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子育て困難な航空管制官の職場 「転勤しないと昇格できない」

異動ルール存在せず、時短勤務者「見たことない」

情報提供
航空管制官_評価

B:不良企業予備軍
(仕事3.5、生活3.3、対価2.2)

「コストを意識して、安全をわずかでも犠牲にすることは、法律上、許されていません。安全運航についての規定しかないですから」(30代の元中堅管制官、以下同)。コストを優先してはならない、という点は、航空管制官の特性がもっとも表れる。これはドラマ上でも、強調されていた。教官役の瀬戸朝香が、着陸機の移動距離を短縮して効率化を訴える新人・深田恭子に、『管制官はコストを考える仕事じゃないの。コストを考えるんだったらグラウンドスタッフに戻りなさい!』とシミュレーションルームで一喝する。

Digest
  • コストを考えてはいけない仕事だが…
  • あの人は回すタイプ、停めるタイプ…
  • 16時終了で蒲田に繰り出す早番管制官の1日
  • 夜間も土日もGW年末年始も飛行機は飛ぶ
  • 子育てとの両立「時短勤務者みたことない」
  • 転勤と昇進がセットで運用されている
  • 異動・転勤のルールが何もない!
  • 毎日アルコールチェックがある
  • 「専門行政職俸給表」適用
  • 毎月の手当類は4つ+扶養
  • 能力発揮のピークは40歳前後、給料は年功序列
  • 無駄に歳を重ねる中高年、淘汰の仕組みナシ
  • 2千万円強の退職金、月18万円の年金
  • 【職業ドラマと現実】

コストを考えてはいけない仕事だが…

法律で定められている航空管制業務とは――。『すなわち、衝突を防ぐことと、航空機の秩序ある流れの促進とその維持を行うこと。ここにコストって言葉がある?』(教官・瀬戸朝香)

コストって言葉はないの!の場面
『TOKYOエアポート』第1話より

「コスト」と「安全」は、天秤にかけてはいけないのはもちろんのこと、そもそも、コストについては意識から外してよい、というのが定められたミッション。だが、安全レベルが同じであるなら、コストは安いほうがよいと考えるのが、普通の経営感覚である。コストが余計にかかる=効率が悪い、となるからだ。実際の現場での運用は、どうなっているのか。

「効率と安全のバランスがよい人が、現場では評価されます。効率が悪いと、遅延が増えて、管制官室へのパイロットからの問合せも増えて、仕事量が増えるためです。サクサクと、出発・到着を交通整理できる人が、デキる人とみなされます」

ここはドラマとは違って、意外に常識的なのだった。効率が悪いと、パイロットや乗客や航空会社をはじめ、皆の時間を無為に奪う。遅延が増えたら、航空会社の国際的な評価も下がり、燃料も無駄遣いされ、働いている人たちの残業時間も増える。すなわち、コストが無駄にかかってしまう。法律に、コストや効率という言葉はないが、同じ安全レベルを保てるなら、コストは安いほうが全員にとってよい。

たとえばANAは定時到着率89.7%で、2年連続世界一(2022年、英CIRIUM社発表)。日本の航空会社は世界最高レベルの定刻率を誇るが、このジャパンクオリティには、縁の下にいる管制官の仕事ぶりが大きく寄与していることは、もっと知られるべきだろう。※

※1分遅れるだけで謝罪のアナウンスを流す鉄道の異常な定刻率の高さについても同様。日本が世界一の分野については、政府が率先して調査し国際比較データを示すべきである。

国際的に、管制官はコストを考えない教育をされるため、遅延が責められることはない。ところが日本はpunctualな国民性なので、安全も効率も両立できる人が現場で評価されている。これが、国民性である。

あの人は回すタイプ、停めるタイプ…

混雑する時間帯に悪天候が重なることはよくあり、タイトになった際に、遅延なく離発着をやりくりできるかは、管制官の腕の見せ所となる。ストレスがかかり、集中力を要する。

「忙しい空港は、2~3分間隔で飛行機が到着します。その間隙を縫って、出発のほうもさばきます。飛行機の型式や、その日の風向き・風の強さによって、飛行機のスピードは変わりますし、パイロットの性格によって反応の仕方も違います。『2分半しかないけど、テイクオフできる?』とパイロットに聞いて、ダメなら離陸の順番を変えて、小さい飛行機を先に離陸させたりします。そういった短時間での判断、瞬発力が要求されます」

雪の日は、機体整備が必要になって、全体的に遅延しがちになる。それ以外の遅延原因は「到着便の遅れ」「出発便数が多い時間帯の混雑」で発生することがほとんどだという。

「到着機の便数が多くて混雑している場合は、ある地点(FIX)で空中待機(HOLD)してもらうことで、到着機に到着時間を延ばしてもらいます。たとえば到着予定機に10分間、到着時刻を延ばして貰う場合、高度や型式で変わってきますが、すぐに計算して、同じスピード(たとえば250ノット)のままグルグル回って貰うか、スピードを少し落として(同200ノット)到着を遅らせてもらうか、指示を出します。

その時々の、空いている空域や、天候状況に加え、スピード・高度・方向の組合せは無限にありますから、管制官によって、取りうる選択肢が変わります。だから、あの人はグルグル回すタイプだ、とか、停めるタイプだ、とか、管制官の個性が出るんです」

天候は変化するのが当り前だから、天候による混雑はイレギュラー事案にはあたらず、日常である。これを面白いと思えるか、精神的な重荷となって、仕事が終わっても後を引き、ストレスになるか。管制官という仕事を選ぶ際に、重要な分かれ道になるところである。

16時終了で蒲田に繰り出す早番管制官の1日

羽田と成田のターミナルレーダー管制は統合され羽田で一元管理している。

4時台 起床。
5:50 電車に乗って羽田へ。

7:30 チーム内の約10人で、ブリーフィング開始。気象のチェック。気球が飛ぶ、GPSが機械のメンテで止まる時間がある、など情報共有。このシフトチームは小さい官署で4チーム(つまり全約40人)、普通サイズの官署で6チーム(全約60人)くらいで回す。


8:00 スマホは持ち込み禁止なのでロッカーにしまう。アルコールチェック後、8時前に「運用室」に入り、着席。管制業務開始。

8:45 席替え。

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管制官は45分単位で担当の空域を代わっていく。これはICAOの規定に基づく。

航空管制官のシフト、ラウンド、セット。日中の多忙な時間帯要員として、両方のシフトにまたがって勤務する9~16時シフトの人もいる。

国家公務員の「俸給表」種類。行政職、税務食、公安職についで4番目に多い「専門行政職俸給表」(8200人)が航空管制官にも適用されている。

専門行政職俸給表(専行)。航空管制官はこれ。人事院が毎年、適正な給与水準を勧告し、政府が改訂する。

国家公務員のボーナス推移(1975~2022年度)

給与支給明細書(30代前半)。俸給以外に10万円超が支給され、内訳は①超過勤務手当②住居手当③地域手当④特殊勤務手当。

源泉徴収票(30代前半)。公務員は年功序列なので20代30代の年収が働きに比して低く、40代50代で回収する。

航空管制官のキャリアパスと報酬水準

評価詳細と根拠

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