「妊娠中のケータイ使用で子どもの行動障害1.4倍」の研究結果、報道も調査もない日本
イギリスの大衆紙「The Sun」の12月7日に掲載された記事の一部 |
- Digest
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- イギリスでは新聞報道に対し厚生省が解説記事を掲載
- 日本でも子どもの3%程度に行動障害
- 妊娠中の母親の使用と出産後の子どもの使用リスクは1.5倍に
- 環境省の10万人の子ども調査では電磁波の調査予定なし
- 総務省と環境省が協力して調査すべき
イギリスでは新聞報道に対し厚生省が解説記事を掲載
今回の研究は、デンマーク国家バースコホート(DNBC)という10万人の妊婦を対象にした大規模な追跡調査の一部として実施されたもの。その結果は、イギリスの一流医学専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」にも掲載されている。
今回も、当然のごとく日本では大手マスコミによる報道はない。インターネットサイトでは、主にフランスのAFP通信の翻訳記事を元に、ブログに掲載されたりツイッターでつぶやかれたりしているだけ。
もちろん、信憑性の低い情報ではなく、正式な研究論文が元になっている。その証拠に、日本でも医師向けの専門情報サイトでは、この調査結果が掲載されている。
英語圏のマスコミ報道をみると、イギリスでは大衆紙の『ザ・サン』紙や、より格上の『デイリー・メール』紙などでも取り上げられている。
注目すべきは、国の保健省が管理しているHPにおいても、今回の研究についての解説記事が掲載されていることだ。
英国保健省は、これまでも携帯電話の子ども使用を必要最小限にすることを推奨している。今回の調査結果については、他の研究者の批判点についても紹介し、この研究だけでは有害性の証明としては不十分としながらも、従来どおり予防的に子どもの使用は最小限に、と結論づけている。
国の態度として、このように予防的に曝露を最小限にするように推奨しておいて、あらたな研究結果について吟味し、分かりやすく情報伝達しよう、という態度には好感が持てる。
実は、イギリスでは携帯電話以外にも食品添加物の一部の合成着色料が子どもの発達障害と関連がある、という研究結果を元に、食品メーカーに対してそれらの食品添加物の使用自粛を求めたこともある。
日本でも子どもの3%程度に行動障害
日本とアメリカでの子どもの発達障害の増加。環境省エコチル調査資料より抜粋 |
今回問題とされている行動障害とは、近年子どもたちの間で増えてきている軽度の神経発達障害の一つで、注意欠陥多動症障害(ADHD)などの症状をさす。
発達障害というと、従来は知能の遅れなどを伴うというイメージがもたれてきたが、近年、比較的軽度な発達障害があることが問題とされている。
ADHDとは、そうした発達障害の一つでこの先は会員限定です。
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論文のサマリーの翻訳
リスクの一覧。論文の表から抜粋し翻訳したもの。
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“妊娠中の携帯電話の電磁波によって、子どもの行動障害のリスクが1.4倍になる可能性を示す研究結果が、デンマークにおける10万人の妊婦を対象とした国家プロジェクトによって示された。”
またぞろ出てきた携帯電話の電磁波と脳障害との因果関係にまつわる疫学調査研究。何をどこまで信用したらよいのか判断が非常に難しい問題。
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