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航空管制官 ドリンク&菓子OK、雑談しながら“7割でする仕事”

「1年目と20年目が同じ仕事内容で飽きます」

情報提供
東京エアポートのキャスト6人
TOKYOエアポート』キャストのランク。時任三郎も管理職クラスではない。肩書きと年齢はドラマ上の設定。

航空管制官をネット検索すると出てくるのが、『TOKYOエアポート』(主演:深田恭子)という航空管制官が主人公の職業ドラマ。羽田の管制塔を舞台に起きる様々な事件が描かれ、仕事内容をイメージしやすい。国のPR番組でもなく、フジ系地上波・日曜21時枠で10話放送された(2012年10~12月、平均視聴率10.2%)。「あれは古いほうの管制塔で撮影したものですが、起こりうる可能性のあるイレギュラー事案をぜんぶ詰め込んだようなストーリーになっています。現実には、ほぼ何も起きず淡々と時間が過ぎますから、慣れてくると、むしろ悪天候くらいあったほうが楽しめるようになります」――。30代の元中堅管制官に、現場の実情を聞いた。

Digest
  • 緊張感「思ったほどじゃなかった」働く前後のギャップ
  • 普段はドリンク&お菓子で雑談しつつ “7割で仕事”
  • パイロットからの感謝もやりがい
  • 人命を握るのはパイロット、そのサポート役
  • 航空マニア系か、英語が得意な公務員系
  • 英検準一級程度で受かる資格試験
  • 「1年目も20年目も同じ仕事」航空管制官の3大職場
  • 全国1900人の人員配置
  • 初期配属はぜんぶガチャ
  • 拠点ごとの細かい資格がボトルネックに
  • 出世コースは非管制現場の「裏コース」
  • 「10年で2割」「半分いなくなった」代も

緊張感「思ったほどじゃなかった」働く前後のギャップ

航空管制官は、国交省所属の国家公務員という、安定した身分である。事件がないと面白くないので、ドラマでは次々とイレギュラーな出来事が起きる。ゲリラ豪雨、バードストライク、不審者の空港敷地内への侵入、心筋梗塞で倒れる機内の乗客、エンジントラブルで止まりそうになる機体、GPS誤作動、空港の停電…。

その前作『TOKYOコントロール』(埼玉県所沢市の東京ACCが舞台)では、伊豆諸島沖で火山が爆発し、はては、仙台沖にミサイルまで飛んでくるのだった。

実際の現場では、どのくらいの頻度で、イレギュラー事案が発生するのか。

新旧管制塔羽田
羽田の新旧管制塔

「バードストライクはよくあって、『ああ、また起こったね』くらい。離陸後の機体に『当たったかもしれない』とパイロットから報告があったら、滑走路点検を行ってOKが出るまで、到着予定機を空で待たせることになり、渋滞してトラフィックが増えます。この程度のイレギュラー案件を全て含め、平均すれば1ラウンド(6日間のこと)に1回くらいだけです」

『一瞬の判断ミスが大惨事へとつながるため、常に極度の緊張を強いられる』(同ドラマより)――というのは、かなり大げさだ。実際、管制官のミスを原因とする大惨事など、起きていない。航空機に搭載されたTCAS(空中衝突防止装置)で未然に防ぐ体制もあり、国内における一般乗客の死亡事故はガルーダインドネシア航空炎上事故(1996年)が最後で、これとて、パイロットの判断ミスが原因であり、管制ミスはない。自動車や鉄道と比べても、飛行機は圧倒的に安全な乗り物だ。

「仕事を始める前後のギャップとして、緊張感は、思ったほどではなかったです。3分置きに飛行機が離発着するような時間帯だけ多忙になったり、悪天候・機体トラブル・急病人発生などイレギュラー対応で一時的な瞬発力が求められるのは確かですが、めったにありませんから。梅雨・台風・ゲリラ豪雨が多発する夏場に忙しい日が続くことがある、くらいです」

普段はドリンク&お菓子で雑談しつつ “7割で仕事”

確かに、あのドラマのような勢いで毎日トラブルが起きていたら、疲れてしまってとても続けられないだろう。常に緊急対応が求められる救急救命病棟とは、わけが違う。デフォルトは、平凡な日常のなかの「空の交通整理」である。

「普段は、隣の席の人と雑談ができるレベルで、リラックスしています。のんびりコーヒーでも飲みながら、お菓子つまみながらもOK。『7割の力で仕事をしろ』と言われています。3割くらいの余裕がないと、イレギュラー事案が発生したときにキャパを超えてしまって、対応できなくなるからです」

村役場の地方公務員ほどではないが、ユルめな環境を好む人にとってはよさそうだ。ただ、3年、5年と続けていれば、大きめな事件やトラブルに遭遇することはある。逆に、何もなさすぎると、張り合いがなく、やりがいを見出しにくい。

「自分が実際に同期や同僚など身近で知ることになった最大のトラブルは、離陸した飛行機のエンジンから出火し、緊急着陸することになったケース。

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ドラマに出てくる物理的な紙ベースのバトン(一機ごとに1枚)などアナログ業務は電子化済み。AIは未導入。

航空管制官採用試験「申し込み者数」と「最終合格者数」の推移(過去15年)

航空管制官の一次試験と二次試験の科目。英語の配点が高い。

所沢の東京ACCを舞台にエンルート管制官が主人公となった『TOKYOコントロール』(CS放送)

空港別の航空管制官配置数。地方空港は6~8人が多い。100人を超えるのは東京(羽田)・関空・那覇の3か所だけ。

国交省公式サイト(航空管制官公式「航空管制官になるには」)より。組織図や所属人数が開示されておらず、複雑怪奇。人材を採用する気が感じられない。

航空管制官が配置される現場組織

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