有機フッ素化合物、水道経由で血中濃度アップ 規制甘いミネラルウォーターのアサヒ&サントリー「数値お答えできない」
高濃度の有機フッ素化合物が検出され、2020年4月以降停止中の国分寺市の東恋ヶ窪浄水所。震災時の応急給水拠点施設である看板はつけられたままだ |
- Digest
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- 有機フッ素化合物汚染問題とは
- アメリカ人、日本人のほぼ100%の血液から検出
- ピーファス(PFAS)の有害性とは
- 使用禁止でも終わらない汚染
- 東京多摩地域での汚染
- 水道高濃度地域の住民血液検査で高濃度に検出
- 水道水の安全性「地下水利用の有無」がカギ
- 米市販のミネラルウォーターから高濃度検出の事例も
- コンシューマーリポートが47種を調査
- 日本のミネラルウォーターは、水道水の規制外
- アサヒ飲料、サントリー「適切に管理しているが数値は答えられない」
有機フッ素化合物汚染問題とは
有機フッ素化合物(PFAS)とは、炭素にフッ素が結合した化合物の総称で、代表的なものはパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、ピーフォス)と、パーフルオロオクタン酸(PFOA、ピーフォア)の二物質。それ以外にも4700種類以上もあり、その化学物質グループの総称が「PFAS(ピーファス)」である。
水と油の両方をはじく特徴を持つため身近なところで使われてきた。
PFOSは、防水スプレーの原料や、空港や軍事基地などの燃料火災に使われる泡消火剤の原料などに使われてきた。
PFOAのほうは、フライパンや鍋の焦げつき防止や、ハンバーガーやピザ用の油をはじく包装紙などに使用されるフッ素樹脂の製造助剤として使われてきた。
これらPFASは、フライパンや防水スプレーなどの製品の製造時には労働者がばく露し、製品使用時には消費者がばく露する(直接ばく露)。また、それだけではなく工場の排水や、製品の廃棄時には環境中に排出され、土壌や河川、地下水を汚染する。厄介なのは難分解、高蓄積性のため、環境中に長くとどまり、水や土壌を汚染し、魚などにも蓄積することだ。
PFASの様々なばく露経路 欧州環境機構の報告書より筆者翻訳 |
地下水や水道水がPFASで汚染されると、その水を人間が飲み、魚を食べることで、再び人体に蓄積する。これが間接ばく露である(=左図)。
一方、直接ばく露の一つの事例としては、フッ素樹脂であるデンタルフロスによるものがあり、以前、MyNewsJapanでも報告している。
都内ドラックストアやヨーカドーでも販売中・テフロン樹脂のデンタルフロスで血中の有害フッ素化合物が上昇――子どもの脳発達障害も
環境中で、ほぼ分解されることなく、生体内にも蓄積されやすい性質から、海外では「永遠に残る化学物質(フォーエバーケミカル)と呼ばれ、専門家の間では第二のダイオキシン問題の可能性が指摘されている。
アメリカ人、日本人のほぼ100%の血液から検出
一度体内に入ると、その後、その量が半分になるまでかかる年月は、PFOSで5.4年、PFOAで3.8年、とされている。
アメリカの疾病対策センター(CDC)が定期的に行っているバイオモニタリング調査では、調査対象者からほぼ100%検出された。日本の小規模な環境省による調査でも、100%の人たちから検出されている。
濃度が低いものの、アメリカでも日本でも、ほぼ全員がばく露し続けているといってよい。
ピーファス(PFAS)の有害性とは
有機フッ素化合物の健康影響については、例えば米ウェストバージニア州のデュポン社が起こした大規模なPFOA汚染で、集団訴訟による賠償金の一部を使って行われた住民調査(C8科学調査会)の2013年の報告書で、以下6種類の病気との関連があるだろうと結論づけられている。
精巣がん
腎細胞がん
甲状腺疾患
潰瘍性大腸炎
高コレステロール血症
また、欧州連合(EU)の欧州環境機構(EEA)の報告書の中で、科学的証拠が高い有害影響と、まだ証拠としては低いが可能性が指摘されている有害影響を分けて図にしているので紹介しておく(下記図参照)。
PFASの主な有害影響(欧州環境機構の報告書より、筆者翻訳) |
特に妊娠中の胎児へのばく露は、出生後の成長発育に有害な影響を与える
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東京都の府中市・国分寺市2か所の浄水所の地図
2011年からの2浄水所の浄水でのPFOS,PFOAの合計値の推移。毎年基準の2倍以上の値が出ていた。情報開示請求で入手した東京都水道局資料を元に作成
血液検査の結果PFOSで国民平均の1.5~2倍、PFHxSでは30倍近い値が検出されている
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