KDDIケータイ基地局公害訴訟 原告に聞く健康被害の実態
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延岡市大貫の住民が撤去を求めているKDDIの携帯電話・基地局(アンテナ)。強引な設置に歯止めがかからなくなり、各地でトラブルが発生している。 |
原告は、30人の住民。これを26人の弁護士がサポートする。この中には水俣病やじん肺訴訟、薬害スモン、薬害HIV訴訟などの公害や薬害関連の裁判にかかわってきた著名な弁護士たちの名もある。
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延岡大貫訴訟の訴状。26人の弁護士が名を連ねている。![]() |
新世代の公害といわれる携帯電話・基地局問題の訴訟のうち、延岡市のケースは、単に規模が最大級というだけではなくて、大企業と大弁護団の対決でもある。
さらにこの訴訟は健康被害を理由として、基地局の撤去を求める全国初の訴訟だ。これまで起こされた基地局関係の裁判は、将来的に健康被害を受けるリスクがあることを理由に提訴されたが、延岡の裁判は住民が実質的に受けている健康被害を前面に押し出したものである。
提訴からまもなく半年になる4月24日、わたしは延岡市の原告団を取材した。
空路、宮崎空港を経てJRの電車で延岡駅へ到着すると、原告団長の岡田澄太さんが出迎えてくれた。岡田さんとは、2週間ほど前に日弁連が東京で主催した電磁波問題のシンポジウムで面識を得ていた。
しかし、延岡市で起きている基地局問題については、岡田さんと知り合いになる前から注目していた。2007年12月16日付けの『朝日新聞』に掲載された次の記事が糸口となっていた。
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延岡市のケースに見るように、自覚症状が耳鳴りや頭痛、肩こり、それに不眠という程度であれば、不幸中の幸いだが、海外で行われた疫学調査では、携帯電話基地局から放射される電磁波とガンの関係も指摘されている。
たとえば有名な例としては、2004年にイスラエルで行われた調査によれば、基地局周辺におけるガンの発生率は、通常の4.15倍だった。女性に限れば10.5倍という驚異的な結果が発表されている。
◇極めてあまい日本の規制値携帯電話の基地局からは、高周波のマイクロ波と呼ばれる電磁波が放射されている。厳密にいえば、現在の第3世代携帯電話では、マイクロ波に低周波を人工的に組み合わせた「変調電磁波」が放出されている。このような電磁波は、自然界には存在しない。それゆえにかねてから安全性が疑問視されてきた経緯がある。
もちろん電話会社は政府が定めた電波防護指針に従って基地局を設置している。それゆえに基地局の設置が法にふれるわけではない。
しかし、実際問題として電波防護指針を守っていても、基地局が原因と推測し得る健康被害が日本のあちこちで報告されるようになってきた。
当然、電波防護指針が適正なものかどうかという疑問があるわけだが、わたしが取材した限りでは、次の2つの大きな問題点があるようだ。まず、第1に電波防護指針を定めるに際して採用されたデータが1980年代の古いものである点である。
従って第3世代携帯電話などで使われている「変調電磁波」に関するデータは含まれていない。
第2に諸外国に比べて10倍から100倍の緩やかな基準になっていることである。オーストリア・ザルツブルグ州の勧告値と比較すると、1000万倍の隔たりがある。ちなみに各国の規制値は次のようになっている。日本の規制値は極めてあまい。
国/市 | 規制値 |
---|---|
ザルツブルグ(オーストリア) | 0,0001μW(マイクロワット) |
パリ | 1.0μW |
モスクワ | 2.0μW |
ブリュッセル | 2.0μW |
ロシア | 2.4μW |
スイス | 4.0μW |
中国 | 6.6μW |
イタリア・ポーランド | 10μW |
オーストラリア・ニュージーランド | 200μW |
日本 | 600μW |
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携帯電話の基地局。(上・中)鉄塔の上に設置したもの。(下)マンションの屋上に設置したもの。![]() |
繰り返しになるが、日本の電話会社が電波防護指針を守っていないというのではない。事実、電話会社は住民から基地局の安全性を問われると、口をそろえて電波防護指針を厳守していることを強調する。
が、公害に対する取り組みは、電波防護指針を守っているか否かという点よりも、実質的に健康被害が出ている事実から出発しなければならない。
◇わたしの頭上に基地局がわたしが初めて基地局問題と向き合ったのは、2005年のことだった。わたしが住んでいる住居(9階建てビルの9階)のまさに真上にKDDIとNTTドコモが、基地局を設置する話をマンションの管理組合に打診してきたのが引き金だった
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「中継塔問題を考える九州ネットワーク」の会報。「延岡訴訟提訴に当たって」と題する岡田原告団長の決意文が掲載されている。
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読者コメント
ザルツブルグの値、この記事時点で廃止されているうえに、向こうですら根拠がないと批判があるのにどうしてこれを絶対視するんだろうなあ。
日本の基準はとにかく何でもかんでも甘い!甘すぎる!
携帯基地局がマンションに経ってから、動悸がたびたび起きるようになった。蕁麻疹もできる。免疫力が確実に落ちている。外に出ていると出ない症状だ。家に帰ってゆっくりしようと思うと出てくる症状。基地局以外に原因が考えられない理由はそこにある。
今、夜中の2時過ぎですが、強い頭痛でどうにかなりそうです!!
絶対にNTTはじめ 倫理を持たない通信各社を許さない
延岡の裁判が負けたと 今日知りました
バカじゃないか?日本の司法は?
裁判官も電波塔の被害を受けないとわからないらしいな、、
変な国になってるな日本は、、
私の場所は目の前に NTT その先にKDDI
また先にSoftBankです つまり電波塔が三角形を作っています、
毎日、暴力的な耳鳴り、 頭痛 携帯会社の社員もそんな状況の中にすんで、同じ健康被害を受けてみろよ!!
一日も我慢できないぞ!!
人に苦痛を与えてCMとは全然ちがうな。
平成26年5月
二年前に近くに電波塔が立ち 耳鳴りから頭痛
ひどくなり 近頃は目がかすみます
いろんな機関に出向き説明いたしましたが
あまり進みません
病院にも調べにいきましたが 医者は電波塔が原因とは
言えないと いいます
大学病院に紹介状をもらっても 電話してみると
断られました、
なんだこれ? 長年住んでる家を引っ越さないとならないのか?
やはりあるんですね。私が住む地区でも同じ症状で苦しんでいます。何とかしてください。
運用されている電波は全て変調されていますよ。G3で採用されている位相偏移変調に低周波を組み合わせる機能はないでしょう。空想科学で記事にしてませんか?
勧告値を規制値として表示するのは修正すべき
延岡の裁判がTV、新聞で報道されないこの異常さよ!
全国民が知るべき事実です。
規制強化しないといけない 公害です 基地局は
電磁波さんへ。ドコモもソフトバンクも住民とトラブルを起こした事があります。また、UQコミュニケーションズに至っては、先日、わたしの自宅から150メートルの地点に基地局を設置するという「挑戦状」を突きつけました。
他の携帯会社も訴訟があるのでは!?
KDDIの基地局だけが問題があるとは思えないのだが。
身勝手な基地局設置は、迷惑行為。ぼくの周りにも被害者がいます。
これは受動喫煙の被害と同じだね。規制すべき。規制値が600マイクロワットとは、お笑いだ。
KDDIがこんなことしてるなんて知らなかった。携帯もauを使っているが他社に乗り換えようと思う
わたしが考える最良の対策は、健康被害に対して集団で損害賠償訴訟を起こすことです。
電磁波が有害なのは知っていたが、耳鳴りや鼻血まで出るのは、凄い事です。
ミツバチが可笑しくなるのが、分かるような気がします。
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