「ほぼ単一民族」の強みを残せ
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ショッピングセンターの入り口でセンサーを通るのは最初は違和感があった |
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- 空港は2重チェックで厳格
- 水と安全はタダがいい
原因は、1年前の夏、まさにイスタンブルの空港に近い市内西部地区の繁華街で、ごみ箱に仕掛けられた爆弾2発が連続して爆発し、市民18人が死亡していることにある。犯人は、クルド人の分離独立を目指す武装組織、クルド労働者党(PKK)のメンバーだった。イスタンブールでは2003年11月にも、英総領事館などを標的とした同時自爆テロで60人以上が死亡している。
外務省の海外安全ホームページでも、「PKKはいまだ弱体化しておらず、都市部での無差別爆弾テロ事件や北イラクに近い南東部においてトルコ軍や治安当局に対する攻撃を実行しています」とある(アップデートは2008年12月末)。
さすがに街中で18人も無差別に殺されて、いまだ犯行組織が弱体化していないとなると、このくらいの警戒は当然だろう(東京の地下鉄サリン事件は死亡者12人で、組織は事実上解体された)。
空港は2重チェックで厳格
ホテルやショッピングセンターの入り口はそれほど厳格なものではないが、空港は異常だった。トロイ(チャナッカレ)へ飛ぶ国内線では、まず空港の入り口で、セキュリティーチェック。日本だったら乗る人だけが受けるチェックを、見送りの人なども含め空港に入る人全員が受けるのだから、乗る人と乗らない人が1:1としても、通常の空港の3倍はチェックにコストをかけている。空港はセンサーだらけである。
そして搭乗の直前に、もう1回、同じことをやる。ほとんど重複業務じゃないかと思うのだが、仕方がない。しかも、より厳しめだ。
入り口と同じかと思っていたら、「電子機器には厳しいんだ」などといいながら、勝手にPCのカバーまではずされた。外せと言われるならまだしも、勝手に外して扱いが雑だから頭に来る。カバーのポケットに入っていた変換プラグを、床に投げ出された。まったく客だという意識はない。
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バザールはノーチェックで出入り自由のため、テロのリスクは高めではある![]() |
ゲートのセンサーは異様に精巧にできており、何度やってもピーピー鳴る。両手をあげて、動くな、と言われ、全身チェックだ。完全に犯人扱いである。もう二度とトルコなんか行ってやるもんか、と思った。
飛行機だけは落とさせないぞ、という当局の意気込みを感じた。米国に行った人から聞く話ではあるが、トルコがこんなになっているとは思わなかった。このセキュリティー強化にかかる金銭的、精神的なコストはとてつもなく大きく、しかも、トルコ国民だけでなく外国からの旅行者にも、皆に降りかかる。
水と安全はタダがいい
その点、日本はとんでもなく平和だ。「ほぼ単一民族」「海に囲まれた島国」という民族的、地政学的なラッキーな出自は、実はものすごいアドバンテージである。目には見えない「平和の配当」を常時、享受していることになる。
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ホテルの入り口でも荷物をセンサーに通し、自分も通る。右側の壁には青い目玉「ナザーレ・ボンチュウ」(魔除け)が張ってある。![]() |
アイヌ民族が「北海道はもともと俺達のものだ」と民族自決を言い出してクルド人のように武装蜂起したり、無差別テロを起こす可能性も、ほとんどない。私は右翼でも保守主義でもないが、やはり「ほぼ単一民族」というのは、せっかくの日本の強みなのだから、活かすべきだ。
トルコはクルド人移民に寛容だった結果、PKKを生み出す一因となった。移民が何割にもなった場合のコスト増大リスクがどれほど大きいか、よく考えたほうがよい。日本は「ほぼ単」であることで効率がよく、競争力の源泉になっていると思う。
日本でテロをやろうと思ったら、新幹線などノーチェックだから特に簡単だし、東京駅や渋谷、新宿など多数の人が集まる場所で、やる気満々な犯罪者のテロ実行を防ぐのは不可能だ。ひとたび起こったら、その警備にかかるコストは計り知れない。だから、そもそもテロの動機が生まれない状態にしておくことが重要だ。
日本では水と安全はタダだ、とよく言われてきた。確かにトルコでも飲み水は有料で、街中ならどこでも簡単に手に入るが、ペットボトル500CC1本で、0.5リラ(31円)が相場だ。公園で蛇口をひねれば飲める水がタダで出てくる日本はすばらしい。
日本にいると空気のように「あって当たり前」になってしまっているが、海外に出ると、こうした日本の優れた点について、改めて実感するのである。日本の強みは、残さなければいけない。
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読者コメント
移民リスクは実はかなり高いということ。今ではヨーロッパでも移民との衝突が多いようですし。だからシンガポール首相の日本への発言はあまりに単純すぎてダメダメです。
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