ブルームバーグ ノルマ地獄の末に解雇で記者側が一審勝訴「毎月67万5千円払え」
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ブルームバーグで過剰ノルマを課せられ不当解雇されたと訴えるY氏。一審で全面勝訴。会社は控訴した。 |
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- 「お帰り下さい。社員証も返して下さい」人事部
- 東京地裁に提訴
- 法廷で証言中に追及されブチ切れかけた上司
- 「富士山にたとえるなら5合目」Y氏
- 会社の主張は「客観的合理性なし」5度ダメ出し
- ブルームバーグは控訴「コメントは差し控える」
「お帰り下さい。社員証も返して下さい」人事部
前回記事(2010年12月)にあるように、Y氏は05年11月からブルームバーグの記者職に従事。当時は順調に仕事をしていたが、リーマンショック後の09年4月からノルマを課せられた。それは「独自記事」(インタビューや動向分析を通した独自視点の手間暇かけた記事)年間20本、「ベスト・オブ・ザ・ウィーク」(編集局長賞に相当)年間3本というノルマだった。
このノルマ自体は何とかこなせる範囲内だったが、会社から狙い撃ちされたY氏は約半年後、突然、ノルマを倍増された挙句、ノルマ未達を責め立てられた。
さらに、「PIP(Performance Improvement Plan)」、直訳すると「成績改善計画」と呼ばれる社員教育を“偽装”した、さらなる過剰ノルマが課せられた。
PIPの文書には「今後は1週間に1本は独自記事を配信してください」、「独自記事のうち1カ月に1本はベスト・オブ・ザ・ウィークに提出できる程度の記事を求めます」とあった。独自記事が週1回ということは、年52回ペースなので、4月当初に比べ2.6倍。ベスト・オブ・ザ・ウィークにいたっては、年3本から月1本と、4倍増だ。
その後、Y氏は馬車馬のように働いたが、独自記事のノルマの本数が一本足りず、「もう一回、PIPをやれ」と言われた。
しかし、次は、独自記事は達成したが、ベスト・オブ・ザ・ウィークが足りなかった。そもそもベスト・オブ・ザ・ウィークは、東京支局の幹部がその週のナンバーワン記事を恣意的に選び、ニューヨーク本社に上げて選ばれるシステムなので、幹部たちがこいつの書いた記事は上げたくないと思えば、どんなに良い記事でも採用されない。
このような恣意的なノルマにもかかわらず、ベスト・オブ・ザ・ウィークがなかったことを理由に、Y氏は人事部から慇懃無礼に「もう仕事をするための社内システムも止めてあります。もうYさんは仕事ができませんので、この場で玄関に行かれてお帰り下さい。社員証もお返しください」と言い放たれ、オフィスを締め出された。
こうして10年8月に解雇されたY氏が、東京地裁に地位保全の仮処分を申請しようとしている、というところまでを前回報じた。その後はどうだったのか――。Y氏に改めて取材した。
東京地裁に提訴
Y氏は10年12月、予定通り、東京地裁に地位保全と賃金仮払いの仮処分を申請した。しかし裁判所は、Y氏に預金があることなどを理由に仮処分に難色を示し、本訴に切り替えることを促したため、Y氏は仮処分の申し立てを取下げ、翌11年3月、ブルームバーグを相手取り、東京地裁に提訴した。
Y氏の訴えの内容は、「地位確認」と、解雇された10年9月以降の賃金として「毎月67万5千円の支払い」の2点だった。
Y氏の訴えに対し、会社側は、能力不足だったから解雇した、と主張した。具体的には以下4点を指摘した。
「1 所在不明(上司や同僚と緊密に連絡し合って協調して業務を進められない)」
「2 記者として求められるスピードで記事を配信できない」
「3 配信記事数が少ない」
「4 質の高い独自記事を配信できないという致命的な問題があり、会社側は繰り返し改善を求めてきたが、Y氏は改善する努力すらせず、改善の見込みがなかった」
裁判では、この会社の主張に対し、Y氏側が反論し、会社側がさらに反論する、といったやり取りが、書面で続いた。その後、この裁判を象徴する局面が訪れた。
法廷で証言中に追及されブチ切れかけた上司
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上司A氏の陳述書。Y氏の解雇の要因の記事を指摘して、ボロカスに批判している![]() |
「一審裁判のクライマックスは、証人尋問のときでした」とY氏は振り返る
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上司C氏の証言。上司A氏が批判するY氏の記事をほめている
上司B氏の証言。Y氏の代理人に追及されてまともに答えることができていない
一審判決。全文は記事末尾からダウンロード可
上は一審判決に対する原告弁護団の見解。下は日本新聞労働組合連合、新聞通信合同ユニオン、原告弁護団によるビラ
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読者コメント
この記事は自分がPIPにかけられたとき、大変参考になりました。有り難うございます。リンク張りました。
https://www.facebook.com/hokutouajiaken/posts/1814472262172996?pnref=story
09年に日本放送撤退で全員解雇、そしてこれ。それだけデフレと円高放置の日本は、経済NEWSの価値が無くなったって訳ですね。外人投資家が7割、それが東証を支えている状況では。それにしても記者の勝訴は良かったね!
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