携帯基地局の情報不開示問題、住民の命より企業利益を優先する総務省
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基地局のアンテナには、カモフラージュを目的とした「忍者アンテナ」が存在する。写真のアンテナ(ソフトバンクモバイル)も、「忍者アンテナ」の可能性が高い。 |
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- 国民より企業の利益を優先
街のあちこちに携帯電話の基地局が次々と出現している。工事用のシートが除かれるとビルの上に「牙」のようなアンテナが現れたとか、テレビ画面が乱れはじめたので不思議に思っていると、すぐ近くのビルに基地局のアンテナが立っていた、というような話が尽きない。
今年の6月16日付け『日経新聞』の1面トップには、電話・通信会社が年末までに基地局を大幅に増設、わずか1年のあいだに1.5倍に激増させる予定だと報じる記事が掲載されている。
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前年末比で10万局であるから、2010年度は1日に273局が設置される計算になる。1時間で11局。とてつもない数字だ。日本がマイクロ波の汚染地帯になる危険性がある。実際、基地局設置をめぐるトラブルも多発し、わたしが取材する機会も増えている。
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携帯電話会社の社員が持ち歩いている総務省制作のパンフ。マイクロ波の安全を宣言するための有力な「道具」になっている。![]() |
ところが取材者にとっても、住民にとっても不都合なことに、総務省とその管轄下にある総合通信局(各地方に設置)が保管している基地局に関するデータは、そのほとんどが公開の対象にはなっていない。
通常、役所が保管し、しかも公害に関するデータは、情報公開の対象になるはずだが、非公開であることを、取材を通じて知った。これまで何度も情報を公開するよう求めたが、そのたびに拒否されてきた。
そのため、ビルの屋上に基地局のアンテナが立っていても、屋上へ立ち入る権限を持たない者は、それがどの電話会社のものなのかすら分からない。総務省に問い合わせても、情報は公開されない。
さらに電波密度がどの程度なのか、あるいは電波がどの方向に放射されているのかも非公開の状態に置かれている。かりに基地局の周波数など仕様が変更になったとしても、その中身を知ることはできない。かくて住民は正体不明のマイクロ波を浴び続けることになる。
わたしはこれまで何度も総務省や総合通信局に、基地局に関する問い合わせを行ってきたが、取材を通じて明らかになったのは、基地局問題に対処する彼らの企業寄りのスタンスだけである。たとえば次の質問に対する回答。
‐‐電話会社が電波防護指針を守っているか否かを、どれぐらいの頻度で点検していますか?
「5年に1度です」
電波防護指針はもともと「ザル法」であるから、点検そのものがナンセンスかも知れない。それを知っているから、5年に1度しか「点検」しないのではないか。
ちなみにザツルブルグ市(オーストリア)の電波防護基準が0.0001μW/cm(目標値)、パリが1.0μW/cmに対して、日本は、なんと600μW/cmである。(900メガヘルツの基地局の場合)。事実上、野放し状態である。
さらに、次の問に対する総務省の回答。
‐‐基地局のアンテナからどれぐらいの距離を置けば安全ですか。
「1メートルです
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『行政機関の保有する情報の公開に関する法律』によると、人の生命を保護するための情報は公開しなければならない。
ドコモ(上)とKDDI(下)の株主情報。株主に対しては電磁波による健康被害のリスクを否定していない。
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読者コメント
たしか、長野県のどこかの市町村で基地局情報の公開を始めたが、1年かそこらで、情報開示をやめた という事例も
あったようです。詳細はわかりません。
強力な放送用電波が怖いことをなぜマスコミは報道しない?
千倍、万倍、百万倍弱い携帯基地局の話しかしないのは馬鹿じゃないの?
放送局の回し者?
私の記憶では、ドイツでも同様に一般には公開していないはずです。
ドイツでは各自治体の担当窓口に限定して、地域の携帯基地局の情報が調べられるようなシステムになっていたと思います。一度、ドイツでの状況を取材されてはいかが?
まずは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話3社の全役員の自宅敷地内に設置して
自ら安全性を確認して貰わないとですよね。
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