新日本のリストラは基本給の6~10カ月分が条件だそうだ。会計士だと再就職はしやすいだろうから、そんなもんで400人集まるのだろう。
社外に出るときにモノを言うのは、スキルの市場価値だけだ。この見えない市場価値は、以下4つに分解して意識的に考えることで見えてくる。誰しもが薄々勘付いているとは思うが、改めて冷静に考えてみていただきたい。
| 新日本監査法人、会計士ら400人早期退職募集 | | 監査法人で国内最大手の新日本監査法人は、所属する公認会計士と会計士試験合格者を対象に400人の早期希望退職を実施する方針を固めた。2008年秋のリーマン・ショック以降、外資系企業の相次ぐ日本撤退などで収入が落ち込んでいる。大手監査法人が数百人規模の希望退職者を募るのは珍しい。9月末にかけて募集する。対象は金融部など一部の部署や若手を除く会計士と会計士試験合格者約4800人。応募者には面談を経て原則10月末までに退職してもらう。基本給の6~10カ月分にあたる割増退職金を支払うほか、再就職支援も実施するという。(2010/07/25,日経より) |
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①ポータブルスキルとは、特定の会社に依存しない専門的な能力(=才能+知識・技術)である。たとえばインドで現地滞在暦3年の商社マンの、貿易の知識、英語の交渉力、現地の商慣行やマーケット知識などは、社外に持ち運びできる。パナソニックなど海外展開を強化したいメーカーに転職しても、そのスキルには相応の値段がつく。転職や独立のときにモノを言うのが、ポータブルスキルである。
新日本はポータブルスキルがマスコミ企業のサラリーマンに比べ大きい。
②社内向けスキルは、社内でしか通用しないスキルである。俗に「サラリーマンスキル」などとも言う。社内で力のある「○○さんを知っている」ほか、「ヒラメ人間」として(眼が上にしかついていないヒラメのように)上司に媚びへつらったり、社内に固有な業務プロセスに詳しい、などだ。確かに、それによって仕事が進むわけだが、社外に出たら役に立たない。
③会社の看板プレミアムとは、その名のとおり、ブランド価値に対して払われているものだ。私がIBMにいた頃、日本IBMでは「うちの製品は1割高くても買ってくれるが、それ以上だと負けてしまう」と社内で言われていた。全く同じスペックの製品であっても、たとえばソニーの製品なら、ソニーのマークがついているだけで、同じ品質でサムソンより2割高くても、消費者は買うかもしれない。単純化すると、それが回りまわって、社員の高い給与に跳ね返る。
④規制プレミアムは、政府の規制によって生み出された給料である。その最大のものがテレビで、2位が新聞だ。彼らの年収の半分以上は、電波や再販、記者クラブといった参入規制によって生み出されているが、実力と勘違いしている人が時々いる。官公庁や、電力やガス、JALやJRなどの交通・インフラ系も、規制プレミアムが大きい。参入が自由で公正な競争条件にもとづく市場原理が働かないと、規制が撤廃されたり、業界環境が激変した際に、稼ぐことができなくなり、即死してしまう。
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ファイザーの年齢別条件
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以上をふまえ、最近の希望退職の条件を見てみよう。
やっぱりすごかったのが、2007年に750人の希望退職者を募集したファイザー。募集が殺到し、15分で電話がパンクした。30歳で34ヶ月分、40歳で54ヶ月分、50歳で72ヶ月分!だった。
ファイザー
マスコミ企業は、今はまだ体力がある。朝日新聞が年収の半分を10年保証するという世間知らずな厚遇で話題になっている。45歳で応募すると750万×10=7500万円。論外。今の若手社員は、これだけの厚遇は享受できない。
光文社:2千万円+特別割増金18ヶ月分+既存退職金×130%。
日経BP:36ヶ月分または2千万円。
45歳でコミコミ5千万円とかもらっても、結局、40代のマスコミ人の95%は、悲しいかな、自力で年4~500万円しか稼げない。50代以降の生活設計を立てられず、普通ではない条件(資産家だとかシングルだとか共働きだとか)にあてはまる人を除いて、辞められないのが実態だ。
これに対し、リストラが年中行事の日本IBMは、90年代は今のマスコミのように厚遇だったが、JALの例(かつては60ヶ月、今は6ヶ月)からも分かるように、どんどん切り込まれていくのが希望退職のセオリー。いまや年俸1年分くらいが相場.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。