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NTT西日本「半分くらい内定辞退されます」リクルーターが語る平均年齢アラフィフの敬老団体で積めるキャリアの実態

情報提供
2本目サムネさらにぼかし
NTT西日本の社員証・入館証。「自分が入社前に思っていたよりも、もっと衰退産業でした」(インタビュイー)。とはいえ、かつての就職人気ランキング1位の常連で、「親ウケ」はよい。

顧客情報の大規模漏えい事件は、NTT西(928万人分のべ3千万件=2023年10月発覚)でもNTTドコモ(596万人分=2023年3月発覚)でも、グループ会社に派遣された派遣社員が直接的な犯人で、周囲が犯行しやすい環境を整え〝ほう助〟することで事件を発生させていた。会社が公表する組織図では、こうしたグループ会社は本体から切り離され、あたかも他人事と扱っている点からも、無責任体質がわかる。大手商社であれば、各事業グループに出資先子会社が紐づき責任を持つ。NTTは国民生活を脅かす大規模個人情報漏えい事件を起こしながら、どの部門の責任かも曖昧で、事件発覚から半年を過ぎてもなお、責任者らの解任・解雇・降格を含む懲戒処分すら公表されていない。

Digest
  • 子会社に出向している人が9割
  • 一次選考はリクルーターが5段階評価
  • 半分くらい内定辞退されちゃう採用力の弱さ
  • 「思っていたより衰退産業だった」
  • 5つの背番号に分かれる
  • 第三の事業が育たない、『ぬるさ』で不安に
  • 光ファイバーと5Gのグループ内カニバリズム
  • 社内公募で移ると出世に響く
  • ジジババ集団を隠す無謬性への執着
  • 50歳以上の社員が過半数に
  • ジョブ型なのに「仕事しないオジサンの給料が減らない」
  • 「通信インフラ技術者」スキルで転職
  • 中途入社でハッピーなケースとは

NTTグループ各社の子会社は最下層で現場業務を担当するが、経営陣は末端の現状を把握する気もなく、ガバナンスが行き届かない。下々の国民生活を疎かにして「お上」(総務省)だけを見ている者が出世するからだ。実際、4月に就任したNTT西日本の新社長(北村亮太)と退任したばかりの副社長(坂本英一・コンプラ担当)は、ともに3年前、総務省接待で処分を受けた人物である。

だが大半の本体社員は、若い段階から、これら不正の温床となる子会社・グループ会社に出向して働くことになる。リクルーターも経験した技術系総合職社員(30代)に、同社の採用(新卒・中途)と現場組織、身につくスキルや転職先の実情について聞いた。

子会社に出向している人が9割

子会社
NTT西日本の子会社群。これらに本体社員の9割が出向し、プロパー社員や派遣社員と同じ業務にあたる。

NTT西の社員は、出向先の子会社で働くのが基本だ。社会保険の被保険者数は14,586人(2024年4月2日時点、西日本電信電話株式会社)であるが、会社発表によると、本体所属が1,400人に対し、出向者はその10倍近い13,200人。つまり9割の社員が出向先で、子会社プロパーの社員たちと一緒に働いている。

目的の1つは総人件費削減である。子会社プロパーの給料は本体より約3割安い。そして、その職場にはスキルを持った派遣社員もいて、ごちゃ混ぜで、同じ仕事をする。事件の背景ともいえる、ITゼネコンの「多重下請け中抜き」構造である。元請けが品質管理責任をとらないのに、この構図がまかり通っている。

子会社の企業規模も大きく、以下のような会社がある。

 NTTフィールドテクノ(大阪府)10,293人
 NTTビジネスソリューションズ(大阪府)9,722人
 NTTマーケティングアクトProCX(大阪府)3,661人
 
■子会社とNTT法の抜け穴

子会社に大量出向させている目的のもう1つは、NTT法の影響である。NTT東西は、事業内容を3つに定められている。①本来業務=地域電気通信業務(県内通信)、②それに付随する業務=付帯業務や目的達成業務と呼ばれ、電話機等の販売、情報料回収代行、料金回収(請求・収納)代行、電気通信コンサル、研修・セミナー等。

そして、経営資源を活用したその他の事業が、③活用業務と呼ばれ、「1.地域通信の円滑な遂行、2. 公正競争の確保――の2点に支障を及ぼさないこと」を前提に、総務省に届出なければならない。かつては認可制で、総務省の認可を受けてようやく県間通信が可能となり、「ひかり電話」を全国に提供できた。

NTT西日本の場合、これまで、活用業務申請の煩雑さから、NTT西日本本体ではなく子会社に、音声でもフレッツでもない、この③活用業務を担わせてきた経緯があるというが、子会社でも親会社でも同一資本である以上、ただの法の抜け穴である。

一次選考はリクルーターが5段階評価

会社発表によると、2023年3月期は、新卒264人に内定を出した。NTTは、正社員として、総合職のみ採用している。銀行・生保・損保・メーカーなどのように、事務を専門とする一般職は採用していない。事務作業は、派遣社員が担当する部署もあるが、コストカットの対象とされやすく、すべての部署に配置されているわけでもないという。だから、営業だろうが技術だろうが、バックオフィス業務のかなりの部分も、同時に担うことになる。役割分担で生産性を向上する発想はない。

「総合職にとっては、いわゆるブルシットジョブ(報告、点検、決裁チェックなど、クソどうでもいい無意味な仕事)も多いので、そういう作業が気にならない人向けの会社です」

昨今はじめた新卒の職種別採用(エキスパートコース)は3コースあり、いずれも若干名とみられる。「セキュリティエンジニア」(情報システムの管理受託。セキュリティ診断や、NTTの社内システムも担当)、「DX」(ようはSI=システムインテグレーション)、「ビジネスデザイン」(新事業立ち上げ)。学生時代に特別な実績がなければ、基本は、オープンコースになる。

採用は、伝統的にリクルーター制による。

「以前は出身大学や地域別のリクルーターチームがありましたが、3~4年くらい前から、卒業大学に関係なく割り振られる仕組みになりました。だから、必ずしも自分と同じ大学の先輩社員がリクルーターとしてつくわけではないです。名称は『キャンパスコミュニケーター(CC)』と呼び、『NTT西での就活アドバイスを行う』という名目ですが、裏では正式な採用プロセスとして、CCが採点もしています。以前はボランティアで、お茶代として1人700円が経費で出るだけでしたが、2015年度から業務時間として残業もつけられるようになり、学生の評価もつけています。毎年、概ね入社10年以内の若手社員(G6~G4まで)がアサインされます」

一次が、このリクルーターによる採点で、SABCDの5段階くらいで評価されるという。

「私もリクルーターは経験しましたが、一番下が×で、次に進めません。でもそれは、10人に1人くらいだけ。普通に敬語で会話ができない、あるいは学生時代に遊んでいただけ、というような、明らかにひどい学生だけ落とします。チェック項目は毎年変わりますが、設備への関心やIT、電気電子、土木、建築系などの技術やスキルがあるか、ピープルマネジメント経験があるか、学業として何をやったか、など。SIでも設備でも、子会社や下請け会社との仕事が多いので、円滑な対人スキル、すなわちピープルマネジメントができそうな人物であるか――は、重視されています。基準に明示されているわけではないですが、自分は『ウチの会社にいそうか』という感覚的なところも意外と重要視していました(同質性を生み出す温床になっていますが)」

半分くらい内定辞退されちゃう採用力の弱さ

その後、二次面接で課長2人程度、三次面接で本社の部門長クラス、部長クラス、人事の3人。リクルーターが、最後まで学生とコミュニケーションをとって、サポートする。

「リクルーターがいい評価で押し上げて手厚くフォローし、内定が出た学生でも、NTTグループ他社(ドコモ、データ、コミュニケーションズ)、半導体・電子部品メーカーや、関西系のインフラ企業(電力、ガス、鉄道)に内定が決まって逃げられたりで、辞退されることがよくある。最近ではアクセンチュアなどコンサルに逃げられると聞きました。辞退率は、年によっては2割で踏みとどまることもありましたが、おおむね半分弱くらい

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中途採用の人数と比率(上:しょくらぼ、下:公式サイト)

この年は、夏以降も半年で59人が内定辞退し、新卒採用は205人に(2023年4月入社)。サステナビリティーレポートより。

NTT西5つの「背番号」

NTT西日本の組織図

G6~G1、JG6~GJ1とは

グループ全体の公募はやっと2023年に開始された(NTTグループのCSRサイトより)

同じ表のなかに矛盾がある。離職率3割のわけがない。なぜ公式文書で、すぐにバレる嘘をついてしまうのか。これが小賢しい小役人の「無謬性」であり、顧客情報漏えい事件を起こした原因として筆頭で指摘された4つの組織文化のなかの1つである。

出向して働く社員が「13200人」もいる珍しい会社である

NTTの人口ピラミッド。40代の2~2.5倍は50代が在籍しているのは確実である。

GAFAへの流出が止まらない14の研究所・イノベーションセンター

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hiroomi2024/05/16 19:10

“新社長(北村亮太)と退任したばかりの副社長(坂本英一・コンプラ担当)は、ともに3年前、総務省接待で処分を受けた人物である。”で、そうしたのは純ちゃんか。

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mangabon2024/05/14 19:13

渡邉 正裕(生年月1972/05)アラフィフジジイが「アラフィフの敬老団体」とか言っちゃって。

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