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ANA地上職、「辞めたがってる人9割」な職場

情報提供
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 C
 働く生活者にとっての
 ワーストカンパニー
   【使い捨て型】
(仕事1.5、生活2.0、価1.0)
 企業内で職種による「選択と集中」が進むなか、全日本空輸(ANA)で2008年4月入社から始まったのが、地上職の契約社員化だった。CAと同じく、最初の3年間は時給制の契約社員として雇用し、従来より年収を25%カット。4年目まで辞めなかった人だけを正社員にする、というもの。総人件費を削減して総合職が生き残るために、別労組のパイロットは手がつけられないため、同じ労組に加盟する地上職を切り捨てた格好だ。なお、倒産したJALは既に地上職の新規雇用を本体から切り離し済み。総合職が自らの既得権保持のため周辺職種だけを職務給化していく流れは止まりそうにない。
Digest
  • ANA地上職「カウンターの日」の1日
  • 重量オーバーはゴネればOK
  • 激しいパイロット争奪戦
  • 足を引きずるくらい疲れ、足の形が変形
  • コネ入社の実態
  • 同一労働三重賃金
  • 研修は語学すらなし
  • 正社員は年齢給が一番インパクト大
  • 3年目までの年収を25%もカットするえげつなさ
  • 国内の飛行機は乗り放題


「辞めたがってる人が9割だと思う」。一見、華やかで楽しそうに見える空港での仕事だが、地上職を数年務めている若手社員は、これを真っ向から否定する。「ぜんぜん華やかな仕事なんかじゃないです」

実際の現場はずいぶんと様相が異なるようだ。辞めたい理由は何なのか。「体力的にも精神的にもキツいのに、頑張って認定試験に受かってグレード(仕事の役割上のランク)が上がっても、責任だけ重くなって給料は変わらないんです」。これは年齢給を何よりも重視する年功序列型賃金を維持しているためだ。

その結果、仕事を辞めるために、みんなプロポーズを待っている状態なのだとか。

具体的には、何がキツいのか。1日の流れを追って見よう。なお、会社側の“大本営発表”はこちらである。

ANA地上職「カウンターの日」の1日

ANAの地上職は、日によって大きく「カウンターの日」と「ゲートの日」に分かれる(JALは専任制で、カウンターの人はずーっとカウンター、ゲートの人はずーっとゲート業務が続く)。

5:00 今日は早番で5時起き。化粧を15分。ブルーな気分。とにかく、会社に着くまでが一番大変。カウンターに立つまでが勝負だ。

6:00 女性寮を出る。空港までは4駅ほどの電車通勤。私服で通勤して、まず制服に着替える。お局さま扱いとなる30歳を過ぎると制服も似合わなくなるが、まだまだ大丈夫。

7:20 本日の集合時刻。便の設定によって、混雑具合に合わせて、30分くらいずつ出社時刻をずらしている。6:30出勤の場合はタクシーが迎えに来るので、乗り込めばいいからラクだ。

早朝出社組30人ほどが集まる。30人中、子会社所属の人が8割を占める。やる仕事は同じだが給与が低い人たちなので、「待遇の話はしないように」と人事部から言われている。

まず、伝達事項のブリーフィング。新人が読み上げる。内容は「台風が出ている」「盆暮れで今日は混雑している」「オーバーブッキングはこの便だから他社便に振ってください」など。5分以内に終わる。

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ユニフォーム着用時の服装規定。日焼け禁止、不適切なメガネ、不適切な腕時計など

服装規定(記事末尾でPDFダウンロード可)は一応あるが、近年は子会社比率も高まり、乱れつつある。髪を染めているくらいでは容認されている。日焼けし過ぎで怒られて現場に出られない人がたまにいる。

7:30 チェックインカウンターでスタンバイ。カウンターが一番簡単な仕事なので、入社数年目までのジュニアが担当する。

カウンターの中のほうにいる人は「コントローラー」と呼ばれ、難易度が高いため入社4~5年目から。担当の便を持ち、その座席調整の責任者となる。カウンター周辺をウロウロしてる人はさらにシニアで、ジュニアに呼ばれてヘルプする。

カウンター業務開始。会社に着くまでが一番ブルーで、ブリーフィングまではテンションが低く、ため息をつきながらカウンターにつく感じ。カウンターにやってくるまでが勝負で、来てしまえば、あとは次々とやってくる仕事をさばくだけ。頭の中では、お休みの日のことしか考えていない。

数年前まで4日勤務で2日休みだったが、今では子会社に合わせて、だいたい5日働いて2日休みを繰り返すシフトになった。子会社はANA本体よりも年20日間も休みが少なくてかわいそう。総合職とパイロットが高収入を維持するために国交省の黙認のもと、CAと地上職の非正規社員化、子会社化が進められてきた航空業界。

そうかといって、かつて運輸大臣時代にCAの非正規社員化に異論を唱えた亀井静香議員(現金融大臣)を支持する者が多いわけでもなく、政治には多くの人が興味なし。航空行政は政治闘争なのだが…。

重量オーバーはゴネればOK

8:00 客(おばちゃん)が持ち込み荷物の重量オーバーでワーワー騒がしい。若手の自分が何を言っても聞いてくれないので、シニアを呼んでバトンタッチ。

機内持込は10キロまでだが、少しくらい重量オーバーでも、ゴネればOKなのが実態。けっきょく、重量オーバーのまま載せた。

一方、預かり荷物のほうはもっと柔軟。米国便は23キロ×2まで、それ以外は計20キロまでとなっているが、法的な規制があるわけでもなく、「ビジネス30キロ、ファースト40キロ、さらにお得意様は40キロまでOK、ダイヤモンド会員になればさらにOK」といったように、航空会社独自の裁量次第で、どうにでもできるから、ゴネる客は多い。

9:00 今度は、しつこく中国語でしゃべってくる女性がいて、手に負えないので、中国語ができるスタッフにヘルプを頼む。英語と日本語以外では対応できる必要はない。

地上職は、なんと入社試験で英語力すら問われない。「TOEIC300点でも受かっている人がいる」。使う英語は限られているのですぐに慣れ、なんとか会話できるようになる。接客に適していればOKなので、採用では語学よりも容姿や笑顔のほうがはるかに重視される。

10:00 「××ちゃん、ちょっと」。入社5年目くらいの責任者に呼びだされ説教をくらう。なお、上司は部下をちゃん付け。下→上はさんづけ。

「昨日チェックインした○○さん、覚えてる?あの人、インアド(入国拒否)になったから」(※渡航書類を間違えるとこうなる)

「すみません」

「何やってんのよ!」

体育会系で、女が男化している職場。厳しく怒られ、トイレで泣く。

 戻ってくると、

「そんな顔でお客様の前に出る気?今日は下がっていいから!」

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20代半ばの特定地上職給与明細。「本給A」が年齢給で、これは総合職もパイロットも正社員は全員共通。

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miya19722015/01/05 15:33

うん。確かに。

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shaketoba2011/10/08 06:54

久々にひどい評価を見たなと思ったらNHだったでござる。これまで以上にグランドの人には優しくしよう。

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読者コメント

2010/09/16 03:09
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