My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

やはり大問題を起こしたトヨタ-2 メディア対応ができない田舎企業

情報提供
ReportsIMG_J20100403235714.jpg
韓国語版と日本語版。韓国版はハードカバーで一回り大きく厚くなった。
撮影:『JPNews
 単行本で大きく取り上げた国内のリコール問題は、その後、何の反省もないまま、生産台数増とともにグローバル規模に拡大された。2009年8月には、カリフォルニア州で警官と家族ら4人が乗った「レクサスES350」が暴走、時速190キロで他車と衝突して全員が死亡するなど、悲惨な事故が続発。アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かったのが原因と考えられ、トヨタは該当する車種をリコールしたうえで、生産・販売を停止した。この事態に及んでもトヨタは一切の海外メディアからの取材を断り、国際的な非難を浴びている。
Digest
  • トヨタ車で58人死亡、苦情3300件、リコール率142%!
  • 日韓の驚くべき反応の差
  • メディア対応ができない田舎企業
  • 熊本の事件の処理が成功体験になっている

トヨタ車で58人死亡、苦情3300件、リコール率142%!

トヨタ車の急加速が原因とみられる事故での、米国道路交通安全局(NHTSA)に報告された死亡者数は58人に達し、急加速に関する苦情は3300件を突破(3月3日付『共同通信』より)。豊田章男社長が議会に呼び出され謝罪する事態に至ったのはご存知の通りだ。

トヨタ自動車の発表によると、2月2日時点で、2009年秋に発覚したフロアマット問題と、2010年1月以降に公表したアクセルペダルの不具合によるリコール対象車数について、それぞれ575万台、445万台となり、延べ1020万台(重複を除くと810万台)にも達した。同時期、つまり2010年3月期のトヨタグループ世界販売台数見通し(718万台)を大幅に上回り、実にリコール率142%にもなる。

既に国内でも100%超を2年連続で記録し、2004~2006年の平均でも「欠陥車率99%」に達していたため、なんら驚くことではない。トヨタ自身も、なぜこれほど米国で騒がれるのか、というのが正直なところではないか。それは、対応が後手後手に回って被害者を拡大させ、現在、賠償総額数千億円~1兆円ともいわれる集団訴訟が検討されている、この間の経緯からも明白だ。豊田章男社長自身、会見で「後手後手と映ったのは残念」などと述べ、世間とトヨタの認識のずれを認めている(2月10日)。


3社続けての取材対応。トヨタが完全取材拒否ということもあり、我々が事件を解説。

日韓の驚くべき反応の差

残念ながら、これが人命(社員やユーザ)や品質に対するトヨタ側の正直な感覚である。トヨタは、内野さんや若月さんをはじめとする現場の悲鳴や我々の指摘など見向きもせず、そのまま世界規模に問題を拡大させた。そして死亡事故の多発という、より悲惨な結果をともなう形で、痛いしっぺ返しを受けた。

ReportsIMG_I20100404002257.jpg
KBSの取材を受ける
 米国でのリコール問題の拡大を受け、その予兆を2年前から出版していた本書(単行本『トヨタの闇』)に注目が集まり、英国の老舗新聞『TIMES』、仏の時事週刊誌『フィガロ』をはじめ、各国メディアの記者が我々のところに取材にやってきた。
(日本のメディアは自らの「報道しなかった罪」を認識しているので、1社もやってこなかった)。

とりわけ、これまでトヨタ生産システムを手本とし、トヨタの合理主義経営を目標としてきたお隣の韓国では注目度が高く、2010年2月下旬に翻訳版が発売された。日本発で国際的に通用するジャーナリズムコンテンツを輸出した例は近年、他に例がない。


本の帯を翻訳してもらった文言は、下記のとおりだ。

(表)
トヨタの暗い未来を正確に予言した本!
それでは我が企業はどうなのか?
トヨタの闇からその答えを模索する

(裏)
トヨタは本当の優良企業なのか?
トヨタが変われば日本が変わる?
一般人の眼にはキャッチできないトヨタの影を通じて、私たちは果たして何を学べるのか?

著者インタビューにやってきたメディアは、テレビ『KBS』『MBC』、新聞『韓国日報』『ソウル新聞』、経済誌『エコノミスト』、ニュースサイト『JPNews』、さらに韓国で一番有名な時事ラジオ番組だという『ソン・ソッヒの視線集中』。


共著の林さんと

民放最大手のMBCは、取材チームを2週間も日本に派遣。愛知県だけでなく、熊本での重傷事故の被害者を探しに現地で聞き込みまで行い、『カムリ』開発者の過労死事件が発生した東富士研究所(静岡県裾野市)にも取材に赴くなど、徹底取材によるドキュメンタリー番組を作るのだという。

トヨタは日本の会社なのに、日本のメディアによる調査報道はほぼゼロで、韓国メディアのほうが明らかに熱が入っていることの意味は重大だ。

KBS(韓国放送公社)は日本におけるNHK的存在で、『NHKスペシャル』と同じく看板番組の『KBSスペシャル』でトヨタ問題の特集を組む、ということでインタビューを受けた。日本で『Nスペ』がトヨタ問題を調査報道することはありえないし、広告収入比率が高い民放や新聞はさらに無理だ。韓国メディアの人たちにトヨタ報道をどう見ているか聞くと、「日本に比べ、韓国の記者のほうがジャーナズムで戦う人が多い、という印象がある」と話していた。

ReportsIMG_H20100404002257.jpg
真ん中が翻訳者の1人で韓国オーマイニュース記者の朴哲鉉氏

韓国版『トヨタの闇』翻訳者で、日韓双方のマスコミ事情に詳しい『JPNews』朴哲鉉記者が解説する。「日本でのトヨタは、韓国でのサムスン電子の扱いと似ている。それでも、韓国のジャーナリストは新聞には書けなくても、ブログなどではサムスンと分かるように書いてしまいます。日本では、直嶋正行・経済産業大臣の秘書2人がトヨタから派遣されたトヨタの正社員で、トヨタ労組専従員として年間で計1200万円超の給与提供まで受けていても、マスコミは何も書かない。韓国で大臣の秘書の給与を自動車メーカーやその労組が出していたことが分かったら、大スキャンダル間違いなしです」

メディア対応ができない田舎企業

韓国メディアは、トヨタ自動車に対しても取材を申し込んだが、断られたという。「この事態に及んでも、トヨタは一切、取材を受けないんです。英国BBCの記者も、かなり怒っていましたよ。海外メディアの取材を、全て受けない姿勢なんです。当然、トヨタの言い分は伝えられないのでトヨタにとって不利な番組になるのに、そういうことも分かっていないようです」(KBS記者)

企業体質というのは、危機対応の場面で如実に姿を現すものだ。メディア対応の仕方で、トヨタが日本社会や世界との関係を断ちたいのか、それとも良き企業市民として関係を保ちたいのかが分かる。残念ながらトヨタの対応は、まるで“逃げる公害企業”なのだ。

ReportsIMG_G20100404015047.jpg
『韓国日報』記事。日曜の午前がいいというので、脳が寝てました…

仏『フィガロ』(※フィガロは日本ではファッション誌だが仏現地では時事週刊誌である)の取材チームも困っていた。

「フランスのトヨタ現地法人にもお願いしたのですが、会社も労組も、全然ご協力いただけない

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り1,116字/全文3,674字
公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

.2010/04/22 15:48
苦悩する将軍様2010/04/09 23:04
ロケット団2010/04/08 01:29
田舎企業とは、、2010/04/08 00:29
m2010/04/07 07:01
やはり2010/04/04 09:41
p2010/04/04 01:51
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約3,900字のうち約1,200字が
有料会員登録をご希望のかたは、 ここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい (無料)

企画「マスコミが書けないトヨタ」トップページへ