外資で働くということ
SFCの「Ω」教室にて |
先月(4/23)SFCで行った学生向け講演では、事前にリクエストがあったため、外資で働くことについても話した。90年代に外資で働くというと、かなりの「変わり者」であったが、今では以下のような外資が人気の就職希望先になっている。
【IT】アップル、マイクロソフト、IBM、グーグル、アマゾン…
【コンサル】マッキンゼー、BCG、アクセンチュア…
【金融】ゴールドマン、モルガン、メリル、シティバンク…
それぞれ個別企業でのキャリアについては企業ミシュランを見ていただくとして、ここでは、日本人が外資で働くことの意味について、改めて述べておこう。
私自身は、IBMのコンサル時代、コンサルタントというのは仕事がら、際限なく仕事ができてしまうので(仕事内容を定型化できず、際限なく品質を高められる)、報告会の前などは徹夜になるわけだが、
「こんなに仕事をして、クライアントの評価が高くなって、継続プロジェクトになって、バカ高いチャージレートでフィーを貰ったところで、そのカネはどこにいくんだろう?」と考えると、バカらしかった。
外資の100%子会社だから、利益は、第一に外国の株主、第二に外国人経営者、そして第三に米国の法人税収となって米国の道路や福祉や軍事兵器の財源となる。残り(税引き後利益)も結局、株主のものだ。
コストのほうの人件費の配分も、米国本体の社員がそもそも高く、優先される。日本企業がリストラする際に海外の子会社の人たちから切っていって本体社員が(人件費が高いにもかかわらず)最後になるのと同じだ。ぜい肉や手足から削いでいくのは当然で、頭脳の部分は、最後まで残るわけである。
外資で働く意味 |
グローバル企業の「頭脳」部分は、もちろん、本体の本社にある。
左記図でいえば、左上の「無国籍ジャングル」が頭脳にあたり、戦略、企画、開発、設計など、バリューチェーンの上流工程を担当する。ここに日本人は、ほとんどいない。
日本法人(子会社)の出番は、その次の工程にあたる、サービスの執行や製品の販売だ。これらはすなわち、グローバル企業における「日本支店業務」である。サービスや製品の日本語化を行い、日本市場向けに日本語で売り込む。右上の「グローカル」業務である。
日本支店業務のなかでも、より単純労働となる日本語で日本人に販売する店員(アップルストアなどに勤務)が右下「ジャパンプレミアム」にあたり、製品の製造は左下「重力の世界」業務でホンハイ中国工場の中国人などが担当する。
■お気づきのとおり、給料は、上流へ行くほど高い。一番高い、おいしいところ(左上の頭脳部分)は、すべて外国人がもっていくわけだ。
外資で働くということは、外国の税収、外国人経営者、本体の外国人社員、外国の株主に、せっせと仕送りをする行為に等しい。
当時、マネージャーのチャージレートは月400万円(定価)だったが、私の年俸は900万円台だったから、8割がピンはねされるわけだ。コンサルの仕事に物理的な設備投資はいらず、PC1つだけ。オフィスには決まった机もなく(フリーアドレス)、ロッカー1つだけ与えられる。僕は中途入社なので、新入社員が行っているような海外研修などのコストもかからない。このままでは、外国人に搾取されているだけではないか。
「眼を覚ませ、僕は日本人だ」--そういう思いが強まり、まず辞めることを決め、会社を設立し、「疲れたのでキャリアを考える時間が欲しい」として半年間の休暇を貰い、今の仕事を進め、出版企画を通して、半年後に有休を使いはたして退職した。今年のMyNewsJapanの売上は5千万円を超えるので、IBM時代の月400万×12と同じ水準になっている。
TVでちやほやされている原田泳幸氏(アップルの日本法人代表などを務めた)など、外資をわたり歩くことを本業としている人たちは、どういうモチベーションで働いているのだろうか。「日本支店長としてたっぷりアメリカに貢献しました」というのが実態であるが、それは日本人として誇れることなのか。
仮に1億円年収をとれたって、本社には、その10倍は儲けさせている。それを超えるだけの日本人消費者利益があると思えるから?自分さえ稼げればいい?そもそも、「人類みな兄弟」で、国籍意識など消し去っているのか?だったら、どうやって消した?
外資というのは、私のように、スキルアップの手段として限定された期間在籍するのは有効であるが、そこから先、本業やライフワークにしてしまう人の本心について、ぜひ聞いてみたいものである。(2014年12月追記)最近の動きを取材して、さらに外資の意味を実感した。
■日本IBM(コンサル&SE職) 住宅補助廃止、下がる給料、遅れる昇進、若手でも当日解雇…「本当の外資になってしまった」
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
(´・ω・`) > 外資で働くということは、外国の税収、外国人経営者、本体の外国人社員、外国の株主に、せっせと仕送りをする行為に等しい。
渡邉正裕さん、(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト 外資で働くということ→外国の税収、外国人経営者、本体の外国人社員、外国の株主に、せっせと仕送りをする行為に等しい。
facebookコメント
読者コメント
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。記者からの追加情報