていることを疑わせる県の文書。(埼玉県開示資料)

知事特別秘書の給料額を算出する際、条例上払えない「管理職手当」と「詭弁手当」相当分を上乗せしていたことを示す文書。筆者が記事で問題を指摘した直後にホームページで公表した(現在は削除)。

元県幹部で上田清司知事によって特別秘書に起用された現自民党埼玉県議の柿沼トミ子氏。自身が受け取った知事特別秘書の給料額について質問したが、回答はなかった。(埼玉県議会HPより)

柿沼トミ子知事特別秘書(現自民党県議会議員)の給料・手当を算出した謎の計算式。情報公開を求める裁判の対象文書のひとつである。(埼玉県開示資料)

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