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リクルート 7社再統合で密かに退職金制度を改悪、2千万円超の大幅カットも

情報提供
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今年度入社の社員から「上限100万円」と、唐突に超シブくなったリクルートの退職金制度。今年3月末までに入社した社員には手厚く、勤続わずか5年で2300万円(G35)~2600万円(G45)程度の退職金が可能だった(中途入社、41歳で退職の場合)。
 2021年4月に7つの子会社を再統合したリクルート。それに先立つ昨年12月、グループ各社の社員向けに、統合後の人事処遇面について人事部門が説明会を開いていた。「働き方の自由度を上げつつ成長できるオープンな組織に」といった人材戦略が語られ、北村吉弘社長のビデオメッセージが流され、4月からの新制度についての説明、と続く。出席者が内容を解説する。「一番の目玉は、退職金制度の変更でした。今年3月までに入社した社員は、当時所属していた会社の制度が継続しますが、この4月以後入社の社員からは一律で最大100万円になり、退職金の魅力はなくなりました。あと、『STEP休暇』取得時の30万円支給がなくなったのも、明確な改悪といえます」(元社員=今年前半まで在籍)。現役社員も「全体的に渋くなったな、という感想でした」。突然、渋くなったリクルートの報酬実態とその背景をリポートする。
Digest
  • 5年で辞めるモデルケースで報酬総額35%カット
  • 30万円支給も丸ごとカット、年5万円だけに
  • ①総人件費を下げたかった
  • ②「リクルートにとっての重要人材」のデジタルシフト
  • リクルート、3つの主要職種
  • ③人材市場逼迫&上場→定着率重視に180度の大転換
  • 定年退職者が2名でた
  • 「これから入社する人は改悪されるんだね」

■2021年4月に「株式会社リクルート」に統合された7社(主な事業)

(株)リクルートキャリア(『リクナビ』)
(株)リクルートジョブズ(『タウンワーク』『フロムエーナビ』)
(株)リクルート住まいカンパニー(『スーモ』)
(株)リクルートマーケティングパートナーズ(『ゼクシィ』『スタディサプリ』『カーセンサー』『ケイコとマナブ』)
(株)リクルートライフスタイル(『じゃらん』『ホットペッパー』)
(株)リクルートコミュニケーションズ ※社内向け広告代理店業
(株)リクルートテクノロジーズ ※社内向けITインフラ開発保守

5年で辞めるモデルケースで報酬総額35%カット

どのくらいカットされるのかというと、これが結構、洒落にならない額なのだ。従来の制度は、ちょうど10年前の2011年4月に始まり、2段階制になっていた。(→2011年2月2日付記事参照)

①「フロンティア制度」=新卒で6.5年、中途で5年を過ぎると、いつ辞めても年俸1年分の退職金を貰える。歴史は古く、旧「OPT制度」を2004年に改訂してフロンティア制度となった。

②「ニューフロンティア制度」=通称“当たり年”。3年ごとに訪れる特定の年齢「当たり年」で辞めると退職金を追加で支給。節目で退職を後押しする。金額は35歳と38歳で750万円。41歳、44歳、47歳で1500万円。『フレックス定年制』の後継制度として2011年にスタート。金額は、住まいカンパニーが500万円と1000万円になるなど制度が変わった子会社も一部あった)

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リクルートグループ退職金制度の「統合前・統合後」

①が発動しない限り、②の権利も得られない。つまり会社としては、入社したからには、新卒で6.5年、中途で5年は辞めずに働いてほしいが、そこからは辞めるインセンティブを与えるから独立起業するなり転職するなりして次のキャリアを歩んでくれ、特に35歳を過ぎたら、もっと強いインセンティブを与えるからなるべく早く辞めて後進にポストを譲ってくれ――という制度だった。

それが新陳代謝を促進し、リクルートの独特な“キープヤング”カルチャーを支え、「リ社で何を成し遂げ、リ社の次に何をするか」を考えながら働くという点で、他社とは一線を画す「通過ステップとしてのキャリアアップ企業」になっていた。「人材輩出企業」と言われてきた理由の1つも、30代~40歳前後で次のキャリアステージに進む際に背中を押す、資金的な仕掛けがあったからだ。

同社の平均勤続年数は6.2年(2021年3月時点)と公表されているが、これは10年超在籍する社員が引き上げている面があり、ボリュームゾーンはもっと短い。最も目立つパターンが、年俸1年分を貰える節目(中途で5年、新卒6.5年)と、「当たり年」(35歳からの3年刻み)での退職だという。

この制度設計では、たとえば36歳で年俸約800万円(『G35+』=マネージャークラスの一歩手前)で中途入社した社員の場合、昇格なしであっても、5年在籍して「当たり年」と呼ばれる年齢の1つ「41歳」で辞めると、800万×5年+800万(退職金①)+1500万(退職金②)=総額6300万円、の報酬を、5年間の在籍で受け取れた。退職金の手取り約2千万円は独立資金にもなった。

ところが今回、この歴史あるフロンティア制度を廃止。当たり年の追加退職金制度「ニューフロンティア制度」も廃止。勤続3年6ヶ月以上で一律最大100万円だけ、に一本化された。これは従来のCV職(営業系の契約社員)などとも同じ金額で、下限で統一した、と言ってよい。

その分、普段の報酬水準を引き上げる、というのなら理屈も通るが、説明会でそういった説明は一切なされていない。2021年4月入社以降も、同じ社内ランク(ミッショングレード)あたりの年俸設定額は引き上げられておらず、同水準に据え置かれた。

全く同じミッション(≒難易度)の仕事を同時期にこなして会社に貢献しても、退職金は100万円の定額制だ。800万円×5年+100万円(新退職金)=4100万円、が新しい5年間の額面報酬総額(G35+の場合)である。

実に、5年総額ベースの支払いで、6300万円→4100万円と、35%もの総報酬カット。退職金だけでいうと、2300万円→100万円へと、96%もカットされる。仕事で求められる成果は同じなのに、入社が1日早いか遅いかの違いで2千万円超もの報酬差が生じ、両者が職場に混在しているのが、現在のリクルートだ。実に大胆な人件費カットが、しれっと断行されたことになる。

30万円支給も丸ごとカット、年5万円だけに

もう一点、在籍中の社員にも影響がある重要な変更があった

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2021年4月からの「その他制度、福利厚生」。STEP休暇取得とセットだった「30万円支給」が、しれっと消滅。一方で「アニバーサリー休暇」取得で年5万円支給される制度が新設された

リクルートの職種別特徴

リクルート半期年俸制「ミッショングレード」2021年最新版の仕組み

創業60年の節目を迎え、61年目で180度転換の舵を切ったリクルート。人材への投資を減らし、インディード買収のようなM&A強化に向かうのか(1960年に創業した「大学新聞専門の広告代理店」がリクルートの原点)

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