報酬水準と勤続年数から見た『ほんとにいい会社』 カーブと分布に要注意
『週刊東洋経済』2023年3月11日号(2023年3月6日 発売) |
社会に出て十年余り働き、職業人として1人前になった35歳時点で、どのくらいの収入を得られるか――。本来、その全体像がわからなければ、職業選び・会社選びはできない。その情報なくして、奨学金を返済できるかも計算できないし、元手不明では留学も投資も住宅ローンも、人生設計を描けないからだ。(本稿は『週刊東洋経済』2023年3月11日号に寄稿した『ほんとにいい会社とは何か?』の元原稿です。掲載版は紙幅の都合で3割程度、削られています)
- Digest
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- 流れる時間が左右で違う
- 左側の上⇔下は流動性アリ
- 無視できぬ賃金カーブと分布
- 特殊な「中払い」型のメガバンク
- 「後払い型」の昭和メーカー
- 「今払い」型のコンサル・外資
納得のいく学校選びも、難しくなる。パイロットになるなら航空大学校、医者や看護師になるなら医療系の学部を持つ大学にストレートで進むほうが近道だが、ゴールが決まらないと、進学先も間違えてしまう。よって、キャリア教育の一丁目一番地は、正確な賃金情報の開示から、であることは誰しもが理解できよう。
ところが、この情報はどこにもない。企業に開示義務もなければ、国や大学も誰も調査をしていないのだ。記者が正面から企業に取材を申し込むと、「開示しておりません」と門前払いである。
P54~57計4頁 |
そこで筆者が20年余りをかけ、会社を通さず現場の労働者1千人超にアポをとって取材し、図にまとめたものが左記である。新刊『「いい会社」はどこにある?』(ダイヤモンド社)では、その取材結果に基づく分析を行った。その一端を紹介したい。
35歳年収×平均勤続年数 |
左記図の縦軸は35歳年収で、横軸は平均勤続年数だ。横軸が必要な理由は、たとえば同じ「35歳1千万円」でも、3~5年程度で辞めるのが一般的なコンサル会社と、終身雇用が当り前な総合商社とでは、その企業に滞在する間に得る賃金総額が10倍異なるケースもあり、人生における意味が全く違うからだ。
対象は総合職とした。上場企業の有価証券報告書では、平均勤続年数と平均年収が開示されているが、採用区分が異なる一般職と総合職などを全てごちゃ混ぜにしているため、無意味だ。
たとえば旧安田財閥系の損保ジャパンは、平均勤続15年、平均年間給与626万円(44.1歳)と開示しているが、実際に取材すると、総合職は30歳1千万円、最速35歳で1200万円、40代でほぼ全員1300万円以上だという。35歳なら額面1100~1200万円だ。この図には、公表されていない本当の情報が詰め込まれている。
流れる時間が左右で違う
就職・転職のランキング上位常連の企業を配置したところ、真ん中あたりになったのが、「額面800万円、平均勤続10年」。
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