消費税軽減税率、新聞への適用是非を問う世論調査の発注先会長は新聞協会重役
新聞協会から依頼を受けて中央調査社が実施した消費税の軽減税率に関する世論調査の結果。 |
- Digest
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- 河内孝氏の試算
- 調査会社の会長が新聞協会の監事
- 中央調査社の数字をうのみ
- 回答率は約3割
- 偽装部数の存在を認めぬ新聞協会
- 高市政調会長らに政治献金
- 新聞業界の身勝手な姿勢
販売店の店舗に積み上げられた「押し紙」(偽造部数)。大阪府内の毎日新聞販売店で店主が撮影。 |
新聞社が新聞に対する消費税の軽減税率の適用を求めている。これまで消費税の増税を煽ってきた新聞社が、自社製品である新聞に対する増税に関しては免除しろと、大合唱をはじめたのである。
1月23日、安倍内閣は、2015年10月に消費税率を10%に引き上げる時期に軽減税率制度の導入をめざす決定を下し、新聞人を失望させた。
結論を先送りしたことになり、新聞関係者のロビー活動はこれからエスカレートしそうだ。当然、新聞ジャーナリズムによる権力監視も骨抜きになる可能性が高い。
河内孝氏の試算
消費税が5%から8%に上がった場合、新聞社はどの程度の追加負担を強いられるのかを試算した興味いデータがある。毎日新聞社の元常務取締役の河内孝氏が、2007年3月に刊行した『新聞社-破綻したビジネスモデル』に収録したもの。当時も、増税が政治のテーマになっていた。
新聞社 | 追加負担額 |
---|---|
読売新聞社 | 108億6400万円 |
朝日新聞社 | 90億3400万円 |
毎日新聞社 | 42億6400万円 |
日経新聞社 | 38億7100万円 |
産経新聞社 | 22億1800万円 |
新聞の定価は、読売、朝日、毎日がいずれも3925円(セット版)である。新聞販売店はこの金額を消費税と一緒に集金する。
河内孝氏の著書『『新聞社-破綻したビジネスモデル』』(新潮新書) |
(黒薮注:「押し紙」とは、新聞社が実際に配達する新聞部数を超えた部数を新聞販売店へ搬入するために生じる過剰部数。新聞社はABC部数のかさ上げと広告料のアップを目的に、このような販売政策を採用してきた。)
販売店は「押し紙」の卸代金だけではなく、「押し紙」にかかる消費税も納金しなければならない。その負担を示したのが河内氏の試算である。
新聞社が軽減税率の適用を求める表向きの理由は、新聞が生活の一部に溶け込んだ文化的な必需品であるからというものである。厳密に言えば「知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なう」(第65回新聞大会決議)という主張である。
新聞関係者は、自分たちの主張を通すための材料として、新聞協会が実施した世論調査の結果を持ち出している。たとえば2013年1月19日付け読売の社説は、「『消費税8%』で導入すべきだ」と主張しながらも、新聞については軽減税率の適用を求め、「日本新聞協会のアンケート調査では、80%超の回答者が軽減税率の導入を求め、そのうち、75%が新聞・書籍を対象とすることに肯定的だった意味は重要である」と述べている。
日本新聞協会の声明もやはり「8割を超える国民が軽減税率の導入を求め、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んで」する調査結果を引用して、軽減税率の適用を主張している。
しかし、新聞関係者が引用を繰り返すこの調査は、どの程度まで世論を反映しているのだろうか?
調査会社の会長が新聞協会の監事
わたしは世論調査が示した数字に対して、疑問を呈する声をあちこちで耳にした。そして、新聞離れが急速に進み、若い世代の間では、ネットによる情報収集が当たり前になっている時代背景を考えると、数字の根拠を検証する必要があると考えるようになった。
そこでわたしは、世論調査の検証作業に着手した
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中央調査社の法人社員。電通のほかに、電力会社も名を連ねている。
新聞業界から政治献金を受けている(上)高市早苗政調会長。(下)山本一太沖縄・北方相。
第65回新聞大会で軽減税率の適用を決議したことを伝える日本新聞販売協会の会報。
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>調査会社の会長が新聞協会の監事
新聞協会の調査をマイニュースジャパンがしっかり追っていた!とんでもない調査だなー
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読者コメント
あれだけ紙面で増税を煽っておいて新聞だけ免除はありえない。増税されれば節約のために新聞を止める人が増えるという発想が出てこないのだろうか。この業界は終わりです。
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