福井女子中生殺害事件で“冤罪”決定下した最高裁判事らも大企業に続々再就職
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要塞を髣髴させるような威圧を覚える最高裁の建物。「法の番人」として絶大な権威を誇る。一方、判事らは、退官後に大企業の役員や大弁護士事務所に再就職する例がめずらしくない。冤罪に加担したかどうかは問われない。 |
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- 再審開始決定も検察が異議申し立て
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再審開始決定も検察が異議申し立て
2001年の警察白書によれば、「覚醒罪事案」のうち59%が再犯者だという。もし冤罪を作った裁判官や検事の“再犯率”を調べたらいったいどんな結果になるだろうか――。「福井女子中学生殺害事件」をめぐる再審開始決定の報に接して筆者はそう思った。
1986年3月、当時15歳だった女子中学生が自宅のアパートで惨殺された。後に「福井女子中学生殺害事件」と呼ばれる事件である。容疑者として逮捕・起訴されたのが、前川彰司さんだった。
殺していない――
逮捕から公判にいたるまで前川さんは一貫して否認した。決定的な物証はなかった。アリバイもあった。はたして、一審福井地裁の判決は無罪だった。ところが名古屋高裁金沢支部の控訴審で状況は180度変わる。1995年3月22日、同支部(小島裕史裁判長・松尾昭彦・田中敦各判事)はこう判決を言い渡す。
「主文、原判決中無罪部分を破棄する。被告人を懲役7年に処する…」
逆転有罪判決だった。有罪の根拠は証言にあった。「人を殺してしもたんや」などと前川さんが語ったとされる目撃者の証言を検察側は証拠で出してきた。弁護側は「信用性がない」と争った。だが小島裁判長らは検察の肩を持ち証言を証拠採用した。
前川さんは上告して無実を訴え続ける。だが1997年11月12日、最高裁第二小法廷が決定を言い渡す。
本件上告を棄却する。――
目撃証言の信憑性を疑う主張には「単なる事実誤認の主張であって、適法な上告理由にあたらない」と切り捨てた。こうして懲役7年の有罪判決が確定し、前川さんは服役し、刑を終えて出所した。それでも今なお無実を訴え続けている彼の姿そのものが事件の真相を物語っているといえよう。
再審開始を求める前川さんと弁護人、支援者の声がようやく裁判所に届いたのは、今年11月30日のことだった。名古屋高裁金沢支部が再審開始を決定したのだ。再審開始が決定されるのは容易なことではない。この重い扉が開いた背景事情を、富山県弁護士会長が声明で触れている。
「…検察官が被告人に有利な証拠を多数保管していたことが明らかになり、これらの証拠が早期に開示されていれば、そもそも有罪判決はありえなかったのではないかと指摘されている…」
作井康人・富山県弁護士会長は述べている。検察による証拠隠しが疑われ、その証拠が出てきたことが再審の扉を開く力になったというのだ。前川さんに有利な証拠を隠していたということは、すなわち検察は彼の無実を知っていた可能性がある。
再審が開始されれば無罪が言い渡されることはまず間違いない。だが、名古屋高検は異議申し立てを行った
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足利事件・福井女子中生殺害事件ー―の2件で冤罪決定を下した疑いが濃厚な河合伸一元最高裁判事。退官後は大手弁護士法人「アンダーソン=毛利=友常法律事務所」の顧問になったほか、阪神阪急HD監査役に就いた(アンダーソン法律事務所のHPより)。
元外交官の福田博氏も足利事件と福井事件の両方で冤罪決定を出した疑いが濃厚だ。福井事件については記憶が確かではないという(西村あさひ法律事務所のHPより)。
元検察官の根岸重治氏は退官後にセントラル硝子に再就職した。高齢のせいかどうか、自分がかかわった裁判について記憶が鮮明ではなかった。
大西勝也氏は最高裁判事を退官した後、住友銀行の役員に就いた。また東京都の公安委員や宮内庁参事にもなった。裁判官には「行政に追従しようとしている人はいない」と言い切ったというが、自分は行政から雇われた格好だ。
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