新型コロナ禍がより鮮明にした「労働者の未来図」――10年後に食える仕事食えない仕事
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コロナ禍で明暗分かれた「人間が強い」技能集約エリアの職業群 |
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- 既得権組織は本当に変化しない――新型コロナ禍で再確認
- この本の読み方―各世代、すべての働き手が対応を迫られている
- この本の目的――2020年以降の職業、仕事選びに
既得権組織は本当に変化しない――新型コロナ禍で再確認
政府のITがいかに絶望的なものか、という話はさんざん本書で書いている通りだが、危機に際して、予想どおり実害が出てきた。本書を読んだかたは、新型コロナ禍で、その弊害を再確認したはずだ。この数か月で次々と明らかになったアナログ行政はひどいものだった。
「10万円給付」の実務が、マイナンバー情報と住民基本台帳(世帯主情報が載っているデータベース)がつながっていないために、世帯主でない個人が申請できてしまったり、職員が2人一組で目視で読み合わせて住民票コードを手で入力するなど、ほとんど官製コントのような状況になっている。
東京都の新型コロナ感染情報も、保健所と本庁の間が、手書きFAXという紙のやりとりなので、いちいち職員による転記作業が発生し、情報は遅く、しばしば間違って修正作業が発生し、ろくに機能していない。ようは、昭和時代のまま、平成の30年間、世の中が急速に進歩し、PCが普及し、クラウドが発達したのに、何も手を付けずに放置していたのだ。
書評のなかで、森永さんが本書の特徴をこう書いている。
「特に素晴らしいなと思うのは、既得権をきちんと分析していることだ。いくら技術的に不要になっても、既得権で守られた仕事は消えないからだ」(森永卓郎氏)
ITが機能しないことによって、現場の職員が余計に働く。その休日出勤代や残業手当は、税金から支払われる。現場にとってはボーナスであり、どんなに無駄な作業でも役人は既得権者の代表なので、身分が保証され、職場に来ていれば失業することはない。
本来なら、こうした税金の無駄遣いや国民生活への悪影響(給付遅延、誤情報発表)について、為政者は責任をとって処分されるべきだ。それはマイナンバーを所管する高市早苗総務大臣であり、IT政策担当の竹本直一大臣であり、東京都なら小池知事とIT担当の宮坂学副知事あたりだろう。だが、日本は超無責任行政なので、誰にも責任はないことになり、うやむやなまま、この状況が10年20年後も、また繰り返されるわけである。実際に平成の30年間、何も進歩しなかったのだ。
この既得権エリアについては、市場原理が働かないため、一向に昭和時代のまま変わることはない。これは行政に限らず、準規制業種である医療機関や金融保険業界でも似たり寄ったりで、既得権には、そのガチガチ度合いにグラデーションがある。その要素を分析せずして、ITやAIが社会をどう変えるのかは、論じられない――という問題意識から、本書ではそこを特に詳しく論じている。
この間、感染症対策でキャッシュレスが進むかと思いきや、その動きは実に鈍く、私はクリニックで消毒した現金をお釣りでわたされたくらいだ。以前から、医療では衛生面が重要だからキャッシュレスにしたら、と提案しているのだが、これが半年たってもやってくれない。手数料の高さや、8割が現金(老人ほど現金)という壁があり、デビットを普及させまいとする金融業界の既得権が絡んでいる点は本書で書いたとおりで、薬剤師や医師と患者をとりまく日本のIT&AIも、著しく生産性が低い。
一方で、「手先ジョブ」エリアの仕事は、コロナ禍によってUberEatsや宅配業者が街中にあふれたことで、物流センターのピッキングや積み込み、配送ドライバーといった手先労働が、永遠不滅の人間労働であることが、日常生活のなかで改めて実感できたと思う。
新たに露呈したのは、対人ワークが大半を占める「職人プレミアム」エリアの職業(料理人、ホテルマン、マッサージ師…)が、対人であるがゆえになくなりはしないが、感染症にはめっぽう弱い、という弱点だ。これは、本書の執筆時点では気づかなかった新しい視点だった
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「テクノロジー進化と職業の変化」マップ
本書の目次(脱稿時)
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