ヘチマコロン「ヘチマコロンの化粧水&乳液」
ヘチマというナチュラルさに、1000円前後で手軽に買える値段とあって手を伸ばしやすい。「大正生まれの日本自然派化粧水! スゴイー ひいおばあちゃんから使われていたなんてタダものではありません!」といってきたロングセラー商品の特徴は、「天然保湿成分ヘチマ水配合」「弱酸性」。
しかし、「自然化粧水」とうたうこの商品の成分を見て、いくつか疑問がわいてきた。
ヘチマコロンに電話してみた。
--大正時代から発売されていますが、成分は変わっていないんですか?
「ほとんど変わっていないんですよ」
--以前は成分表示されていなかったので、変わったのかなと思って・・・。
「全成分表示になって(2001年)表示するようになったので、そのように感じられるようですね」
--カルボキシメチルキトサンサクシナミドは何ですか? これは前は表示されてなかったから。
「ちょっと待ってくださいね。・・・甲殻類から得るキトサンの誘導体。保湿剤ですね」
--黄色4、青色1号を使っているのは?
「着色料です」
--ヘチマの黄緑に合わせて?
「ええ」
丁寧に答えていただいた(2003年6月取材)。
地面から30センチほどのヘチマの茎を切って、ビンの口にその茎を指して原液を一晩がかりで採集して化粧水にするのがヘチマ水だ。
だが、ヘチマコロンの成分表示を見ると、ヘチマ水以上の量の水(精製水)で薄めている。その純度は30%前後だろうか。あるいはもっと薄いかもしれない。そのためカルボキシメチルキトサンサクシナミドやPCA-Naを配合して粘りを出しているのではないか。界面活性のある保湿剤を乱用することは、皮膚の脂質に溶け込んで脂質を流失させ、乾燥肌や弱肌を招くことにもなる。
ヘチマ水は酸性化粧水の原型でもある。〈酸性化粧水とは、洗顔で失った酸分を補充し、皮膚を引き締めて外気に処する。1950年代の用語で「皮膚は酸性に」という標語もその頃に生まれた。〉(『化粧品成分事典』コモンズより)。ヘチマ水の肌への効果について、HPで「古くから美人水として利用されてきました。ヘチマ水に含まれているタンパク質が皮膚生理を助け、ビタミンCはメラニン色素を押さえ、ペクチンや酵素は、肌をすべすべに。また、画期的な成分の数種のサポニンには皮膚賦活作用による老化防止などが確認されています」とのこと。
といっても、ヘチマ水が特に肌に美容上有効というわけではない。皮膚が疲れているときは、酸の補充と収れんを中心に考えるとよいが、「肌に有効」「美肌だ」と思って購入した消費者にとってこの成分処方は気の毒だ。
指定成分のみの表示(パラベン、着色料など)でよかった化粧品が全成分表示になったことで、“自然派化粧水”が自然ではないことがわかることになった。ヘチマコロンはその一例でもある。
大正時代からのロングセラー商品というが、乳液も含めていえば、合成ポリマーと合成界面活性剤で感触をつくりあげた超現代化粧品である。ヘチマコロンのHP
【成分】
精製水
ヘチマ水・・・保湿
エタノール
グリセリン
PCA-Na・・・アミノ酸誘導体
▲メチルパラベン・・・防腐剤
アラントイン・・・肌荒れ防止剤
■カルボキシメチルキトサンサクシナミド・・・合成ポリマー
▲香料
▲黄色4号・・・タール色素
▲青色1号・・・タール色素
【採点】
■合成ポリマー 1種
▲毒物添加物 4種
平凡社の大百科事典には「ヘチマ水の上澄み液100ml当たり30mlのエタノール、グリセリン10ml、ホウ酸2gを加え、好みで香料とごく小数の葉緑素で着色せよ」とある。エタノールは20%がいいが、そうすると蒸発が遅くてやや使いにくいかも。
一方、ヘチマコロンの化粧水の特徴は、油や水に溶けるものなどが開発され、化粧品原料の主流になりつつある合成ポリマー(カルボキシメチルキトサンサクシナミド)と、そして合成着色料のタール色素を使っていること。また、アミノ酸誘導体(PCA-Na)は通常、加水分解コラーゲン(界面活性あり)を混ぜているので好ましい原料ではない。
着色料としてヘチマコロンは、黄色4号と青色1号の法定色素(タール色素)を使用している。前者はビラゾール系の酸性染料。後者はトリフェニルメタン系の酸性染料。両方とも食品添加物としても許可されている。
タール(石炭、石油中のタールや有機物を加熱して生じるタール)色素は1966年に厚生省(現在の厚生労働省)が定めた「医薬品等に使用することができるタール色素」として、記載の83品目とそのレーキ顔料の使用が認められている。毒性の大きさによりT、U、V種に分類され、使用範囲が制限されている。
Tグループ「すべての医薬品、医薬部外品および化粧品に使用できるもの(11品目)」。Uグループ「外用医薬品、医薬部外品および化粧品に使用できるもの(47品目)」。Vグループ「粘膜以外に使用される外用医薬品、医薬部外品および化粧品に使用できるもの(25品目)」。粘膜に使用する化粧品とは、口紅およびアイライナーが指定されている。これらの化粧品にはVグループのタール色素は使用できない。ヘチマコロンで使用されているタール色素はTグループである。
日本は台湾と並んでタール色素に寛大な国だ。こんなことこそ制限が厳しい(34品目)米国に学んでもらいたいものだ。以下は、ヘチマコロン「ヘチマコロンの乳液」の成分である。
【成分】
精製水
ヘチマ水・・・保湿
ソルビトール・・・保湿剤
パルミチン酸イソプロピル・・・油剤
●ステアレス-2・・・合成界面活性剤
ベヘニルアルコール
ミネラルオイル・・・油剤
●ステアリン酸PEG-15グリセリル・・・合成界面活性剤
ステアリン酸・・・油剤
●ステアロイルグルタミン酸Na・・・合成界面活性剤
■ジメチコン・・・合成ポリマー
▲パラベン・・・防腐剤
キサンタンガム ・・・天然ポリマー
【採点】
●合成界面活性剤 3種
■合成ポリマー 1種
▲毒性添加物 1種
乳液は多量の水に少量の油を混ぜたもの。つけると水が蒸発して残った油が肌を守るが、その乳化のために使われるているのが乳化剤という名の合成界面活性剤だ。ヘチマコロンの乳液は、ステアレス-2、ステアリン酸PEG-15グリセリル、ステアロイルグルタミン酸Naの3種も使用している。
「ベタつかず、サラリとした使用感でなめらかでハリのある素肌をつくります。もちろん低刺激性です。」とヘチマコロンが宣伝している通り、つけ心地はよいはず。だが、この合成界面活性剤が皮膚のバリアを壊して、乳液が皮膚に浸透しやすくなって乾燥肌、シワの原因にもなる。
ヘチマ化粧水には合成界面活性剤は使われていないが、化粧水をつけた後、この乳液をつけたら、合成界面活性剤入りの化粧水をつけるのと同じことになってしまう。感触改良や保湿のため合成界面活性剤を配合してしまっては台無しだ。
またこの乳液は、合成ポリマー(ジメチコン)を入れることでしっとり感を感じさせている。それが“サラリとした使用感”ということ。ジメチコンという強い皮膜性を持つシリコーンを塗布したら皮膚の環境を狂わせる。合成ポリマーを基礎化粧品に使うのはいかがなものか。
指定成分であったパラベンは現在は、すべてのパラベンを併記するようになっている。在庫のものはそのまま許されている。ヘチマ化粧水はメチルパラベンになっているが、この乳液は在庫が多く残っているのだろうか。
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読者コメント
今日、イオンでデリを見ていたら、揚げ物の記載事項にシリコーンというものがいろいろなものに記載されていましたが、とうもろこしの一種ではないですよね?これって大丈夫?なのですか?
カルボキシメチルキトサンサクシナミドは。
もう何年も経ってますから、オーガニックに詳しい人もかなり増えてきているはずなので、そのようなことを言う人も少なくなってきているはずです。
界面活性剤が保湿になるとは聞いたことがありませんが、多分合成界面活性剤のことを言いたいのでしょうね。潤ったような気分になる質感というだけの。
ま、それも今時オーガニック支持者が聞いたら笑う話です。
カルボキシメチルキトサンサクシナミドは合成ではなく天然ポリマーです。
界面活性剤で保湿効果も出せます。脂質を洗い流すだけではないのが、面白い所。
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