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新卒採用人気トップの三菱商事 社内向け報告ばかり、自由も責任もリスクもなし、決裁は紙にハンコだらけ…「このままでいいのか?」という贅沢な悩み

情報提供
三菱商事評価修正4.7
Aa:超優良企業
(仕事4.5、生活4.7、対価5.0)

昨今の就活において理系男子1位となるなど、

ソニー・シャープほか電機業界の沈没もあって、文理問わず人気絶頂の三菱商事。「シューカツで上のほうの人たちをガサっと採って書類仕事ばかりさせて、まるで『人材の墓場』ですね、ってリクルートの人から言われましたが、確かに管理部ではそういう面があります」(若手社員)。終身雇用が大前提の同社では、まず下積み期間がある。「若手の仕事は、買った後の事業投資先管理が中心。これは、ようは現場で起きていることを丸の内の本社でまとめて社内向けに報告する業務で、約7割はルーティーン作業。やりがいゼロです」(中堅社員)
Digest
  • 資源/非資源、トレード/事業投資
  • 役所よりも役所らしい、判子だらけな「組織の三菱」
  • 飼い殺し感に「ホントにこのままでいいの?」
  • OB訪問と採用における位置づけ
  • 「飛び抜けて優秀ではない」お坊ちゃん偏差値エリート
  • 「資本の力」で英語コミュニケーション
  • 1年目はインストラクターがメールの中身まで管理
  • 応募がバレる「チャレンジポスト」の実情
  • 海外赴任、MBA留学、グローバル研修生制度の実態
  • 「家族に手厚くして会社を辞められなくしている」
  • リクルートと反対の会社
  • 1千億円規模に魅力を感じられるか
  • 中途採用は2ケタ

資源/非資源、トレード/事業投資

とはいえ、全員がこうした管理部に初期配属されるわけではない。同社の組織は、コーポレートスタッフ部門と、7つの事業グループ(金属、機械、化学品、エネルギー事業、生活産業、地球環境インフラ事業、新産業金融事業)に、大きく分かれる(→組織図)。コーポレートには「財務」「法務」「人事」「リスクマネジメント」「グローバル渉外」といった管理系の各部があり、7つの事業グループ内にも、それらの機能を持つ“ミニ管理部”がある。

「最初の配属でコーポレートを希望する人は、ほぼゼロなのですが、残念ながらコーポレートに決まった人は、数人を除き、まず各グループの管理部に配属します。一方、各グループに配属された人のなかにも、グループ全体配属という形で、研修の意味合いで3年間、管理部に所属する人がいます」(若手社員)

こうして、ある年は、新卒入社同期の3分の1ほどが管理部に配属された。一般的に、商社は営業が花形で、社内的にも権力を握るが、三菱商事は少し違う。三井物産が「管理より営業のほうが強い」と言われるのに対し、「営業よりも管理が強い」と言われるのが三菱商事。管理部では、取引上で発生する税法や民法の問題を学ぶなど、商社業務の基礎を一通りOJTで覚える。新人時代に管理部を経験させ、コンプラ意識を高めたいとの会社側の意図も感じられる。

残り3分の2は、7つの事業グループの営業部門に配属されたという。商社のビジネスは、グループを問わず、伝統的な「トレーディング業」(A社から仕入れてB社に売ってマージンが1個いくら…)から「事業投資業」(会社の株を買って毎年の配当収入等を得る)へとシフトし、現在は利益の大半を事業投資から得ている。若手がいきなり事業投資の仕事にアサインされることは稀で、トレーディングが中心となる。

配属先が「資源系」か否か、でも仕事内容は異なる。資源系(エネルギー事業グループ、金属グループ等)は、顧客が重厚長大製品を扱う伝統的な産業(新日鉄、JXホールディングス等)中心で、そういう会社は年功序列で上下関係が厳しく、体育会的な社風を持つ。顧客に合わせる形で、資源系グループに所属する三菱商事の若手も、使いっ走り(接待のセッティングや資料作成等)の仕事が中心となる。

一方、非資源のトレード部門だと、若いうちから任せてくれる傾向がある。「自分は、入社2年目から海外出張で商談を経験できました。取引先企業に出向し、営業代理(商社が入ったほうがネットワークを活用してたくさん売れる)の契約を進めたり、海外の提携先とも交渉しました」(中堅社員)

役所よりも役所らしい、判子だらけな「組織の三菱」

「ただ、リスクをとる仕事はできません――」(中堅社員)。これは、社員に個人プレーを許さず、すべてを完全な組織決定にして、がんじがらめとしているためだ。お役所勤めに似た安定感はあるが、個人としての面白みはない。

「たとえば、自分が担当しているサプライヤーを訪問するには、事前にチームリーダー(部長の1つ下、30代後半~)の許可が必要で、さらに訪問後にレポートを出さないといけません。“ホウレンソウ(報告・連絡・相談)150%”の会社です。効率が悪いのでマイナスだと思いますが、やらないと怒られる。管理され過ぎることに悩む社員は多いです。毎日、報告ばかりで、お客さんに提案もしたいのに、自分の判断では顧客訪問1つできず、自分の仕事にはバリューがあるのか?と」(同)

こうしたホウレンソウは、ほとんどメールベースで行われるが、おカネが絡む「決裁」になると、昭和時代の慣行が、そのままの形で残っており、時間を浪費する。このスマホ全盛時代に、「紙に実印」なのだ。

「時に『役所よりも役所らしい』と言われますが、1千万円程度の少額入札でも、最低6~7個のハンコが必要です。チームリーダー、部長、グループ管理部長、リスクマネジメント部の部長、グループCEOオフィスの室長…と、紙に、本物のハンコで押印します。さらに、7人分のハンコが必要だと、『写し』を6枚作る。この写しは、本物の決裁書が回るのに時間がかかるため、予め内容を見ておいて貰うためのもので、起案者が、紙を手で持っていくカルチャーがあり、電子メールではダメとされます」(同)。完全な重複業務だ。

若手社員も言う。「100万円の業務委託の決裁をとるのに、紙ベースで計20個のハンコが必要だったこともあります。交際費も必要以上に厳しくチェックされます。とにかく、報告書類が多い会社。稟議を回し過ぎだし、稟議のシステムもIT化できるのに、していない」

飼い殺し感に「ホントにこのままでいいの?」

確かに、普通のお役所以上かもしれない。だがこうして、すべての行動や決裁を、チームリーダー以上の承認によって実行する仕組みとすることで、若手は責任から解放される。逆に言えば、30代後半以下のヒラ社員には、権限や責任がほとんどない。そして、確かにこの仕組みでは、コンプライアンスがしっかり守られやすい。

「報告、報告で、こんなに現場でリスクをとらずに仕事をしていいのか、と思います。これまで先人が築いてきた、チャネル(販売や仕入れの流通経路)と信頼関係という『過去の遺産』で稼いでいる、という感じ」(中堅社員)

組織に所属していても、ベンチャー企業を中心に、自由度の高い働き方をしている人は多い。リクルートや外資コンサルなど1千人規模の企業でも、かなり若い段階から、個人プレーの要素が入る。三菱商事のように、個人がリスクをとれず、組織決定に従って社内向けの報告や稟議の日々を送ることについては、確かに安定はしているものの、「もっと仕事を任されたい」「もっと自分の意志と決断で動きたい」というハイスペックなタイプにとっては、ジレンマも感じるという。

「直接、聞いたわけではないですが、日々の会話のなかから感じるのは、自分も含め、こうした仕事環境に悩んでいる同期が多い、ということです。ホントにこのままでいいの?という感じ。漠然とした『飼い殺し感』は、6~7年目くらいから出てきます。特に、管理部門に所属している人には多いはずです」(同)

OB訪問と採用における位置づけ

商社の仕事は、今でも政治家との関係が重要な仕事で、三菱商事も各国の国策に絡む仕事を多数、手掛けている。ロシアの天然資源(石油・天然ガス)をめぐっては「サハリンII」に出資しており、ブルネイLNG(液化天然ガス)プロジェクトはブルネイ政府・シェルとの共同出資事業だ。

このため、政界からのコネ入社が目立った。民主党の寺田学衆院議員(元秋田県知事・寺田典城氏の息子)は中央大学卒業後、2001年に新卒で三菱商事に入社。入社3年目に地盤を継いで当選、民主党政権では、史上最年少で首相補佐官となった。自民党の後藤田正純衆院議員(後藤田正晴の親族)も、慶応大学卒業後、93年に三菱商事に入社。2000年に地盤を継いで代議士となった。

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安倍首相の兄、安倍寛信氏。実の兄弟とあって確かに顔が似ている(三菱商事パッケージング公式サイトより)

安倍首相の実兄にあたる安倍寛信氏も1975年に入社し、現在は紙パッケージング部の子会社である「三菱商事パッケージング」の社長に収まっている。安倍晋三氏には子どもがいないため、この寛信氏の長男が地盤を継ぐとの報道もある。

ただ、商社がコンプライアンス重視を言い始めたこの10年では、こうしたコネ入社は、あまり聞かれなくなり、実力主義の採用となってきた。

一方、「嘱託」という正式なコネ入社の制度が以前より存在し、例年、数人が総合職として入社する。これは三菱商事の取引先企業のオーナー社長の子供が、将来、跡を継ぐことを前提に、3年間だけ三菱商事に籍を置く仕組みだ。

自分の子供がお世話になっていると交渉でも強く出られず、人質のようなものとなる。また、オーナー企業にとっては、子供が三菱商事出身というと、まるで実力で入社したと勘違いする世間の人も多く、世間体がよい。両者の関係が人的に強まることは、お互い、合理的なのである。

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上:新卒の採用実績経年データ(文理別、学卒/院卒、男女別) 下:中途の採用実績経年データ (同社公式サイトより。この情報開示姿勢は高く評価できる)

三菱商事は、こうした嘱託を含め、総合職の新卒を毎年100~200人、安定的に採用し続けている。2004年が100人で、これが底。2005年107人、2006年130人、2007年160人…と増やし、昨今は2012年171人、2013年175人、2014年169人である。

「出身大学の偏差値でいうと、一番低いのが上智でMARCH以下はゼロ、という年もあります」(中堅社員)というように、学歴偏重感は否めない。「同期は、慶應が一番多く、東大、早稲田と続き、MARCHは1人ずつとか」(若手社員)。例年、東大早慶が各20人以上と多く、7割がたを早慶上智東大京大一橋で占める、というのが通例だ。

採用方法は、緩いOB訪問+面接3回程度。メガバンクのように最初から最後までOBがリクルーターとして付け回す感じではなく、OB訪問が必須というわけでもないが、選考の可否に影響はある。

同じ大学の先輩社員は、OB/OG訪問を受けると、昼食や軽食をとりながら話をし、ざっくばらんに学生の質問に答える。そして、人事部に、食事代の経費申請と一体化した、報告書類を出す。その内容と審査での使われ方は、以下のとおりだ。

「フォーマットに沿って、大学名、学部名、お勧め度合(強く推薦、

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三菱商事の現場組織(事業グループ)

日当は家族にも本人と同額が出る(海外旅費規定より)

三菱商事の評価詳細と根拠

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