序章 3つの軸・9個の視点で「いい会社」を見つける
#いい会社
本稿は『いい会社はどこにある?』の原文です |
この章では、本書で示す枠組みの全体像、「仕事」「生活」「対価」という3つの大きな軸の意味について伝えたい。サラリーマンとして8年半、旧態依然の日本企業と100%外資の両極端で働いた私は、そのあまりの働く環境の違いに驚き、それを数値化・言語化して、情報共有する必要性を強く感じた。いわゆる情報の非対称性――候補者側は履歴書・経歴書を当り前のように出し、嘘があったら解雇されるが、企業側には社員の平均年齢といった基本的な情報すら開示する義務が全く課されていない――が大きすぎて、働いてみなければわからないことが多すぎるのである。
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- 「生活」こそ日本の論点だ
- 枠組みと階層――3つの軸、9個の視点、12の条件、37の基準
「生活」こそ日本の論点だ
企業側(人事部)は百戦錬磨のプロだというのに、雇われる側である候補者が――学生に限らず、社会人でも、他社のことは本当に知るすべがない――素人で丸腰のまま就活転活戦線を戦わなければならないのは、いかにもアンフェアであって、候補者側に何らかの“武器”が必要だ、と強く思っていた。
その武器は、一定の基準によって数値化された共通の指標によって、横並びで比べられるものが理想である。その指標は、もちろん21世紀初頭の日本における《働く現場の実態》に即したものでなければ、意味がない。
となると、大枠としては、「仕事・生活・対価」の3つが大分類になるはずだ。サラリーマンは、一定時間を働いて、その対価として給料(サラリー)をもらう。だから、「仕事」と「対価」は世界共通の二大軸である点は疑いなかろう。だが、日本にはもう一つ、克服しなければならない懸案のテーマがある。「生活」との両立だ。
今でこそ、少子高齢化による人手不足、そして第二次・電通新人過労死事件(2016年労災認定)をきっかけに全国の電通拠点に一斉強制捜査が入るなどした結果、「働き方改革」が政治課題にあがって久しいが、私がこの3軸の枠組みで取材を始めた2003~2004年は、長時間過重労働が当り前で、政府は知らん顔で追認し、社員を取材すると、身近で過労死を見聞きしている人が大企業でも普通にいる状況だった。しかも、表面化しなかった。私自身もそういう働き方を体験していたので、疑問を持っていた。
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1日あたり有償労働時間。出所:OECD,Balancingpaidwork,unpaidworkandleisure(2020)をもとに内閣府男女共同参画局にて作成。
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