裁判所もグルになった新聞偽装部数 「押し紙」率70%の販売店も
部数至上主義の下では、受験生までが新聞拡販の格好のターゲットになる。 |
- Digest
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- 販売残酷物語
- 検証1-「押し紙」を全面否定
- 搬入部数の約7割が「押し紙」
- 読売の宮本専務が「押し紙」を否定
- 検証2-虚偽報告という言いがかり
- 朝日も虚偽報告を主張
- 補助金と折込チラシ
- 日販協は「押し紙」を断ってきた
- 検証3-店主に対する人格攻撃
- 広告主も「押し紙」の被害者
販売残酷物語
朝日新聞の「押し紙」。岡山市内のASAで撮影。 |
去る5月16日、ASA宮崎大塚の元店主・北川朋広さんが2009年9年に朝日新聞社に対して約6500万円の賠償を求めて起こした「押し紙」裁判の証拠調べ(本人尋問と証人尋問)が、宮崎地裁で行われた。北川さんは、裁判長の尋問に対して、自らが陥った「残酷物語」を法廷で打ち明けた。
裁判長:あなたが今回この裁判の中で被告朝日新聞社に対して何を一番訴えたいんですか。言い方が悪いですが、何があなたに対して気に入らないことがあって、この裁判を起こすことになったんですか。北川:僕の中で朝日新聞に対しての思いというのは人一倍だったと思います。私の中ではSOSを出していたつもりなんですが、それをくみ取ってもらえず、それを最後に念書という形で、逆に、ええっという形で幕切りを引かされたんで。また、それと同時に、家族ともばらばらになりましたんで、そういった思いと、それと父が販売店をやってましたので、そういった思いです。
北川さんは朝日新聞社に対して深い親近感を持っていた。と、いうのも父親がASAの経営者だった関係で、少年のころから朝日新聞を配達して育ったからだ。
ところが「押し紙」(偽装部数)により自店の経営が悪化すると朝日の販売局員との間に亀裂が生じた。本人の弁によると、「押し紙」を排除するか、補助金を増額してくれるように繰り返し要望したが、聞き入れてもらえなかった。
そこで北川さんは、「新聞販売黒書」を主宰するわたしに、どう対処すべきかを相談してきた。だが、わたしの介入を知った朝日は、北川さんにわたしとの絶縁を迫った。事実、北川さんは「黒薮との関係は一切断ちます」等の念書を提出している。朝日がそれを強制した証拠はないが、書かざるを得ない状態に追い込まれたことは疑いない。
法廷における「家族ともばらばらになりました」という証言については、プライバシーの問題があるので詳しくは述べないが、新聞業界では「押し紙」が原因で生じた悲劇は珍しくない。
販売店主の夜逃、自殺、家族離散などが起こると、必ず「押し紙」が原因ではないかという噂が広がる。新聞社の販売局員には焼香させるな、と記した遺書を残して自殺した東京・北区の店主もいる。
ASA宮崎大塚の「押し紙」裁判は、秋には判決が出る見込みだが、このような悲劇に司法は歯止めをかけることができるのか。過去に行われた「押し紙」裁判では、ことごとく販売店が敗訴している。(だたし、YCの店主が起こした地位保全裁判の中で、読売の「押し紙」が認定れたケースはある。)
裁判では、とかく机上の論理が展開され、「揚げ足取り」がまかり通ることがままある。それが敗訴の有力な原因のひとつである。裁判官が現場を「取材」することもほとんどない。
そこで本稿では、ジャーナリズムの立場から、「押し紙」裁判の特異な側面を検証してみたい。
なお、本題に入る前に、参考までに次の2点を指摘しておく。
ASA宮崎大塚の裁判は、本人訴訟である。また、朝日の弁護士は、読売の代理人弁護士でもある。具体的には次の方々(敬称略)だ。
(上)読売裁判の読売側準備書面。(下)ASA宮崎大塚の朝日側準備書面。両新聞社の代理人が、喜田村弁護士を除いて兼任状態になっている。 |
弁護士 堀 哲郎
弁護士 住野武史
これら3氏は、もともと福岡地裁と福岡高裁を舞台に繰り広げられてきたYCと読売新聞西部本社の訴訟代理人を務めてきた弁護士たちである。
つまり「押し紙」問題に対処してきた読売の弁護士が、朝日の「押し紙」裁判を助力するかたちになっているのだ。
検証1-「押し紙」を全面否定
「押し紙」裁判では、新聞社はかならず「押し紙」の存在を全面否定する。販売店に対して新聞の買い取りを強要したことはない、と公言してはばからない。その根拠になっているのは
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毎日・蛍ケ池販売所と豊中販売所の部数内訳。新聞代原価の所に搬入部数が、発証額の所に実配部数が明記されている。販売局員の捺印もある。
1963年11月に日本新聞販売協会の理事会は、「押し紙」排除の決議を採択している
原告店主を誹謗中傷したASAの元従業員の陳述書。裁判所へ提出された。
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「押し紙」率が約70%に達しても司法が押し紙を認定しない、という驚くべき事態◇販売残酷物語
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読者コメント
読売が良く使う、自店回収率とはどう言う意味ですか?
爆カードについて詳しく説明していただけませんか?ブログなどよくでてきますが意味がわかりません。お願いいたします。
あなたは「ダメ店主」との言葉をたびたび使っていますが、「能力」なのか、「努力」なのか? どちらにしろ、今の時代、「ダメ店主」は社(担当)はすぐに見抜いていとも簡単に店主交代か、廃店にして、近隣の系列店に分割してしまう。 よって、現実には「ダメ店主」は本当に少ない。「なるほど」と思う指摘もあるが、「ダメ店主云々」を言い過ぎる為にあなたのレベルのほどがばれてしまう。
そもそも電子媒体の話が出たのは25年以上前で、ほとんどの店主は斜陽産業だと覚悟している。
だから家族よりだまされた広告主のことを考えるべき。
我々が不正無しの高い普及率を見せつけた相手は本社と地元広告主でその筆頭はデパートの井筒屋、せっかく紙面広告やチラシの出稿価値をアピールしてきたのに、久留米の店で悪徳販売店にカモにされてしまった。
こういう詐欺師は支援者も含めて許されるべきではない。
結論ありきの取材は言語道断。
ノルマを達成できれば儲かるので本社に感謝するのは自然。
それに全国紙地盤のA・Yの店は、失った読者が未読ではなく敵の読者になるという現実を見せつけられ、地方紙地盤のダメ店主みたいに社へ責任転嫁という心理にはならない。
全業種の中で最も競争がなく腐敗しているのは、再販制度と一県一紙の恩恵を受けた地方紙地盤の販売店、そこを断罪すれば不自然なことはなくなるのだが。
黒藪さんに質問があるんですが。真村さんの間接強制金はその後どうなっているんでしょうか。
読売新聞社が1日30000円をいつからいつまで払い続けたのでしょうか。
現在でも払い続けているのでしょうか
教えていただきたいのですが宜しくお願いいたします。
第三者から見れば、内部告発は興味深い事でしょうが、お店にとっては、天に唾する行為でもあり、本社が苦境に立てば、店はもっと苦境に陥る事になる。今の経済状況だと、業界を啓蒙するには至らず、自らの首を絞める事にもなりかねない。
業界のいシステムの改革が、業界の崩壊に繋がる可能性も否定出来ず。今しか変えられないかもしれないが、タイミングも難しい。
匿名であれば、Y,A,Mとも取材は難しくない。内部告発を含めかなりの事が取材出来ると思います。但し、会長クラスの取材は難しいでしょうけど。末端のお店の不満はかなりのものです。
まず言えることは、朝日、読売の店の取材は限りなく難しい。あれほど本社をかばい、恐れて本音を語らないのは不自然。「いやならやめればいいだけのこと」などと無責任に言うのは間違っていると思う。40代、50代の所長は家族のことを考えれば、この不景気な時代に、やめて何が出来るだろう? 本社も赤字になり、読者離れに歯止めがかからないので、まもなく、「内部告発」が多発するだろう。
7割の残紙に達するまで、この店は何をしていたのか理解出来ません。全ての店に7割の残紙があれば話は別ですが、一部の特定の店の話を、この業界の常識の様に言われるのは納得がいきません。本社も悪いですが、この店の方がもっとおかしいと思います。色々な例を取材していただきたいです。
さらに言えば北九州のABC部数的には3強状態から2強1弱となった毎日も粉飾によりずっと3強状態のまま、普及率10%分の架空読者を作り半分程度が積み紙状態なのだから、毎日は新聞社も店も潰すべき。
新聞社が関与しない実配部数の変動をきちんと見ていれば、インチキ販売店がどれだけ無能かはっきりする、押し紙率なんて店主が無能・怠惰なほど高くなるまやかしの数字だからね。
10年ほど前、1世帯1部を上回っていた頃も、日経やスポーツ紙を除くと普及率合計は80~85%、この当時ウチの地区では実配が75%を超える程度で、単身世帯率の高さを考慮すればABC部数は妥当という感覚。
逆に言えばABC部数(ノルマ)と何割も乖離がある地区は、きちんと仕事が出来ていない地区でしょう。
顧客満足度を上げる努力より、厄介な顧客を切り捨てることを選んだ結果が実配数減少なわけで。
「三代目」の意見は「岡目八目」そのもの。
浅墓過ぎて話す気にならん。
70%の残紙を抱えながらやってきたのは、それなりのメリットがあったからでしょう?今さら、自分の都合の良い事だけを並べるのもどうかと思います。黒藪氏も負け犬の店の話ばかり鵜呑みにせず、頑張っている店の話を取材して下さい。
今の様な時代はともかく、専売店を営む以上年間の増紙計画に基づくノルマがあるのは当たり前です。企業だってノルマがあるでしょう?押し紙を盾に騒ぐ店に限って、部数を減らしてるんですよ。それだけの事です。仕事をしたら良いだけの事。
本社からの補助はもらい、部数が減ったら紙を切れとは都合が良すぎますよ。そんなのは仕事とは言えません。納得いかないなら早く業界を去ったら良いだけです。
誰かから聞いた話ですが、日本の諸悪の元凶はナベツネにあると・・
読売新聞だけは買わない
どこぞの阿呆が年内に1000万部を復活させようと意気込んでいます。現実を見ることの出来ないアホがトップのメディアって・・・
以前、「こんなものいらない」というTV番組があり、最高裁はじめ、不真面目な裁判結果を放映してたことがあり、依然として旧態依然な体質・・国民審査を大事にしたい・・。
勤めている会社でも押し紙の事実を知り折り込みチラシを入れるのをやめました。新聞社も余裕がなさそうですし販売店への補助金も減っているでしょうね。
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