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富士そば、“コロナ雇調金不正”拒否社員を解雇 地位確認訴訟で浮上した「過労死ライン超が前提」の殺人的長時間労働と仰天解雇理由
(左)富士そば労働組合・安部茂人委員長。同社の長時間労働や雇用調整助成金の不正請求未遂事件等を公にした安部氏は、最高で月400時間以上の残業で心の病を発症。さらには解雇され、東京地裁で地位確認訴訟が進行中だ。

(右)2020年11月13日に厚労省で記者会見を開き、安部氏は部下たちの勤怠データを改ざんしていた証拠を公開した。


 新型コロナに伴う雇用調整助成金の不正受給で今夏、300万円を返還し5年間の助成金利用禁止処分となった『名代富士そば』運営のダイタンミール㈱。それに先立つ2020年11月、富士そば労組の安部茂人委員長らが、この雇用調整助成金不正請求を役員から指示されたが拒否し、未遂に終わった件を公表。その後、労基署が立ち入り検査した結果、上記の不正受給「既遂」事件が発覚したのだった。富士そばグループのダイタンディッシュ㈱は今年1月、不正を公表した安部委員長と書記長を懲戒解雇。安部氏らが東京地裁に労働審判を申立て、9月2日に地位の確認と安部氏らに約318万円の支払いを命じる労働審判が下った。だが富士そば側は同日、二人に再度、解雇通告。2022年明けから地裁で地位確認訴訟が本格審理される。富士そばで何が起きているのか、渦中の安部氏に聞いた。

【Digest】
◇恐るべき上司からのLINEメッセージ
◇ホワイト企業富士そば伝説
◇飲食店8店舗の経営者から富士そば社員へ
◇「ようこそ地獄へ」朝起き上がれず這って移動
◇過労死ライン超の固定残業時間
◇七十人が結集し富士そば労組結成
◇労組委員長と書記長を懲戒解雇した仰天理由
◇女性従業員が受けた「ハラスメント等」とは?
◇第一の理由 「残業時間データ捏造」を検証
◇第二の理由 「勤怠データ改ざん」の検証
◇第三の理由 「背任行為」の検証
◇労働審判は「懲戒解雇無効と318万円の支払い」

※末尾より以下PDFファイルダウンロード可「過重労働を示す同居人とのショートメールでのやりとり」「店長たちの一日の作業の流れ」

◇恐るべき上司からのLINEメッセージ
 富士そばグループでは、役員と係長がLINEグループを通して業務連絡することが多い。

 2020年5月18日、いつものように多忙な業務をこなしていた本社係長の安部茂人氏(現・富士そば労働組合委員長)に、上司の役員からメッセージが送られた。

《係長は週2日、特別休暇にあてたいのでタイムカードを2日押さないで下さい。実際にやる事をやれば在宅または店回りして本社に来なくてもいいです。》
 働いても休暇扱いにするということだが、これだけ読んでもなんのことか分からない。2週間後の6月2日、驚くべき内容のメッセージが安部氏のもとに送られてきた。(画像参照)

 先ほどの遅番シフトの件ですが、会社の指示になると何かあった場合には問題になるので以下を注意してください。

 ① あくまで売り上げが4~5万以下の場合には、ワンオペ

 ② 特休で休めるのでワンオペで頑張るスタッフが居ればワンオペ

 ③ ワンオペ不安な場合には特休扱いで出勤してもらう

 係長が店長にアドバイスする形にしてください。店長がどれを選ぶかは自由です。万が一、問題が起きた場合には僕が責任を持ちます

 この文面を送ってきたのはA役員である。実際には出勤しているのに「特休扱い」と偽装して、新型コロナウイルスに伴う雇用調整助成金を請求せよ、という内容だ。通常の有給休暇には助成金は支給されないが、特休(特別休暇)にすれば支給されるから、である。

 雇用調整助成金とは、「新型コロナウイルス感染症の影響」により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るため、労使間の協定に基づいて「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するもの。また、事業主が労働者を出向させることで雇用を維持した場合も、雇用調整助成金の支給対象となる。

 不正行為をしろという指令を受けた安部氏が、とても不正には関われないという複数の社員からの「嘆願書」を、グループを統括するダイタンホールディングスの丹有樹社長に提出した。ある社員は次のように綴っている。

《アルバイトさんには話しました。なぜ勤怠を打たずに働かせるのか。会社は何か不正をするんですか、と聞かれ店長の私は答えられませんでした。(中略)夜も眠れず精神的苦つう及びパワハラ犯罪強要をしてくるA役員がいると苦しみ続けるのでA役員の解任を願います》

 不正には関われない意思を示したうえで、不正を指示したA役員の解任を求めている。

 幸い、指令を受けた安部氏ら社員たちにより、この目論見は未遂に終わったものの、本質的な問題は解決できていない。

特休(特別休暇)扱いにしてコロナ休業にともなう雇用助成金を不正請求せよという役員からの指示メッセージ。安部氏らはこの指示を拒否して未遂に終わらせた。
 同年(2020年)11月13日、富士そば労働組合が厚労省で記者会見し、この雇用調整助成金不正請求未遂事件や、超長時間労働による病人続出の内部事情を社会に公表した。この日をきっかけに、NHKや朝日新聞をはじめメディアが報道し、富士そばグループの様々な問題があぶり出されてきたのである。

 ところが、一連の問題を公にした中心人物である安部委員長とB書記長が、今年1月に懲戒解雇されてしまったのだ。安部氏らは東京地裁の労働審判に申立て、9月2日には地位確認(懲戒解雇は無効)と給与318万円(3%の利子含む)支払いの審判を受けた。

 富士そば側(ダイタンディッシュ株式会社)は労働審判に異議を申し立てたので、自動的に本裁判に移行し、東京地裁で、地位確認請求訴訟が始まった。

 11月24日には第1回口頭弁論が開かれ、年明け2022年1月から実質的な審理が始まろうとしている。ここに至るまでの過程を振り返りたいが、まずは「名代富士そば」を運営する会社の概要を見たい。

◇ホワイト企業富士そば伝説
 首都圏でその名前を聞いたことがない人はいないほど有名な立ち食いチェーンである「名代富士そば」は、現在は約120店舗を運営する。

 埼玉県川口市で弁当屋や不動産業などで成功した丹道夫氏(現会長)により1966年、「名代富士そば」は24時間営業の立ち食いそば店としてスタートした。

 1972年にダイタンフード株式会社を設立し、立ち食いそば業に専念するように。現在は首都圏中心に120店舗以上を展開し、同社ホームページによると従業員は全体で約1200名。ダイタンホールディングス㈱が運営している。会長は、創業者の丹道夫氏。社長は子息である丹有樹氏だ。

 富士そばでは、店舗を増やして30店ほどになると別会社をつくり、また1軒、2軒と増やし、30店舗になるとまた新会社を設立する。統括するのがダイタンホールディングス㈱であり、その下にダイタンフード㈱がある。

 同社の子会社として「富士そば」運営会社は8社あり、ダイタンイート㈱、ダイタンディッシュ㈱・・・とすべて社名の最初に「ダイタン」がつく。

 8社の代表取締役は、すべて丹有樹氏だ。

 創業者の丹道夫会長はカリスマ的経営者として知られ、メディアにもたびたび顔を出してきた人物。2017年に出た『富士そばは、なぜアルバイトにボーナスを出すのか』(丹道夫著・集英社新書)のカバー裏の解説文には、こうある。

 日本全体が短期的な利益追求に走り、ブラック企業がはびこる中で、首都圏を中心に一三〇店舗以上を展開する立ち食いそばチェーン「富士そば」は真逆を行く。アルバイトにもボーナスや有給休暇を支給し、社員には年間一〇〇〇万円を超える報奨金や、さらには海外旅行までもが用意されているのだ。

 富士そばが、ここまで従業員を大切にする理由はいったい何なのか?

 創業以来四〇年以上の歴史を持ち、現在も成長を続ける老舗チェーン店の「ふしぎ」な仕組みと経営哲学の全貌を、創業者自らが明かした驚きの一冊

 富士そばは、従業員を大切にする“ホワイト企業”ということだ。現在、残業代の支払いを求めて東京地裁に提訴し、超長時間労働で家庭崩壊した社員も、「就職がきまったとき妻から、富士そばはホワイト企業だから本当によかったね」と言われ、明るい希望に満ちて入社したという。

安部茂人係長の給与明細書。係長は月112時間(過労死ラインは月80時間)の固定残業時間が設定されており、それだけ働いても明細書記載の給料のみしか支払われない。

実際は月112時間をはるかに超える残業をしていたと社員たちは言う。

◇飲食店8店舗の経営者から富士そば社員へ
 今年1月に懲戒解雇処分を受ける直近の3年間、連続して社長賞を受賞していた安部氏の、入社にいたる経緯を見てみよう。

 安部氏は1967年生まれの54歳。最初に就職したのが大手不動産会社。1年間の国内勤務を経てアメリカ・ボストン支店に転勤した。

 しかし彼が29歳のとき、父親が他界し、家業を継ぐことに。居酒屋、カレー屋、サパークラブなど8店舗を両親が二人で経営していたのである。店舗経営を安部氏が引き継ぐことになった。

 ところが2011年、母親が末期がんの宣告を受けた。通常の医療ならば余命3ヶ月と言われたが、自由診療も含め最高の治療体制を整えれば3年間ほど生きられる可能性がある、と医師から伝えられた。

 安部氏は、最高の治療を母親に受けさせる体制をつくり、介護のため仕事を辞め、店の権利も売った。

 しかし金も尽きかけ、2013年4月、46歳のときに富士そば(ダイタンイート株式会社)に入った。翌年、母親が他界。入社してから現在までで、まる8年が経つ。

 正社員として採用された安部氏だが、富士そばでは最初はアルバイト扱いで、しばらく働きぶりを見られる。そして認められ、同年5月、晴れて正社員としての一歩を踏み出した。社内ランクは、ヒラ社員である主任(月給26万円)だった。

 その後、半年くらいずつのペースで、順調に昇進していく。店長候補(月給32万円)、店長心得(月給35万円)、店長.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



勤怠データ改ざんの実態。 (左表の左)会社命令で係長が実施した改ざん。一番左にある出勤は早番。その右の出勤2は中番出勤。退勤が15:30を過ぎていると15:29以前に修正する。

(左表の右)改ざん後の会社保管データ。土日が休みで、朝番と中番連続しての勤務は一切していないことになっている。

(右)安部氏ら係長たちのタイムカード。係長は店長たちの勤怠を会社指令で改ざんしていたが、彼ら自身の勤怠も改ざんされていた。残業してもおおむね18時に仕事を終え退社したことになっている。

(上)未払い残業代の請求を求めて提訴している社員たちは、会社の勤怠システムデータは信用できないから、自分自身の手帳や作業報告書類を利用して残業時間を算出している。

(下)長時間労働を示す内妻と安部氏とのメール。(記事末尾に、当時の過酷な労働状況が垣間見られる妻とのメール7月2日~2月20日・ダウンロード可)

本社勤怠管理システム。未払い残業代請求の労働審判で労働時間を有利にするため、安部茂人係長とB係長の二人が2020年7月に、このデータを大規模に改ざんしたとして会社は懲戒解雇処分にした。

 写真は同じシステムの2019年7月データ改ざん。退勤時刻が15時30分以降だと係長が改ざんして15時29分以前に修正し赤字になる。ただ15時30分を過ぎたときだけで毎日改ざんするわけではない。この画像では全日修正されている。誰が修正したのか不明だ。

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記者コメント
以下、事実関係に誤りがありました。お詫びの上、修正いたします(2022年8月9日、本文修正済み)。
✕残りの17人は東京地裁の本裁判(地位確認訴訟)で現在、争っている。
◯残りの17人は東京地裁の本裁判で現在、争っている。
富士そば地位確認訴訟第2回口頭弁論
2022年1月28日午前10時30分
東京地裁527号法廷
本文:全約12600字のうち約9200字が
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