やっぱり危ない鎮痛薬「アセトアミノフェン」――妊娠中使用で発達障害リスク増加 「危険性認め、過剰摂取防止を」戸田克広医師
日本で早くからアセトアミノフェンの胎児への危険性を指摘し、慎重投与の必要性を訴えてきた戸田克広医師 |
- Digest
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- 妊娠中でも使える唯一の鎮痛剤のはずが…
- 子どもの臍帯血と母親の血液で検証、発達障害のリスク3倍
- 欧米では妊婦の50~65%が使用
- 危険性を認めれば、使用は必要最低限になる
- 妊娠前に虫歯や慢性痛の治療を済ませよう
- 危険性の証拠は確実に増えている
妊娠中でも使える唯一の鎮痛剤のはずが…
病院で処方される「カロナール」の添付文書 |
アセトアミノフェンは、妊娠中でも安全に使用できる解熱鎮痛剤とみなされてきた。病院で処方されるのは「カロナール」という薬で、一般薬としては「ノーシン」(アラクス)などに使われている。
また風邪薬「パブロン」(大正製薬)、「ルル」(第一三共ヘルスケア)、「コンタック」(グラクソ・スミスクライン)などにも使用されている。
同じ鎮痛解熱作用を持つ成分としては「ロキソニン」や「アセチルサリチル酸」などの非ステロイド系抗炎症薬成分もあるが、これらは妊娠後期に使用すると胎児に異常を起こすことが知られており、妊婦は使用できないことになっている。
市販の解熱鎮痛剤の添付文書。アセトアミノフェンを使ったノーシンには、妊娠中の使用の注意書きはない |
市販薬の添付文書を見ると、「ロキソニン」やアセチルサリチル酸を使った「バファリン」には、「出産予定12週以内の妊婦」は使用してはいけないと書いてあるが、アセトアミノフェンを使った「ノーシン」にはそうした注意書きはない。
確かにほかの解熱鎮痛剤と比べると安全といえるわけだが、2013年以降幾つかの疫学調査で、妊娠中のアセトアミノフェンの使用で、生まれた子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害の発症リスクを高めることが示されてきている
5年前の2014年11月、その危険性を指摘する記事を書いた。
その後もデンマークやスペイン、ノルウェー、ニュージーランドなどで5つの疫学調査が論文として発表されている。
そこでは母親に対して妊娠中のアセトアミノフェンの使用の聞き取りを行って、その頻度と、子どもたちの発達障害の発症リスクの関連が調べられている。
アセトアミノフェンを使用しなかった母親と比べて、アミノフェンを使用した母親の方が子どもの発達障害の発症リスクが高くなった。
使用期間が長いほどリスクが高くなるなどの結果が示されてきた。
ただ、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、今のところ基準の見直しなどは行なっていない。
2015年にFDAが発表したレビューによると、上記の疫学調査は、妊娠中の女性への聞き取りでアセトアミノフェンの使用が推測されているため、実際に胎児がどの程度薬剤の影響を受けているのかについては確実性に欠け、因果関係があるとは断定できないとしている。
子どもの臍帯血と母親の血液で検証、発達障害のリスク3倍
その不十分な点を埋める最新研究が、2019年10月に論文として公表された
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