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小室哲哉逮捕で「Jポップ汚職」拡大の臭いがする

情報提供
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小室哲哉プロデュースの『NEVER END』は「税金で買い上げてもらったJポップCD」となった。
 小室哲哉プロデュースの安室奈美恵がイメージソングを歌った2000年の九州・沖縄サミット。その準備が進んでいた数年前、安室所属の芸能プロ社長が1億5千万円の裏金を加藤紘一自民幹事長事務所に贈る疑獄事件があった(加藤は議員辞職)。今回、あえて地検が小室を逮捕、取り調べることで、もっと『大物』(国会議員や高級官僚、知事)に捜査を伸ばす狙いも、あるのでは――。音楽産業研究の第一人者で「Jポップとは何か 巨大化する音楽産業」(岩波新書)などの著書がある烏賀陽弘道氏に、背景を解説してもらった。
Digest
  • アムロ所属芸能プロから自民幹事長サイドに1億5千万円の裏金
  • 税金で買い取られた推定1万セット
  • 加藤元幹事長の立件は見送られ、議員辞職
  • 地検は「Jポップ汚職」も視野に入れていた
  • 小室はどれくらい勾留されるのか

11月4日、音楽プロデューサーの小室哲哉(49)が詐欺容疑で逮捕されたとき、あまり知られずに終わった6年前の「Jポップ汚職事件」を私は思い出した。それは「九州•沖縄サミット」(2000年)で「サミットのイメージソング」を歌った安室奈美恵が所属する芸能プロダクションの元社長が逮捕され、その捜査の過程で、そこから自民党中枢に裏金がわたっていたことが明らかになった、という事件だ。

言うまでもなくこの曲「Never End」は小室哲哉のプロデュースであり、小室はサミット首脳たちを前にしたレセプションステージの演出まで仕切っていた。この「安室事務所社長と自民党中枢」をめぐる疑獄事件について、ずっと私が抱いている疑問を書いてみる。それを前提にして眺めると、今回の小室逮捕は少し違った断面を見せ始める(文中敬称略)。

アムロ所属芸能プロから自民幹事長サイドに1億5千万円の裏金

安室奈美恵が所属する芸能プロダクションの元社長とは、「ライジングプロダクション」(現在名はヴィジョンファクトリー)の平哲夫だ。平は、沖縄サミットの翌年2001年10月に、脱税(法人税法違反)容疑で東京地検特捜部に逮捕され、05年1月に最高裁で懲役2年4月、罰金2億4000万円の実刑判決が確定した。06年には服役を終えている。二審判決によると、脱税金額は約11億円という巨額にのぼる。

ここまでなら、よくある芸能プロダクションの脱税事件である。あまり珍しくもない。ところが、この捜査の過程で、転がり出てきた事件に私は驚いた。かつて、自民党きっての実力者として「将来の首相候補」と呼ばれていた加藤紘一元幹事長の事務所代表に、平から1億5000万円もの裏金が渡っていた事実が発覚したのだ。

この事務所代表は加藤事務所の「金庫番」でもあった佐藤三郎。佐藤は、この1億5000万円を申告しなかった脱税(所得税法違反)で02年3月に逮捕され、同年12月には懲役2年、執行猶予4年、罰金4300万円の有罪判決を受けた(そのまま佐藤、検察とも控訴せず確定)。

この裏金が渡ったのは、加藤紘一が自民党幹事長として権勢の絶頂にいた97年6月ごろである。違法なカジノ賭博店への出入りが発覚することを恐れた平が、佐藤にもみ消しや捜査情報の収集を依頼、その謝礼の意味があったと報道されている(02年1月11日付読売新聞)。

この事件は次の点で私にとって衝撃的だった。一見接点がなさそうに見えた自民党中枢とJポップ業界が、巨額の裏金を渡し、捜査のもみ消しや情報漏洩といった違法行為を依頼するほど、深く、そして暗く関係していたことだ(加藤紘一の金庫番秘書という「大物」は、接触するだけでも簡単ではない)。

税金で買い取られた推定1万セット

それまで芸能スキャンダルは数々あったが、政治腐敗への関与は前代未聞だったからである。そして、その「ライジング」が抱える看板歌手が、Jポップのスター•安室奈美恵であるということが、さらに衝撃的だった。安室は、沖縄サミットというもっとも華やかな政府行事で歌うという栄誉を与えられたからである。

忘れてはならないのが、サミットで外務省が、政府予算(つまり国民の税金)を使って「Never End」のCD(一枚1050円)を買い取っていることだ。当時、新聞労連(新聞社の労働組合の連合体)が、サミット取材記者団に配られた豪勢なおみやげ=通称「プレスキット」=を問題視していた。

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サミット取材のマスコミ記者は、外務省からICレコーダー、アムロの特製CD、目覚まし時計など2万円ほどの商品をタダで貰っていた(新聞労連の新聞研究部が部長名で出した声明より)。

その声明「記者に問う サミット取材と“お土産”問題」(右記参照)によると、

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(上)02年2月7日朝日新聞、(下)02年3月4日朝日新聞

(上)02年5月1日朝日新聞、(下)02年9月18日朝日新聞

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