日本IBM(営業)、マーティン体制下で強まる「アングロサクソンの手下」感
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- Digest
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- 「アングロサクソンの手下」感
- グローバル志向の人はIBMに入社すべきでない
- 新卒はTOEIC平均800点
- 営業は3千人、ローカル&中堅以下を強化
- マーティン就任後「ガバガバ辞めて行きました」
- 株主にはいい会社だが、社員にとってはダメな会社になった
- 「内定者アドバイザー」が語る実情
- 研修は充実している
- 身につくのはリーダーシップ、コミュニケーション、プレゼン…
- 「IBMはツラそう、キツそう」というイメージ
- 「出世したい人」はほとんどいない
- 借り上げ社宅制度廃止で賃金カット、引っ越しも
- 毎月ブレまくる給料、戦略製品にぶらさがるニンジン
- 売れないと手取り20万円台前半、売れれば100万円超
- 本給アップと昇格はPBCで
- LP(ローパフォーマー)→PIP→リソースアクションの流れ
- 目標80%未満が丸1年で「PBC3」つくと、クビ
- 入社2~3年目で割増退職金500万円
- 「予約がとれない店に行って並んで来い」と指示する上司
- 箱崎、サテライトオフィス、自宅で作業
- 有休「取りにくい雰囲気はない」が…

「アングロサクソンの手下」感
この番組は、7月1日放送「クローズアップ現代」。内容は、以下のとおりだった。
「世界170か国で事業を展開する、大手外資系企業。管理職、一般職を問わず、ほとんどの社員を成果で評価しています」としたうえで、こう続く。
企業向けのネットワークシステムの営業を担当する原寛世さん。原さんが求められている成果は、メガディールと呼ばれる、億単位の契約を複数とることです。原さんの会社では、出した成果によって、同じ年代の社員であっても、年収で2倍もの差がつくこともあるといいます。
出勤、退勤の時間も自由に選ぶことができる原さん。自宅で、家族との食事を終えると…。
「パパは仕事します」「いってらっしゃーい」
すぐに仕事です。夜9時からは、アメリカにいる上司との電話会議。(PCに向かって、電話会議をする。)
顧客との交渉の進み具合を、ほぼ毎日、報告するよう求められています。原さんが手掛けているのは、数か国にまたがる大掛かりなプロジェクト。日本の契約交渉だけが遅れていることを、上司に指摘されました。
「まだ(契約は)難しい」
「とにかく交渉して報告するように。世界の95%がうまく進んでいるのに5%が進んでいないのはおかしい」
「明日までに報告しないといけないですねぇ」
成果だけが求められる厳しい働き方。それでも原さんは、そこにやりがいを感じている、といいます。
「確かにビジネスの環境は非常に厳しいと思うんですけど、楽しむようにしようと心がけていて、あしたはもっとこういうふうに改善してみよう、という気持ちがパワーに変わっていると思います」
IBMとしては、グローバル規模のデカい仕事を、成果主義の環境で実践できることをアピールしたくて、この社員を選んでNHKに取材許可を出したのだろう。NHKもナレーションで「やりがいを感じている、といいます」などとフォローしていたが、その理由が「楽しむよう心掛ける」と自己啓発チックで痛々しい。
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海外から詰められる日本IBMの営業 |
映像は正直だ。確かに印象としては「アングロサクソンの手下」感を見せつけるものとなっていた。
現在の日本法人トップはドイツ人のマーティン・イェッター氏だが、米国企業なので資本はアングロサクソンがメイン。そのドイツ人も「手下」の1人に過ぎない。
グローバル志向の人はIBMに入社すべきでない
現役の営業社員によると、自宅からイントラにつないで自由に仕事ができる環境なのはその通り、数字のプレッシャーが強く成果主義で年収に差がつくのもその通り。
だが、海外の上司とのやりとりといった、外国籍の人たちとの国境をまたいだプロジェクトワークや、海外に赴任しての仕事は、ほとんど経験できないのが現実だという。日本IBMはグローバルIBMの“日本支店”として日本市場に製品やサービスを売り込むことを使命としているので、当然ではある。
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マーティン・イェッター社長のメッセージ(社内向けに四半期業績を伝える社内メール)。楽天と異なり、全て日本語。![]() |
さらに、2012年5月にマーティン氏が日本IBMの社長に就任してからは、従来の大企業向け偏重の営業体制を改め、むしろ地方支社を増やし、地場の中堅以下の企業をターゲットに、地域密着型のローカルビジネスを強化し始めた。
「グローバル志向の人には、『IBMに入社するのは間違いだ』と言いたい。実は、私もそうだったので…。営業職の同期(30歳前後)でも、海外駐在経験者は1人か2人だけ。海外には、ほぼ行けないと考えてよいです。SEやコンサルも含め、せいぜい出張ベースです」(若手営業)
営業職では、米・英・中・タイ・シンガポール等に一応、ブリッジ役(日本企業が海外展開する際に、IBM現地法人との橋渡し役をする)の「アサイニ―」が少数、駐在しているくらいだという。
「むしろ海外の案件になると、日本IBMの営業は、手を引きます。海外のIBMの数字になり、自分の数字には加算されないからです」(同)。活動のテリトリーが国別にしっかり決められているグローバル企業らしい構造なのだ。
国内からの電話会議も、確かに、「SaaS」(クラウド経由でモジュール的に必要なだけ提供されるソフトウェア)のソリューションを扱うため、エンジニアが海外の外国人の場合に、顧客からの問合せに対して、日本からコミュニケーションしなければならないことはある。だが、その程度だという。
突出した成果があれば、他国のIBMにコンバートされる例も、ないわけではない。別の若手営業社員も、その望みにかけた1人だ。「ある海外都市で働くポストに応募したことがありますが、経験不足が理由でダメでした。日本IBMに10年以上在籍し、バンド7以上に昇進してパフォーマンスが認められた人でないと、海外赴任は無理。日本の成功事例を持ったうえで行かないと、受け入れる側にとってのバリューがないからです」
ユニクロもノルマはキツいが、耐えて生き残れたら、いずれ海外でキャリアを積むチャンスは、確実に訪れる。「うちでは、同じようにキツい仕事でも、ユニクロのようなキャリアは望めないんです」(若手営業)。このように、外資系に入社すると、かえって海外で働くハードルが上がってしまうことはよくある。これは、一般化できるセオリーである。
新卒はTOEIC平均800点
その割に、新卒採用においては、全職種で「TOEIC600点以上」を応募条件に課してスクリーニングするなど、英語力は重視している。以下がその条件だ。
エントリーシート提出時に、以下のいずれかに該当する公式スコアを所持していること (2010年以降に実施された試験結果のみ有効)
TOEIC : 600以上TOEFL(PBT) : 507以上
TOEFL(CBT) : 180以上
TOEFL(iBT) : 64以上
IELTS : 5.5以上
英検 : 準1級以上
「今年の新卒入社組は、コンサルタント職は全員が留学経験アリで、営業職の新人も
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日本IBMの営業組織
バンド6社員の給与明細(通勤費半年分込み)。コミッション次第では、このくらいになる月も。
日本IBMのキャリアパスと報酬水準
現在営業職に支給されているPCは、もちろん元IBM製品のThinkPad。モデルは画像参照。
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"IBMの営業は、大学院代わりに給料を貰いながらITビジネスの基礎をOJTで学べる場所――そう割り切って考えれば、よい仕事"
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読者コメント
自分の家のガレージに出荷してばれてクビになった営業とかいるのが笑える。)どっちにしろアメリカ様に上納するための属国、拡販代理店が日本IBMです。業界水準以上の給与と知名度だけがよりどころで働きがいはありません。会社の犬になりきったやつだけが出世する。
顧客には全くメリットないですが、押し込まないと処刑のリスクが高まるので営業は死に物狂いで売りました。組織ぐるみで関連会社を挟んで出荷させたりして(もちろんコンプラ違反ですが、執行役員のクビもかかっているので、事業部単位でコンプラ違反をしながら数字を挙げるのがIBM流。
本当に奴隷ですよ。そこら辺のボールペンとか椅子と一緒で社員はただのコストです。法規制に触れなければコストカットのために賞与支払い遅延とか平気でやります。利益の数字を出すために。
マーティンの数字を上げるために、1年後のストレージとかの更改案件の前倒しの命令が当時は全社に下りました。
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