サントリーに負けていない「常陸野ネストビール」
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全米で販売されている日本の地ビール
「15年前にクラフトビールを飲んだときは、おいしいとは思わなかったんですね。それがビールの原料である麦芽やホップ、歴史を知れば知るほど、味覚まで変わってきました」。木内酒造専務の木内洋一さんが、そう語る。クラフトビールとは手造りビールのことをいう。日本では地ビールと呼ばれることが多い。大量生産のビールが主流である日本のビール市場にあって、ネストビールはクラフトビールの典型である。酵母も生きている。
かつては、年間の製造数量2,000キロリットル以上の生産および販売見込みがなければ新規参入が認められなかったが、1994年細川政権時代の規制緩和策のひとつとして年間60キロリットルまで引き下げられた。このことで各企業がビールに参入をはじめた。
消費者は、新たな味に期待を込めた。生ビールと比較してうまさの違いを感じながらも、ビール原料は100%海外に依存、生産量も少ないためにコストも割高。そのため市販大手のビールと比べ高いビールとなった。その結果、一度は飲んでみたものの、地ビールは、消費者に浸透しなかった。地ビール勃興期の勢いは、いまはない。その中にあって、茨城の地ビール・常陸野ネストビール(木内酒造)は、全米でも販売されるなど元気だ。
◇ワールド・ビア・カップ金賞受賞
サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」が「モンドセレクション最高金賞2年連続受賞」と盛んに宣伝されている。たしかに味は切れ味シャープでフルーティなビールだが、フィルター処理をしているビールなので、ビール酵母は入っていない。
世界のビール業界では、モンドセレクションよりも、「ワールド・ビア・カップ」(World Beer Cup)のほうが有名だとも言われている。アメリカのブルーワーズ協会主催の世界的なビール・コンペティションである。
このWorld Beer Cupで、2000年に続いて、2004年大会のHerb and Spice Beer部門で、木内酒造の常陸野ネストビール「ホワイトエール」が金賞を受賞している。世界40カ国、393の醸造所から1,566銘柄のビールが集まり、ビールのカテゴリー別に競われたもので、結果はこちらに掲載されている(Category:8参照)。
ワールドビアカップだけではなく、ジャパンビアカップでも連続金メダル、2002年英国The Brewing Industry International Awardsで金メダル、および部門総合チャンピョンビールなど、数々の賞をとっている。木内酒造は、日本酒醸造では180年近い伝統と技術を持つ。しかし、ビールではまったくの素人だった。1996年にビールの製造免許を取得し、ヨーロッパの本格ビールを目標に、英国産の麦芽、ホップを原料として、上面発酵で醸造を開始した。米国DME社から地ビール製造設備を直接購入した。日本では第一号機だった。
※日本のビールは、5~10℃前後の低温で発酵させる、チェコのピルスナー型「下面発酵の淡色ビール」が主力。発酵がすむと酵母が下に沈降する。世界各国で主流とされている醸造法で、キメ細やかでデリケートな味わい。一方、木内酒造が採用した「上面発酵」は、一般的には発酵温度が18~22℃くらい、発酵が終了すると酵母が液面まで浮き上がってくる。発酵と熟成が速く進むので長期貯蔵は行わず、粗削りな味となり、濃醇で酸もしっかりしている。クリーミィな泡立ちとなり、イギリスのエールやスタウト、ドイツのバイツェン、ベルギーのトラピストビールなどが代表的ビール。 |
「清酒は、いいものを造ってもなかなか売れません。ビール醸造を開始して、努力が結果に結びつき、実りがあって楽しい。苦労はなかった。発泡酒、生、輸入ビールとビールにもキーワードがあります。これからは工業製品としてのビールではなく、キーワードはクラフトビール。その手応えを感じています」(木内さん)
◇日本では、ビールではなく発泡酒
木内酒造のWhite Ale(ホワイトエール)は、柑橘系の香りのあるコリアンダー、オレンジピールなどを加えた、もともとはベルギー生まれの淡色ビールである。ハーブの香り、オレンジの酸味のあるのが特徴。濾過せずに、ビン詰めされる。商品を見ると、ビール酵母、ハーブ、スパイスなどが下に沈澱しており、上澄みがクリアーだ。
独特な香り、さっぱりとした酸味が、わたしもお気に入り。色は白っぽく、うすーく濁っている。これは「使用されている小麦が大麦に比べ、タンパク質の含有量が多いから」だそうだ。
しかし、このホワイトエールは、日本の法体系のなかでは、ビールの定義から外れる。
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読者コメント
ザ・プレミアム・モルツ開発者の山本氏はワールドビアカップの審査員をされた事があるようですよ。
日本ビールの酒税は44.5%。ドイツは6.1%。どうして日本の大企業は酒税を下げさせるために国に圧力をかけないのでしょうか?みんなビールが好きなんでしょ?スコッチ・ウィスキーが安く飲めるようになったはイギリス人のおかげです。
「常陸野と呼ばれてきた山梨地方の名称に、蔵所在地の鴻巣の「巣」の英語NEST~」とありますが、山梨ではなく、茨城ですね。
量を作れば、ある程度までは安くなります。しかし、作るよりも売る方が大変なんです。
日本の格差社会は、ビールの製品差別化から見ても明らかです。安かろうよかろうは基本的には失われつつある。大阪人は特に反発するだろうけど、価格差に品質差が出るのは当然のこと。美味いビールを飲みたいならちゃんと稼ぐしかない。
美味しいんでしょうが高いです。やっぱりオレは、発泡酒を飲むしかないのか?
手造りと言っても規模が小さいだけで。立派な工業製品だと思います。
またぞろビールかビールもどきか埒のあかない話になってきた。発泡酒もビールの一族として考えればどうでも良い。酒税法上の定義に囚われる?から空疎になる。話題としては面白い。
おいしそうですね。でもお高いですなあ。もちろん税金のこともあってこの値段なのでしょうが。アメリカではビールの税金が安くて日本で飲むより安く飲めるのでしょう? アメリカと日本との値段の違いも記事にして欲しい。
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