新日本監査のリストラで考える「ポータブルスキル」
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ある人が稼ぐ給料は4つに分解できる |
新日本のリストラは基本給の6~10カ月分が条件だそうだ。会計士だと再就職はしやすいだろうから、そんなもんで400人集まるのだろう。
社外に出るときにモノを言うのは、スキルの市場価値だけだ。この見えない市場価値は、以下4つに分解して意識的に考えることで見えてくる。誰しもが薄々勘付いているとは思うが、改めて冷静に考えてみていただきたい。
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①ポータブルスキルとは、特定の会社に依存しない専門的な能力(=才能+知識・技術)である。たとえばインドで現地滞在暦3年の商社マンの、貿易の知識、英語の交渉力、現地の商慣行やマーケット知識などは、社外に持ち運びできる。パナソニックなど海外展開を強化したいメーカーに転職しても、そのスキルには相応の値段がつく。転職や独立のときにモノを言うのが、ポータブルスキルである。
新日本はポータブルスキルがマスコミ企業のサラリーマンに比べ大きい。
②社内向けスキルは、社内でしか通用しないスキルである。俗に「サラリーマンスキル」などとも言う。社内で力のある「○○さんを知っている」ほか、「ヒラメ人間」として(眼が上にしかついていないヒラメのように)上司に媚びへつらったり、社内に固有な業務プロセスに詳しい、などだ。確かに、それによって仕事が進むわけだが、社外に出たら役に立たない。③会社の看板プレミアムとは、その名のとおり、ブランド価値に対して払われているものだ。私がIBMにいた頃、日本IBMでは「うちの製品は1割高くても買ってくれるが、それ以上だと負けてしまう」と社内で言われていた。全く同じスペックの製品であっても、たとえばソニーの製品なら、ソニーのマークがついているだけで、同じ品質でサムソンより2割高くても、消費者は買うかもしれない。単純化すると、それが回りまわって、社員の高い給与に跳ね返る。
④規制プレミアムは、政府の規制によって生み出された給料である。その最大のものがテレビで、2位が新聞だ。彼らの年収の半分以上は、電波や再販、記者クラブといった参入規制によって生み出されているが、実力と勘違いしている人が時々いる。官公庁や、電力やガス、JALやJRなどの交通・インフラ系も、規制プレミアムが大きい。参入が自由で公正な競争条件にもとづく市場原理が働かないと、規制が撤廃されたり、業界環境が激変した際に、稼ぐことができなくなり、即死してしまう。
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ファイザーの年齢別条件![]() |
以上をふまえ、最近の希望退職の条件を見てみよう。
やっぱりすごかったのが、2007年に750人の希望退職者を募集したファイザー。募集が殺到し、15分で電話がパンクした。30歳で34ヶ月分、40歳で54ヶ月分、50歳で72ヶ月分!だった。
ファイザー
マスコミ企業は、今はまだ体力がある。朝日新聞が年収の半分を10年保証するという世間知らずな厚遇で話題になっている。45歳で応募すると750万×10=7500万円。論外。今の若手社員は、これだけの厚遇は享受できない。
光文社:2千万円+特別割増金18ヶ月分+既存退職金×130%。
45歳でコミコミ5千万円とかもらっても、結局、40代のマスコミ人の95%は、悲しいかな、自力で年4~500万円しか稼げない。50代以降の生活設計を立てられず、普通ではない条件(資産家だとかシングルだとか共働きだとか)にあてはまる人を除いて、辞められないのが実態だ。
これに対し、リストラが年中行事の日本IBMは、90年代は今のマスコミのように厚遇だったが、JALの例(かつては60ヶ月、今は6ヶ月)からも分かるように、どんどん切り込まれていくのが希望退職のセオリー。いまや年俸1年分くらいが相場
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読者コメント
大量に有る「ポータブルスキル」をどう使い切ったら良いか、プロセス・順番・構成に煮詰まるときが有る。
最大は「経験値」からの一瞬の「ひらめき」でとんでもない発見してしまっつた。
しかし、一人で全て、あれもこれもは時間的に不可能。
この場合、どうしたら良いだろうか。
起業準備は出来ているが、重要なのは有能なブレイン・協力者を見つけ出す事。
その方法を知りたい。これに尽きる。
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