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花王ブローネヘアマニキュア”脱毛”裁判 双方の言い分明らかに

情報提供
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これは現在発売されている商品。原告が使用した当時のものと少し成分に変更がある。被害者が使用したときにあった成分のクエン酸、エトキシジグリコール、イソステアリルグリセリルペンタエリスリチル(合成界面活性剤)が消え、γ-カプロラクトン、グリセリン、水添加ポリイソブテン(合成ポリマー)、リンゴ酸の4種類が加わっている。
 ブローネヘアマニキュアを使用して脱毛した男性が、「脱毛症状が出る直前に使ったのはこの製品だけ。外箱に危険性に関する指示・警告が記載されていなかった」等と損害賠償444万円余りを求め、今春、花王を訴えた。裁判資料の写真を見る限り、確かに被害者の毛髪は、まばらだ。第4回公判までに明らかとなった裁判に至る経緯や双方の言い分、さらにどの成分が原因かについての独自チェック結果を報告する。
Digest
  • ベルギーでは22種が使用禁止に
  • タール色素が悪影響
  • 裁判で花王に聞いてもらいたい視点
  • ライオンの育毛剤を持ち上げて反論する花王
 奈良地方裁判所の民事秘書官質の隅っこにある机で、花王を相手に男性が起こした損害賠償請求の裁判資料をひたすらメモすること2時間半。(「花王ブローネヘアマニキュア損害賠償裁判 記者クラブへの便宜供与、“一般の人”は受けられず」参照)

記者クラブ所属の大手メディア記者たちは、「便宜供与」で資料をラクに入手できるじゃない・・・(彼らと、区別&差別されているなんて頭にくる!)。

でも、ラクできてもビックスポンサーの花王が訴えられていることなんてぜんぜん書かないじゃない・・・(まったく、もっと頭にくる!!)。

でも、大手がぜ~んぜん書かないということは・・・書き得、書き放題じゃない!!!

そんなことを思いながら、150円で裁判資料の閲覧とメモだけが許された中で、だんだん「ブローネヘアマニキュア」による”脱毛”被害の全貌が見えてきた。

◇髪は抜け、まばらになってしまった
 資料をめくっていて、まず目にとまったのは、原告(被害者)の写真だった。

「平成15年(2003年)撮影家族」とある写真は、旅館で撮ったものだろうか。浴衣を着ている。「ブローネヘアマニキュア」使用後の2005年3月下旬に撮った写真には、「使用後に大量に脱毛、まばらになった」とコメントがついていた。

浴衣姿の男性は髪も黒い。髪の毛もしっかりあって、はげてはいない。それが「ブローネヘアマニキュア」使用後の写真を見ると、髪は抜け、まだらというか、まばら状態になっていた。少なくとも写真を見る限り、同一人物の髪だとは思えなかった。

皮膚科医の診断書には、「傷病名:全頭脱毛症。2005年2月24日頭皮に染毛剤による光接触皮膚炎を生じ、3月7日までに瀰慢性脱毛に発展。3月7日よりプレドニン内服を開始し、4月11日頃より徐々に回復中である」(2005年7月2日)とあった。プレドニンとは、合成副腎皮質ホルモン剤である。

◇製造物責任法などで損害賠償請求

50代の被害者(原告)は、2004年秋頃、白髪を染めるため「ブローネヘアマニキュア」使用説明書に従って1度、頭髪に使用した。そのときは特に変化はなし。染毛料を使用したのははじめてだった。

2度目に使用したのは、2005年2月中旬。するとその翌日から、「顔全体の腫れ、身体の湿疹等が生じたほか、頭皮がかぶれ、次第に頭髪、眉毛、腋毛が脱毛し始めるなどの異常が現れた」。

すぐに使用を中止し、2月24日、3月7日に皮膚科へ。しかし脱毛は治まらず、大量の脱毛が続き、豊富にあった頭髪はほとんど脱毛し、眉毛や腋毛も同様に脱毛した。4月11日頃からわずかに発毛し、徐々に回復してきたが、2006年2月現在、髪は使用前にもどっていない。

治療で通った皮膚科医は「頭皮に染毛剤による光接触皮膚炎を生じ」と診療した。

通常では生じ得ない激しい症状であったこと、また、原告の身体に直接ふれた何らかの物質が原因であり、また症状が発生した頃、新たに使用し始めた生活用品や薬品類は花王「ブローネヘアマニキュア」以外になかったことから、身体的被害は花王「ブローネヘアマニキュア」の使用によるものとして、損害賠償請求を起こした(製造物責任法第3条、民法709条に基づく)。

 訴状が提出された日は、2006年3月2日。

訴額申立額は441万4960円(印紙代2万8000円、納付郵券が4800円)。

賠償金額の内訳は、治療費1万980円。慰謝料精神的被害を慰謝するための賠償金額として400万円。購入費用約1000円。備品購入費・帽子代2980円(頭皮に皮膚炎が生じ、頭皮が不自然にまばらになったことから外出時に帽子が必要となる)。弁護士費用40万円。のちに、これに治療費4万1720円が追加されて損害賠償金額は444万5700円に変更になっている。

証拠方法として、写真、診断書、国民生活センターからの回答書、使用説明書、ヘアマニキュア外箱、花王(被告)のHPを印刷したもの、治療費と帽子代の領収書が添付されていた。

 これに対して、花王の反論は以下である。

「仮に皮膚トラブルとして皮膚炎が発生したとしても皮膚科に通院すれば回復する程度の軽度のものであり、それが皮膚炎の直後の脱毛が始まり、それが全頭脱毛になるなどということは到底考えられない」

花王からは証拠説明書として、日本毛髪科学協会関係資料、化粧品種別許可基準(平成9年版)、第7版食品添加物公定書解説書、法定色素ハンドブック改訂版、「ブローネマニキュア」使用説明書などが提出されていた。

◇課長が同行も、治療費を払わぬ花王

いきなり裁判で訴えるということはない。裁判に至るまでの双方のやりとりはどうだったのか。

裁判資料によると、原告は2005年3月4日から、花王の消費者相談センター(大阪)に電話を何度か入れている。おそらく担当者にということだろうが、なかなか連絡が行き着かなかった。相談担当課長は上下英幸氏。

同18日に3回目の皮膚科受診時に上下課長に同行してもらった。その際、「治療費は全額払うので、領収書を残してほしい」と言われる。だが、その後1カ月以上経っても花王から連絡はなかった。

また、「抜けた髪を日本毛髪科学協会に送って調べる」と言われ、3月22日に毛髪を花王に送付したがそれについても連絡はなし。その後、原告は、2005年5月10日、原告が花王に内容証明を送っている。損害賠償の方針と毛髪結果の調査結果の回答を2週間以内に求めた。

6月22日に代理人弁護士を立てている。

花王サイドから見た経過によると、3月12日に被害者からクレームが入る。18日に上下課長が被害者に同行し皮膚科へ。その際、髪の毛の提供を依頼した。22日に届いた髪の毛を日本毛髪科学協会に25日に依頼。その後2度程度電話で問い合わせをしている。4月18日に検査結果が出る。5月10日に被害者から通知がある。

 15日に電話で毛髪検査の郵送を申し出たが断わられた。6月24日代理人からの通知書が届く。

その後、本訴まで連絡をしていない。

翌春に提訴し、口頭弁論(4月24日)後、答弁書に対する反論、被告準備書面に対する反論、ヘアマニキュアの成分に関する主張・反論と続いた。わたしが傍聴した9月11日が4回目だった。

◇安全なものだと信頼して買った

原告側は、花王の欠陥として、製造・設計上、および指示・警告上においての安全性がかけていたと指摘している。

 指示・警告上の欠陥として、
(1)被害が発生する危険性を事前に認識でき、最大限これを回避する方法を理解できるよう明確に表示すべき義務があった。
(2)被害回避のための情報ではなく、被害発生後に使用をやめることを指示していたにすぎない。

具体的にいうと、きわめて小さな文字で、「頭皮に傷など異常のある場合、異常が現れたときは使用しないで下さい。」との文言が記載されていたのみ(容器)。

「お肌に合わないときは、ご使用をおやめ下さい。」(リムーバー容器)、小さいな文字で目立たない形で「化粧品がお肌に合わない時は使用を中止して下さい。」(使用説明書)とあるが、外箱にこそ記載されるべきであり、身体的被害が生じる危険性に関する記載は一切なされていなかった。

「髪を傷めず」「髪にやさしい」「繰り返し使用しても、髪に負担をかけません」など身体へのダメージは少ないとの印象を与える事項ばかりが多用され、消費者に対し安全性について過度の信頼を与える表示だった。

原告はこのような表示を見て、安全なものだと信頼して購入し、使用した。

また、花王のHPで「ヘアカラーはパッチテストは毎回必要」「ヘアマニキュアは必要ない」とあることも原告は問題としている。パッチテストとは、接触性皮膚炎の原因を同定するための検査だ。

つまり、パッチテスト等をすすめる記載が使用説明書を含め一切なされていなかった。ヘアマニキュアはヘアカラー等と異なり健康被害を生じることはないという安全性を印象づける誇大表現がされていたとの主張である。

このパッチテストについて花王は、「ヘアマニキュアは染毛料であって、染毛剤ではないから該当しない」「『化粧品の使用上の注意事項の表示自主基準』に合致している」「ヘアマニキュアはパッチテストは義務づけられていないことから、その記載がない」と主張。

また、「外箱は高圧ガスを使用した可燃性のものから注意喚起を優先すべき。身体障害は通常考えにくいので使用説明書及び容器に記載したもので妥当である」としている。

◇ヘアカラーリング剤の分類
 ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛料、一時染毛料、ヘアブリーチの4種がある。染め方によって染毛剤と染毛料に分類している。染毛剤は医薬部外品、染毛料は化粧品。「剤」と「料」で区分されている。「染毛剤」は医薬部外品で毒性が強く、「染毛料」は化粧品で染毛剤に比べて毒性は低い。

■永久染毛剤(パーマネントヘアカラー、ヘアダイ、白髪染め、おしゃれ染め)
医薬部外品。色剤はアルカリ性酸化染毛剤と酸性酸化染毛剤と非酸化染毛剤。ジアミン系の染毛剤で浸透、酸化させ、髪から出づらくする。頭皮からの浸透は毒性がある。頭皮バリアの仕組みを知っている美容院ですること。色持ちは2~3カ月持続。

■一時染毛料(テンポラリーヘアカラー、ヘアカラースプレー、ヘアカラースティック、ヘアカラークレヨンほか)
化粧品。色材は酸性染毛料と毛髪着色料。顔料を主に酸性染料も使用。スティックタイプ、液状タイプ、スプレータイプがある。洗髪で落ちやすい。

■半永久染毛料(セミパーマネントヘアカラー、ヘアマニキュア、カラーリンス、カラートリートメント)
化粧品。色材は酸性染毛料と毛髪着色料。アゾ系酸性染料で染める。髪と浅内部に染料が浸透。酸性染料。カラーリンスもこのタイプ。液タイプのほかジェルタイプ、クリームタイプがある。色持ちは2~3週間。

■ヘアブリーチ(脱色剤、脱染剤)
医薬部外品。合成界面活性剤とアンモニアで髪に薬品が浸透しやすくし(第1剤)、酸化剤(過酸化水素水)と合成界面活性剤で髪のメラニンを破壊(第2剤)。ヘアカラーを脱色するのは脱染剤。

以上、『プチ事典 読む化粧品』(コモンズ)より。

今回、問題になっているのは、半永久染毛料のヘアマニキュア(化粧品)である。

カラーリングの中でも、ヘアカラーに比べてヘアマニキュアはまだましだという印象があったわたしは、今回、ヘアマニキュアによる脱毛被害の深刻さに驚いたところがある。そのほかのヘアカラーでの被害はどうなっているのか、裁判資料を見ながらさらに気になってきた。

花王はヘアマニキュアは化粧品のカテゴリーに入っているので、「パッチテスト表示は必要ない」と主張している一方で、被害者に「パッチテストを申し出たが拒否している」と言っていると載っていた。このようにパッチテストを申し出るのなら、「化粧品の使用上の注意事項の表示自主基準」云々と言う前に、最初からパッケージなどに提示してもいいのではないかと思うのだが・・・。

代理人弁護士によれば、原告は「被害にあっているのに、さらにパッチテストは受けたくない」と言っているそうだ。

◇「陰毛まで抜けてしまった」被害報告も
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国民生活センターに報告された花王「ヘアマニキュア」による被害報告3件。一番上は原告の相談。閲覧時にメモしたノートより。

「(花王は)多数の健康被害が生じていた事実を国民生活センターの相談事例などを通じて把握していた。被害発生についても十分に予測し、回避するための措置をとることが十分可能だった。過失は明らか。」(原告サイドの主張)。

国民生活センターへの相談として、ヘアマニキュア一般について脱毛被害が発生していることが原告の資料であげられていた。期間は1995年4月1日~2005年11月29日までのもので、国民生活センターから回答があったのは2005年12月9日。

それによると、花王「ブローネヘアマニキュア」による身体に危害があった相談は

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ベルギーでは22種が禁止される方針だが…(AFPで配信された記事イメージ)

原告が使用した「ブローネヘアマニキュア」の成分をすべてチェック。合成ポリマー、合成界面活性剤、酸化防止剤などが配合されている。

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びっくり!!!2008/02/01 02:50
さくらもも2008/02/01 02:50
???2008/02/01 02:50
???2008/02/01 02:50
増田 常盤2008/02/01 02:50
なな2008/02/01 02:50
bee2008/02/01 02:50
silver京2008/02/01 02:50
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●EUで12月から禁止になる22種類の毛染め化学薬品について、日本でも話題にしたい。
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