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残業代なく休暇もなし、果てしなく働かされる自衛隊の「ブラック企業」体質に異議あり――元海上自衛官が提訴
自衛官の退職者が続出している実態を示す防衛省の資料(2020年10月26日、財務省財政制度等審議会・歳出改革部会)

 自衛官(定員25万人・現員23万人)の年間採用数約1万5千人のうち、5年以内に退職する自衛官が約5千人にのぼるという。安定した公務員であるはずの自衛隊はなぜ不人気なのか、その理由が明るみになりつつある。元海上自衛隊3曹の男性が、休みの取得を不当に拒否されたとして国を相手に国家賠償請求訴訟を起こした。男性は艦船乗員として長期の海外出航に連続して従事するなど過酷な任務に携わったが、年休や代休の取得を認められない環境に疲労困憊し、心身がもたないと退職を余儀なくされた。せめて退職する際くらい代休と年休を消化したい、と上司に求めたが拒絶された。退職届に「休みがとれないため」と本心を書いたところ、「キャリアアップしたい」などと書き直させられた、という。「海上自衛隊のブラック企業体質は知れ渡っている。実態を知ってほしい」と男性は訴える。

【Digest】
◇就活に失敗して自衛隊に
◇「おかしい」と思った3年目
◇ブラック体質を実感
◇たて続けの長期任務
◇退職を決意したワケ
◇「懲戒処分になるぞ」
◇提訴
◇「海自はブラック」は知れ渡っている

※個人が特定されるおそれがあるため艦名は伏せます。

◇就活に失敗して自衛隊に
 上官の命令への服従義務がある一方で労働関連法の適用はない。この仕組みのもとで、残業代もなければ休みもとれず延々と過酷な任務を強いられている――海上自衛隊の「ブラック企業体質」を問う画期的な訴訟が、横浜地裁で行われている。原告は、護衛艦乗組員だった元3曹の男性Aさん(29歳)だ。定年(54~55歳)まではとても体がもたない、心身が壊れてしまうと退職を余儀なくされた。

 Aさんが自衛隊に入ったきっかけは就職活動の失敗だったという。

 高校を卒業後Aさんは理系の私大夜間部に進学した。母子家庭で家計に余裕はなく、バイトで学費をすべてまかなった。ガソリンスタンド、コンビニ、薬局。年間100万円ほど稼いだ。すべて最低賃金の時給800円くらいだった。

 就職活動は3年生の冬ごろからはじめた。技術開発系、電機メーカー、大手中心に片端から応募した。しかし、ほとんどが応募段階で落とされた。

 4年生の夏ごろには同級生らの7割くらいが内定を得ていたが、Aさんはあいかわらず見通しが立っていなかった。すでに50社くらい受けたがまるで手ごたえがない。

 「もう無理だ」と心が折れた。しかし働かないといけない。そこで選択肢に浮かんだのが自衛隊だった。半ば投げやりな気持ちで10月の海上自衛官候補生(旧練習生)を受け、合格した。

 Aさんが受けたのは、もっとも一般的な採用枠である任期制隊員だ。入隊すると3カ月の訓練期間を経て任官し、2年9か月(入隊から3年)で1任期目を終える。その後2年ごとに任期を更新して3任期7年で任期満了となる。さらに長く自衛隊にいたい場合は、試験を受けて海曹(海上自衛隊の場合)に昇任する道がある。海曹になれば、54〜55歳の定年まで勤務することができる。

 同期50人のうち、大卒が10人くらいいた。彼らが就職に失敗して自衛隊にきたのかどうか、Aさんは尋ねていない。同じことを自分が聞かれるのが、いやだったからだ。

護衛艦乗組員として過酷な任務につきながら代休や年休の取得ができない職場環境を問題視し、国会賠償請求訴訟を起こした元3等海曹のAさん。
◇「おかしい」と思った3年目
 訓練を終えた後に配属されたのは、佐世保所属の護衛艦Xの乗員だった。階級はもっとも低い2等海士だ。以下図の「2士」にあたる。

→自衛官の任用制度

 1年後、士長になったAさんは、半年間の海外長期任務に行く。はじめての海外長期任務は、好奇心を刺激した。外国に行くこと自体がはじめての経験だった。入港したら水先案内人が食事中で来ないなど、日本では考えられないこともあり、面白かった。

 しかし、帰港するころには好奇心はうすれた。一方で、しんどいのに休みがとれないといった問題を感じるようになる。加えて納得できなかったのが異動のことだ。Aさんの家族は関東地方にいる。だから関東の横須賀基地に戻りたかった。その旨、再三にわたって異動の希望を出していた。しかし、いつまでたっても実現する気配がない。

 自衛隊の生活に慣れてきたある日、Aさんはこんな噂を耳にした。

 3曹になれば、責任が重くなるので横須賀にもどれるかもしれない――

 噂を信じてAさんは3曹を目指す。つまり、定年まで自衛隊にいよう、と決心した。そして試験に合格して3曹に昇任、横須賀に戻れる日を待ちわびた。

 入隊から約3年がたった2018年、Aさんに人事異動が発令された。護衛艦Yの乗員だ。やはり佐世保基地の船だった。「横須賀」の期待ははずれた。

 護衛艦Xは出動回数が多く、以前より忙しくなった。計画的出航にスクランブル出航が重なり、「1か月のうち家に帰れたのはわずか1週間足らずだった」こともある。

 船の生活は、大きなストレスがかかる。出航中は、3交替24時間勤務だ。昼も夜もない。むろん土日もない。居住区は狭く、頭上が80センチほどしかない2段~3段ベッドで毎日を過ごす。食事も仕事も船の中、単調に同じ事をくりかえす。逃げ場はない。

 つかのまの休みには、船を降りることができる。しかし、ゆっくりと休息するわけにはいかなかった。「緊急呼集義務」にしばられており、2時間以内に戻れる場所にいなければならない。事実、夜中の1時に携帯電話が鳴り、休暇を中止して帰艦を命じられたこともある。

 結局、休みの日でも佐世保市内から出られず、部屋でゲームでもして過ごすしかなかった。

◇ブラック体質を実感
 しかし、それだけなら納得のしようがあった。Aさんが矛盾を感じたのは、代休や年休のことだ。出航すると休日返上になるので、制度上は代休が付与されるはずだ。

 代休制度について国側は訴訟のなかでこう説明している(趣旨)。

〈代休は付与ではなく所属長が指定する。原則として8週間有効だが所属長が養育訓練に特に支障があるとみとめる場合は、52週まで有効となる。航海期間中の休養日または休日は勤務扱いとなり、艦長が代休を指定する。〉
 しかし、じっさいは休みを取りたくても取ることができない。

 代休制度は、絵にかいた餅だった。未消化の代休が年間で30日から50日もたまった。年休を取るどころではない。制度上は月に2日ずつ有給休暇がある。だが、艦の予定に従う限り、いつまでたっても休めない。年休は年間30日を超えたら無効になっていく。

 この勤務態勢で定年まであと30年続けるのは心と体がもたない――いったんは自衛隊に骨をうずめようと3曹になったAさんだが、限界を感じはじめた。

 2019年秋、Aさんの乗った護衛艦Yが半年間の「海賊対処行動」に出発した.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



海上自衛隊横須賀基地に停泊する護衛艦(本文とは直接関係ありません)。
ソマリア沖の海賊対処行動
裁判が行われている横浜地裁。
Aさんが護衛艦乗組員だっったときに着用していた帽子。

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   17:56 01/01 2022
休みが取れないが故に疲労が体に蓄積し寿命が縮まる。今、他の会社でももう少しまともに休むことができるように世の中が変わっているから、安易に自衛隊に勤務しないことだ。