1.組織依存の安定VS組織横断の安定 ♯【雇用安定性にギャップがなく納得性が高い】
❐雇用―対価軸『いい会社はどこにある?』
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雇用安定マップ |
雇用の安定には、「1つの組織に依存する安定」と、「組織横断的な安定」の2種類がある。前者の典型は東京都庁だ。「地方交付税※」を受け取っておらず、首都の強みで企業も人も集積しているため、独自財源が有り余る。後者の典型が、医師という資格である。37年間も医学部が新設されなかった規制によって医師が供給されず医師不足となっており、組織に関係なく、だいそれた犯罪でもしでかさない限りは、死ぬまで仕事があるのは、ほぼ間違いない。これを図で示したものが、右記「雇用安定マップ」である。
- Digest
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- ①選択肢の多い最強の安定⇔②独立自営の安定
- ③組織と一蓮托生の安定
横軸が《組織業績の安定性》で、これは「世界シェアが高い」「国内で業界首位クラスである」「規制に守られている」といった条件で判定している。世界シェアは、《出始めの技術》では判定しないほうがよい。半導体(NEC・日立・東芝…)、太陽光発電(三洋電機・シャープ・京セラ…)、薄型テレビ(シャープ・パナソニック・ソニー…)のように、かつては日本メーカーの世界シェアが独占的に高かったものの、今は見る影もない業界は多い。
※地方交付税の不交付団体は、全国1765の都道府県・市町村のうち76の自治体だけ(2020年度)。残りの自治体は、自主財源では運営できないため、国からの“仕送り”を受けている。
一方で、半導体製造装置(東京エレクトロン、アドバンテスト…)、化学メーカー(信越化学、三菱化学…)、産業用ロボット(ファナック、安川電機…)、自動車(トヨタ、ホンダ…)、セラミックス部品(村田製作所・京セラ…)、小型モーター(日本電産)、イメージセンサー(ソニー)、複写機(キヤノン、富士ゼロ…)、建機(コマツ)など、安定した世界シェアを誇る企業も多い。
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第3章対価軸の構成(本稿は単行本『いい会社はどこにある?』の元原稿 《一部アップデート最新版》です) |
一般消費者向けは自動車以外は総崩れしたが、産業向けは地味ながら部品や製造設備に強みがあるのが、日本産業界の特徴である※。
技術の組織的な蓄積とカイゼン、そして《いわれた通りに作る》下請け魂が得意だ。「正直、そこまで高度な技術ではないが、はやくて安いのが強み」(日本電産元社員)。未来を見据えたイノベーションや、消費者ニーズをとらえた製品は日本人が不得意なので、ITサービスはGAFAに総取りされ、ガラケーどまりでスマホも作れなかった。
※いわゆる「BtoB」。これを、PCに貼ってある「Intel Inside」(インテル製のCPUが搭載されています)になぞらえ、「Japan Inside」と呼んで肯定的に捉えたのが、ウリケ・シェーデ氏(UCサンディエゴ教授)である。なかでも「グローバルニッチトップ企業」(世界のニッチ市場でシェアが高い会社)は雇用も安泰で、個人のキャリアとしては最適化される。一方で、これは部分最適であって、1億人超の人口を抱える日本経済全体を食わせていくほどの規模感にはならないため、それだけではマクロ経済運営に不足感があり、国内に失業者が出てしまう。
世界シェアが安定して高い製品を持つ会社は、業績も雇用も、当然ながら安定して終身雇用である。
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