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日立製作所 社員3万人で公募異動147人、FAは15人だけ…機能しない“社内転職市場”――パターナリズムのキャリア支配

情報提供
日立の研修プログラム
日立の教育研修コース。こうした潤沢な研修コストをかけて育てた人材が、20代後半から外資やコンサル会社へと巣立っていく。

入社1年目は終身雇用を前提とした手厚い初期研修を半年~1年かけて学ぶのが日立の伝統で、SE職ならプログラミング研修などをじっくり受けていた。だが昨今では、これが3か月ほどに短縮され、現場でのOJT中心になった。「30歳前後で辞める人が増え30代が空白世代になっていて人手不足感があるのと、実践で身につけるほうが教育効率がよいこともあると思います。日立のSEにプログラミングの知識は求められず、できる必要もありません」(SE職)

Digest
  • ガクチカみたいな研修員論文
  • ITスーパーゼネコン元受け中抜き業
  • 巨大クライアント&国内外の政府がらみ
  • キラキラ案件少ないグループ公募制
  • 社内リスキル→職種転換が難しい
  • もっと利用されていない「社内FA制度」
  • 転職先は「コンサル、外資、メガベンチャー」
  • ジョブ型と相反する「日立の樹」
  • 離職者を補う中途採用500人

ガクチカみたいな研修員論文

コードは書けなくても、プロマネはできる。デキるSEは、むしろスケジュールの先で起こりうるリスクの洗い出しができる人、だという。とにかく遅延なく予算内にプロジェクトを完了できることのほうが、優先順位は高い。1つのリスク管理の見落としが、億単位の損失になりかねないためだ。座学よりも現場で冷や汗をかきながら学ぶほうが、プロマネ力は磨かれる。

日立の伝統として、新入社員は、入社2年目の終わりに「総合職研修員論文(研論)を提出してプレゼンする」というイニシエーション(通過儀礼)がある(三菱電機にもある)。「入社から2年目までを社会人・日立人としての基礎づくりの期間」と位置づけているからだ。総合職研修員というランクから、この研論を経て、3年目に「企画員」というランクになる。

「この研論は、ガクチカ(就活で聞かれる『学生時代に力を入れたこと』)みたいなものです。SE職だと、入社して2年の間に起きたことのなかから、問題発生→原因の特定→対策の考案→成果を挙げたこと、という一連のPDCAについて、パワポで20ページ分くらいにまとめて、2年目の終盤である1月末に提出します。1月は、フルコミットになります。そして、本部長または事業部長の前で、発表します。広めの講堂(会議室)で、50~200人の前で。ただコロナ禍ではこれも、Teamsになっていました」(SE職)

この成果発表会は、まだ2年目の若手社員に、幹部に対して発表させて、ツッコミを受け、質疑応答する機会を、強制的に持たせる意味がある。そのために、先輩社員が指導員としてついて、1ヶ月ほど、入念に準備をすることで品質は保たれる。よって、落とされてもう1年留年ということは、まずない。

3年目以降の研修で、コストがかかっていそうなのは、やはり海外モノである。「海外業務研修」は、期間が1年と長い。全員が行けるわけではなく、条件がある。

「自分が知っている範囲の35人でいうと、3人が行きました。流れとしては、語学力がTOEIC最低750点以上

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日立製作所のSI現場組織

IT企業に偏在し、発注する側にIT人材がいない日本。「我が国におけるIT人材の動向」(経産省、みずほ総研調査)より。

社内公募の利用人数と職位内訳(2018年~2021年度)

社内FA制度の流れと実績

日本人なら脳内にCMソングが自動再生されてしまう『日立の樹』。寄らば大樹。入社してしまえば定年まで大きな傘の下で守られる「メンバーシップ型」のイメージどおりである。

「ジョブ型」を表すバオバブ林(マダガスカルのモロンダバ=1995年、右下が筆者)。筋肉質で無駄のない米欧企業的である。

中途採用数と中途が占める比率

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