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小室とエイベックス「共存共栄」から上場前年決裂の謎

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小室がプロデュースしたglobeのデビューアルバム『globe』は、オリコンの集計とはいえ400万枚を超え当時の日本新記録となった
 小室哲哉の「小室ブランド」は「出せば何でもヒットする」隆盛を極め「小室ファミリー」は、音楽産業はもちろん、広告/マスメディア産業の一翼を担う大勢力になった。trfや安室だけでなく、華原朋美、篠原涼子、hitomi、H jungle with t(ダウタウンの浜田雅功と小室のプロジェクト)などだ。だが、株式公開の前年、1997年に小室とエイベックス社は袂を分かつことになる。松浦勝人エイベックス社長が自分のブログで公開している同社の歴史「Avex Way」を原資料に、その過程をたどってみよう(文中敬称略)。
Digest
  • 小室が育てたエイベックス
  • 『他のレコード会社のほうが、もっと儲かるのではないか』
  • 人が変わったように傲慢に
  • あまりにもふざけた条件

小室が育てたエイベックス

小室がプロデュースを手がけた「小室ファミリー」は音楽、広告、マスメディア産業の一翼を担う大勢力になった。

小室とエイベックス社(正式名称が変遷するので略称で統一する)の間には、1992年から97年ごろまで「共存共栄」とでもいうべき蜜月関係が続いていた。が、内部では小室とエイベックス社の間には次第に緊張が生まれ、97年にはついに破局を迎える。

もともとバンドマンであり、貸レコード店のアルバイトから身を起こした松浦は、自身もポピュラー音楽に対する独特のセンスを持っている。それが最初はユーロビートのレコード輸入会社にすぎなかった「エイベックス」を大きく育てた初期の原動力だった。が、自社で日本の歌手やバンドを育てたことがないから、日本の音楽業界の泳ぎ方は皆目わからない。

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trfが売れたことで、エイベックスと小室の共存共栄の関係は強まった

そこに小室という「芸能界の大物ミュージシャン兼プロデューサー」が加わり、trfや安室奈美恵という独自の歌手やユニットを育て、同社に大成功をもたらす。エイベックス側も、日本の音楽業界での泳ぎ方を小室に教わっていった。同社が企業として飛躍する資金になったのは、この初期の段階で小室が売ったtrfや安室奈美恵であることは間違いない。が、その過程でエイベックス社も企業組織としても金銭的にも力をつける。そうすると、おのずと小室と同社の力のバランスも変わり始める。

特に自身も音楽センスがある松浦と、小室は「曲作り」という同じ土俵でぶつかることが多かった。「Avex Way」は次のように記述している。

「小室が『テクノ』(テンポの早い打ち込み系ダンスミュージックの1ジャンル)をやりたいと言い始めて、テクノの曲をつくる。ところが松浦から見ると、全然テクノになっていない。松浦がテクノの曲をあれやこれやと小室に聴かせて(中略)小室の曲をテクノ風に仕上げるということもあった」

あるとき、小室がAメロ、Cメロ(サビ)という構成で、曲をつくってきた。それを松浦に聴かせると「Aメロ、Bメロ、Cメロ(サビ)じゃなければヒットしない。Bメロをつくってくれ」という。

『他のレコード会社のほうが、もっと儲かるのではないか』

ここで、小室のプライドをいかに傷つけずに曲を作り直させるか。それが千葉龍平(現エイベックス社副社長)の腕の見せ所である。が、また千葉がひどく頭を悩ませる点でもあった。

同書で、当時の小室と松浦の関係を、千葉は「総論賛成、各論反対が、随所に現れていた」と表現している。こうした意見の相違が生じるたびに、調整役は千葉に任された。前掲書によると、当時の小室と千葉は「ビジネスを超えた任侠の親分と舎弟のような」関係だったからだ。

「酒を飲んでベロベロに酔っ払った千葉が、『小室!おまえ、黙れ!』と放言する。余裕のある小室さんは、『何、言ってんだよ、バーチー!』と笑って返すことができる。千葉のような若い取り巻きが酒宴に入ることで、自分自身が器量の広い人間に見える。そんな効果を小室は知りつつ、一方の千葉は、酔いながら演じるという光景になっていた」

「Avex Way」は次のように記している。

「当時、小室が制作するものはすべてエイベックスの系列会社である『プライム•ディレクション』を通じて世に出た。『小室プロデュース』と呼ばれる曲やアーティストで、制作、管理、進行、どれをとってもエイベックスが関わっていないアイテムはなかった」。

「エイベックスが大きくなるにつれ、人もたくさん要るようになり、松浦周辺のスタッフは増えて行った。他方で、あくまで1アーティストである小室の専属スタッフは、そうは増えてはいかない。ただ単に、小室哲哉というブランドだけがビッグになっていく。

そうなると、小室哲哉個人に群がる人々からエイベックスは邪魔になっていた。『他のレコード会社のほうが、もっと儲かるのではないか』

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日本のオーディオレコード生産金額推移(日本レコード協会『日本のレコード産業』より)

小室サイドが出してきた条件は、「あまりにふざけた内容」だったという

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