ファイザー、「15分で定員オーバー」超人気退職プログラムの現場
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日本IBMやソニーをはじめ正社員のリストラも活発化し始めた昨今、製薬世界最大手のファイザーが昨夏、日本で実施した大リストラ事例は、おおいに参考となるはずだ。3200人弱いたMR(営業)は、3割弱が去って約2300人に。現在では派遣社員200人を補い、2500人体制にスリム化された。希望退職は大人気で、「20回線以上用意した電話につながらない人が続出し、一説には最大2千人が応募したと言われている」(中堅社員)。その内容は、確かに魅力的なものだった。
- Digest
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- 横浜事件の教訓
- 「トランスフォーメーション」という名のリストラ
- やむなく辞めた人も70~80人
- 30歳過ぎに800万に
- 手厚い住宅補助、車も自由
- 安定度高い報酬体系
- 病院担当MR、「麻生首相の発言は的を得ていると思う」1日
- 休みは悪ではないカルチャー
- 勤務地を選べるのは過疎地だけ
- やりがいはドクターからの信頼
- 転職先は、9割がMR
「希望退職制度」の説明文書はPDFダウンロード可
横浜事件の教訓
このリストラには前段があった。2005年、就任間もないソーレン・セリンダー社長が、営業部門で3百人規模の人員削減を行おうとしたときの話だ。特定の人だけ、つまり指名解雇対象者だけが「パシフィコ横浜」に集められ、退職を促された。社内では「横浜事件」と呼ばれている。
話し合いもないままの強引なやり方に、組合は徹底反抗。社長は「ポストがなくなっただけだ、指名解雇ではない」と説明したが、スト寸前となり、社長は解任。リストラは取り消しとなって終息した。
「仏から来たばかりだった社長は日本の商慣行を知らず、取引先に香典を出すことも認めないほど。まだ入社2~3年目の人も肩を叩かれていましたから、日本の雇用慣行から見て無理がありすぎました」(社員)
「トランスフォーメーション」という名のリストラ
そして2007年。1月に米ファイザーが、2008年末までに全世界で1割削減するリストラ策を発表。なお、ネガティブな印象があるリストラという言葉は使わず、社内では盛んに「トランスフォーメーション」と呼んでいる。
さすがに今度は、2年前の轍を踏むことはなかった。春先には、労組に希望退職制度の条件を提示。パソナキャリアによる再就職支援、ほぼ全社員(社歴1年以上、満60歳未満)が公平に応募可能、そして割増し退職金など金額面で不満のない内容だったため、労組関係者によれば内容に修正はなく、主に実施方法(応募の受付方法や公平性、守秘義務をどうやって保障するのか…)について話し合ったという。中央研究所(愛知県)の閉鎖も、受け入れられた。
6月1日、国内の営業(MR)など約4000人を対象に、最大750人の希望退職者を募集することを発表。対象者1人1人に、「親展」で条件面が記された封書が配られた。
年齢によっては基本給の72か月分(つまり6年分)にもなる割増退職金 |
募集人数の上限は、管理職が400人、一般社員が350人。左記のとおり、かなり好条件だ。割り増し退職金が、35歳でも基本給の44ヶ月分、一番やめて貰いたい49~53歳では、72ヶ月分にもなる。申し込みは、先着順だ。申込み受け付けの当日は、混乱が予想された。
優秀な人が辞めないよう、部長クラスには特別な「慰留経費」が認められ、あらかじめ飲みにいって説得するよう、指示が出ていたという。
7月23日、一般社員の募集期間初日。電話の自動音声対応によって受け付けることとなり、全社員が半日間、自由行動となった。電話がつながると、封書に記載されている暗証番号4ケタを入れ、人と話すことなく電話操作だけですべてが完了する仕組みだった。
その受け付け当日の様子を語るのは、希望退職に申し込みし損ねた社員だ。「私は、ケータイと固定電話の2つで、午前9時(=受付開始時刻)5分前からかけ続けましたが、つながらず。9時32分にやっとつながったと思ったら、受付は終了しました
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ファイザーのキャリアパスと報酬水準
ファイザーの報酬内訳と賃金体系(社内資料より)
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読者コメント
チャンピックスを売っているので「煙」でごまかすような日本の某企業とは違うのでしょう。外資系というイメージによる「壁」がぬぐい去るように頑張ってください。もはや地球はきれいな?空気でつながっているのに・・・。
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